表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

第1話「翼の静寂」

空港の滑走路は夜明け前の薄い光に包まれていた。A380の機体は静かに待機し、乗客たちが少しずつ座席に収まる。


蒼井悠翔は、窓際の席に座りながら、軽く肩を落とす。手元の計器を何気なく見つめるが、心臓は少しだけ早鐘を打っていた。過去の事故の記憶が、まだ彼の胸に影を落としている。


隣の席で霧島天音が微笑む。柔らかく「大丈夫ですか?」と声をかけられる。悠翔は小さく頷き、微かな安心感を覚えた。


機内の空気は静かだが、どこか張りつめている。子供の兄弟は窓の外を見つめ、老人カップルは手を取り合ったまま、静かに会話を交わしている。


「離陸準備が整いました」

客室乗務員の声が穏やかに響く。だが、悠翔は計器の微細な異常に目を留めた。表示の針がわずかに揺れている。心拍が少し速まる。


天音がそっと肩に手を置く。

「怖いですか?」

悠翔は小さく息を吸い込み、窓の外に目をやる。遠くの滑走路灯が瞬く。

「いや、大丈夫だ」

言葉は落ち着いていたが、胸の奥で緊張の波が広がる。


機体が滑走路に動き出す。静かな機内の空気に、微かな振動が伝わる。

悠翔は視線を前方に向け、手のひらで座席の縁を握る。五感のすべてが、わずかな揺れに敏感に反応する。


窓の外に見える夜明けの光が、まだ薄い蒼に染まった空に溶けていく。静寂の中に潜む、わずかな予感。これから始まる長い空の旅の、ほんの小さな予兆に過ぎなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ