第86話 伯爵
前と同じくまた冒険者の服装で城に来てしまった……。
王に簡単な挨拶をしてから話し始めた。
「今日は何をしたんだ?」
「散田国まで道がつながったので報告と対処を聞きたくて」
「そうか。散田国とな……って散田国までの道が出来たのか!?まあ貴殿の能力を考えたら無理では無いと思っていたが……」
「はい。それで国境とかをどうしようかと思いまして」
国王は何かを考えながら嬉しそうな顔をしながら言った
「そうだな。しかしこちらからの道が散田国まで開通したのだな……と言う事は交渉は此方が有利か」
「そうですが現状誰にも通れないと思います」
「何故だ?」
「魔獣が出る可能性が高いからです」
「魔獣が……」
「はい。道だけは繋がりましたが、現状ここを個人で通れる者は居ないかと」
「では、どこかに拠点をつくる事は可能か?」
「出来ますが後に問題になりませんか?」
「いやあの森は元々誰の領土でもない。通行不可の場所だったのだ。だから貴殿が拓いた土地は貴殿の領土と出来たのだ。……現状有利なうちに交渉を始めよう。まず仮拠点をつくってそこに兵を置く。そしてその位置は我が国の領土だと宣言する」
「その仮拠点はどの辺りに?」
「我が国と散田国間の土地を3分の2は欲しいな」
「残り3分の1は渡すのですか?」
「当然そうだ。全部を我が国のものとしたら争いの原因となる。しかしあの場所を通過できた功績は頂かないとな」
「分かりました。拠点なのですが……私の領土として編入したらポイントで建てられますが……」
「そうだな。本日よりツバキ殿は伯爵に陞爵し新しく開いた領地を編入する」
「は、伯爵ですか!?」
「あれだけ広い土地を領地にした功績で陞爵する。普通の事だ」
「分かりました。本日より伯爵として微力を尽くします」
「貴殿が微力ね……まあいい。よろしく頼む」
挨拶をして城を出たが何もする気が起きないので拠点に戻った。
拠点に戻るとアナベルが話かけて来た。
「どうしました?元気ないようですが……」
「色々有って少し疲れただけよ」
「色々?」
「まず散田国まで道が開通したわ」
「それはおめでとうございます」
「そして新しい土地を任されたと同時に伯爵になった」
「そうですか伯爵に!?おめでとうございます!」
「そうね。目出度いのよね……」
「違うのですか?」
「いや多分仕事がこれから増えるわ。国境とかダンジョンとか」
「そういう事ですか?そろそろ人を増やす時ですね」
「そうね。アナベルにも苦労をかけたと思うわ」
「それはかまいません。それよりどうやって人を増やすかですね」
「そうね。商店の求人って訳にはいかないからね……再度城に行ってくるわ」
城に到着するとすぐに王と会う事が出来た
「思っていたより早く来たな」
「戻ってくるのが分かっていたのですか?」
「色々悩む頃だと思ってな。貴殿には悩みを話せる貴族の友人も少ないだろう?」
「そうですね」
「で、何についてだ?」
「まずは人が不足してます」
「新しくつくる拠点には国から兵を出す。何故か貴殿の領で働きたい者が多くてな。それ以外は?」
「兵だけでなく新たに仕事が増えるのに現状のアナベルと私だけでは荷が重いかと」
「わかった。何人か人を送ろう。しかしアナベル殿も身分が無いと大変だろう。本日より騎士爵とする」
「ありがとうございます!」
「貴殿が喜ぶのか?」
「私の仕事を肩代わりしてくれているのがアナベルなので……」
「そうか。ではこのままうまく進めばそのうち男爵に陞爵だな……ってこれは本人には言わないように」
「なんか私の周りだけ陞爵が早くないですか?」
「……そこからか?貴殿が今やっていることはそれほどの価値が有る。それに対して報酬を払うのは当然の事だと思うが」
「分かりました。とりあえず拠点をつくってきます。近くにダンジョンも有るのでそこの防衛にも使えるような大きさで考えてます」
「わかった。仔細は任せる。兵士は今週中には用意できる」
「よろしくお願いいたします」
転移で適当な位置に行き拠点をつくったのだが……100人以上が生活でき敵襲の時は籠城できる建物をつくったら小さい城になってしまった……。まあいいか、国王も任せてくれたし。
そのまま子鹿の拠点に戻ったらアナベルが話かけて来た。
「お帰りなさい。なんか少し顔色良くなりましたか?」
「そうね……少し聞きたいのだけどアナベルは家から独立しても良いの?」
「独立ですか?」
「この領地の為に新たな貴族として働くことになっても大丈夫?」
「今既にそのつもりですが、まあ独立して貴族に成るにはもう少し時間が必要だと思いますが」
「そうでもないわ。今日から騎士爵よ。おめでとう」
「騎士爵ですか?」
「そうよ。嬉しくないの?」
「私がですか?」
「そうよ」
「新しく人も送って貰えるみたいだし、アナベルに身分が無いのも問題なのよ」
「新しく人も増えるのですね……私が騎士爵……ツバキ様に一生ついていきます」
「それは貴方の実力よ。私の力ではないわ……未熟な上司でごめんね」
「ツバキ様は上司としては最高です……ここで働けて良かった。他所の領地で働いている友人など扱いが最悪だと聞いてます」




