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『悪の秘密結社』戦闘員タケシの憂鬱  作者: 双鶴


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9/10

8話

午前9時、秘密基地——だった場所。

木造アパートの前に、団員たちが集まっていた。隊長は、もういない。

警備員に転職したと聞いた。

世田谷区役所の夜間警備。

「世界征服より、安定を選んだ」とのこと。


アパートは、大家さんの判断で建て替えが決まった。

「耐震性がない」と言われた。俺たちのアジトは、物理的にも精神的にも崩壊した。


戦闘員番号D-1023、俺。隊長代理という肩書きだけが残った。

「このまま終わるのは、ちょっと寂しいな」そう言ったのは、D-1027。

犬に噛まれて欠勤していた男だ。


俺は言った。

「じゃあ、握手会でもやるか」「ファンミーティングも兼ねて」誰もファンがいるとは思っていなかった。

でも、団員たちは動いた。駒沢大学、日体大、昭和女子大——

チラシを配りまくった。

「悪の秘密結社、最後の握手会!」チラシには、団員の似顔絵と「世界征服は一旦休止中」の文字。


駒沢公園、午後3時。折りたたみテーブル、手作りの横断幕。

「悪の秘密結社ダークネス団 握手会&ファンミーティング」来場者、12人。うち4人は団員の親族。

風が吹く。横断幕がめくれ、団員の似顔絵が裏返る。


そのとき——「遅れてすまん!」駒沢通りの向こうから、サンシャインレッドが走ってきた。

ジャージ姿。マスク。手にはコンビニ袋。続いて、ブルー、イエロー、そしてピンク。


「友情出演です」とレッドが言った。

「俺たちも、もう戦ってないから」会場がざわつく。

子どもが「ヒーローだ!」と叫ぶ。ピンクが風船を配りながら、俺に近づく。

「お疲れさまです」

「こちらこそ」

その目が、あの戦場と同じだった。


握手会が始まる。戦闘員とヒーローが、並んで手を差し出す。

子どもたちが笑い、大人たちが写真を撮る。

D-1027が泣きながら言う。「俺、今日が一番、戦ってる気がする…」

D-1031がうなずく。「これが、俺たちの最終決戦だな」


夕暮れ、ベンチに座る団員たち。

「なあ、俺たち、解散するか」

誰も反対しなかった。

世界征服は、もういい。でも、今日のことは、きっと忘れない。

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