6話
午前6時、田園都市線。
満員電車の中、俺は痣を隠しながら吊り革にしがみつく。
昨日の戦闘でピンクにウインクされ、動揺して被弾した。
それでも、今日も出勤する。駒沢大学駅に着くと、マクドナルドに寄る。
ハッピーセットを注文。おもちゃは甥っ子へのプレゼント用。
世界征服を目指す戦闘員も、家族サービスは欠かせない。秘密基地に着くと、隊長がいない。
代わりに副隊長が叫ぶ。
「タケシ!貴様を隊長代理に任命する!」俺は耳を疑った。
昇進?俺が?だが、すぐに現実が襲ってきた。■任務1:出撃スケジュールの作成
→エクセル未対応。紙と鉛筆で手書き。■任務2:戦闘員の出欠管理
→D-1019は粛清済み、D-1027は行方不明、D-1031は「犬に噛まれたため欠勤」■任務3:基地のトイレ掃除
→昇進とは何かを考えさせられる。昼、大戸屋でひとり昼食。
鯖の味噌煮定食を食べながら、俺は思う。
「これ、罰ゲームじゃないか…?」最近、隊長が怪しい。
休みが多い。
「今日は重要任務だ」と言って姿を消す。まさか、転職活動?
ヒーロー側の採用面接?俺の昇進は、ただの穴埋めだったのかもしれない。夜、すき家でカズオと会う。
牛丼並盛、紅しょうが多め。
「昇進、おめでとう」と言われたが、
彼の笑顔が、どこか他人事だった。翌日、戦闘中。
隊長不在のため、俺が指揮を執る。
「全員、ベンチに向かえ!」だが、ヒーローが現れると、全員バラバラに逃げた。ピンクが俺に言った。
「隊長代理って、大変そうね」俺は、戦闘員番号D-1023。
昇進と雑務と恋心と甥っ子の笑顔の狭間で、今日もベンチに座る。世界征服の夢は、ハッピーセットの箱より軽くなっていく。俺は、降格を希望している。




