4話
午前6時、田園都市線。
満員電車の中、俺は痣を隠しながら吊り革にしがみつく。
隣に立つのは、同期のカズオ。
戦闘員番号D-1022。俺の一つ前の番号だ。カズオは最近、妙に元気だ。
ヒーローに吹っ飛ばされても、翌日にはケロッとしている。
しかも、戦闘中に妙な動きをする。
ヒーローの攻撃を、避ける。
いや、避けるだけならいい。
その後、ヒーローと目配せしてるように見える。俺は思う。
「まさか、スパイ…?」秘密基地に着くと、隊長が叫ぶ。
「本日、駒沢公園の東側を制圧せよ!」カズオは先頭に立つ。
だが、ヒーローが現れると、なぜか一番に逃げる。
俺たちが吹っ飛ばされる中、カズオだけが無傷。戦闘後、俺の靴下に穴が空いていた。
ヒーローのキックが直撃したらしい。
仕方なく、駒沢大学駅前のユニクロで靴下を買う。
3足990円。世界征服の夢は、現実の出費に弱い。ついでにキャンドゥで絆創膏も買う。
脇腹の擦り傷が、スーツに染みてきたからだ。
店員に「運動されてるんですか?」と聞かれ、
「まあ、ちょっと…公園で」と答える。その夜、カズオとサイゼリアへ。
駒沢大学駅前、戦闘員たちの憩いの場。
赤提灯は予算オーバーなので、ミラノ風ドリアが定番だ。「最近、ヒーローの動き、読めるんだよな」とカズオ。
「訓練の成果かもな」俺は言う。
「それ、訓練じゃなくて…情報共有とかじゃないよな?」カズオは笑う。
「何言ってんだよ、タケシ。俺たちは仲間だろ?」その笑顔が、妙にヒーローっぽかった。翌日、戦闘中。
ヒーローが俺に言った。
「君の同期、優秀だよね」俺は、戦闘員番号D-1023。
世界征服の夢と、疑念と靴下の穴の狭間で、今日もベンチに座る。カズオの背中が、少しずつ遠くなっていく。
それが、裏切りなのか、希望なのか——
俺には、まだわからない。




