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『悪の秘密結社』戦闘員タケシの憂鬱  作者: 双鶴


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2/10

1話

朝5時。目覚ましが鳴る。

俺は戦闘員だ。世界征服を目指す秘密結社「ダークネス団」の一員。

だが、現実は「駒沢公園のベンチを支配する」ことすらままならない。着替える。いや、まずはスーツに着替える。

俺たち戦闘員は、世間の目を気にしてスーツ通勤が義務づけられている。

「悪の秘密結社の戦闘員です」と書かれた名札をぶら下げて電車に乗るわけにはいかない。田園都市線。朝の満員電車は、世界征服より過酷だ。

肘が肋骨にめり込み、吊り革は争奪戦。

俺は昨日ヒーローに殴られた頬の痣を、マスクと前髪で隠しながら乗車する。

隣のサラリーマンがチラッと俺を見る。

たぶん、痣に気づいた。

でも、何も言わない。

俺も言わない。

俺たちは、黙って戦っている。世田谷区某所、秘密基地。

築40年の木造アパートを改造した本部は、今日も湿気で押入れの扉が開かない。

隊長の朝礼が始まる。内容はいつも同じだ。

「世界征服は一日にして成らず!」

「まずは駒沢公園の支配から!」

「犬の散歩ルートを制圧せよ!」俺たちは頷く。誰も反論しない。

なぜなら、反論すると「裏切り者」として粛清されるからだ。

先月、戦闘員D-1019が「公園よりまず人員確保では?」と発言し、

翌日から姿を見ていない。午前9時、出撃。

駒沢公園のベンチに陣取る。

だが、すぐにヒーローが現れる。

「正義の味方!サンシャインレッド、参上!」俺は思う。

「なんでこんなに朝から元気なんだよ…」戦闘開始。

俺は吹っ飛ばされる。

同期のカズオも吹っ飛ばされる。

だが、今日は違った。

ヒーローが、俺に手を差し伸べてきた。「君、転職考えてるでしょ?」俺は言葉を失った。

まさか、見抜かれていたとは。「ヒーロー側も人手不足なんだ。顔出しOK、週休二日、福利厚生あり」俺は迷った。

だが、俺の背後から隊長の怒声が飛ぶ。

「タケシ!裏切る気か!」俺は、そっとヒーローの手を振り払った。「すみません。まだ、ベンチを支配してないんで」ヒーローは笑った。

「じゃあ、また明日な」俺は、戦闘員番号D-1023。

世界征服の夢と、現実のしがらみの狭間で、今日もベンチに座る。目的地は、駒沢公園。

今日こそ、ベンチのひとつくらいは支配してみせる。


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