【プロットタイプ】面繫
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
私の中で、瑠衣は結構面倒見良い部類。
ほら、周りが癖強な輩しか居ないから、大抵の人は疲れて相手を辞めちゃうんですよ。
無駄嫌いな瑠衣がそこそこちゃんと相手をしているのを見て、フフッ( -∀-)って思ってます。
人間という生き物は、少し触れ合っただけで全てを理解出来ない程に複雑で、奥深い物である。その人間の中でも、諭羅と鏡花は軍を抜いて複雑な性格をしている。
久方振りに諭羅と会うことになってたので、二人揃って行き付けの純喫茶に足を運んだ。禁煙席はいっぱいとの事だった。諭羅の視線を向けると、一瞬、深淵にも似たドス黒い瞳とかち合ったが、すぐに何でもない顔で了承した。
「久し振りだね。こうして二人でお茶するのも」
他愛のない世間話から始まるのは、社交儀礼の様なものだ。そうして話の内容は、俺が面倒を見る事になった此奴の妹の事。
最近はどうかとか、きちんとやれているかとか、技量が伸びたかとか、俺の負担になって居ないかとか、そんな話ばかりを聞いてくる。
此奴は親バカならぬ妹バカなので、進捗が気になるのだろう。
「別に。ただ俺は誰かに何か指導したり、育てるのは向いてない。他に相応しい奴がいたら、そいつに投げる。其れに文句は言わせねぇ」
そんな事はお前が一番、死ぬ程分かっている事だろうが。だが諭羅は何処吹く風と言った様に、俺のストレートを躱し、自分でこさえた玉で投げ返す。
「でも其れは君が相手を駄目にする時だ。自分で面倒見切れる時には、そんな事しないでしょう?」
その猫のようなニヤニヤ笑みが俺の興を削いだのは言うまでもない。
何を見て、何を考えて、その結論に至ったのか、俺には分かる筈もない。
此奴は高校時代から、結論を感情に乗せてぶつける癖がある。過程を探す楽しさがあるとはいえ、弾き出された回答がお前のと合致するか不明なところは、やはり心に迷いを呼ぶものだ。
「だって瑠衣は面倒見が良いからね。お節介と言っても良い。そこんとこ兄妹変わらない。自覚ないの?」
「お生憎様。用が其れだけなら俺はさっさと帰る」
潔癖症の外野は勝手に言ってろ、面倒臭い。
自分の飲み代を出す為に、鞄から財布を出そうとすると、徐に諭羅はこう言った。
「お節介依存性な麗衣や、壊れ多重人格の鏡花、そして今、人間潔癖症の私とこうやってお茶を飲んでるところが何よりの証拠。深淵や深海を思わせる様な鏡花と、結婚までして、今でも一緒にいるのが何よりの証拠。普通の人ならあんな狂犬、三日と経たずに捨ててしまうよ」
財布を漁りながら放たれる容赦のない暴言は、学生時代に麗衣や鏡花を交えて度々話した物だ。その度に彼奴ら二人は頬を膨らませながら、ポカポカと此奴の事を殴った物だが。
依存なんてしないよ!! なんだよ狂犬って!! 他の子達みたいに言葉丸めなさいよ!! そんな一場面が頭に浮かんだ。
「……はぁ……帰る。今日は何時も以上に中身がねぇ」
俺がきっかり千円を出すと諭羅も同時に立ち上がる。
「中身はあるさ。ただ君が其れを理解するのが、どれだけ大切か分かってないだけ。ちゃんと面繫付けて手綱握っていてね。私は面倒見きれないから」
そんな意味深な言葉を吐いて、諭羅もその場を去った。
「おかえり、兄さん」
「ただいま」
家に着くと、妹が玄関の扉を開けてくれた。私や高校時代の悪友達と違って、擦れることも歪む事も少ない子だった。私が歪めようとしても、歪むことのない人格は、果たして誰譲りの物なのか。
鏡花程複雑怪奇な人間を、深淵を、深海を、私は知らない。探れば探る程分からず、途中で匙を投げてしまいそうになる。
賽子の出目の如く変化する彼女の冷静や興奮を制御するのは、第三者にはきっと難しい。それでもまぁ、よくあんな風にいなせる物で。
「ふふふ」
「楽しそう」
「瑠衣の面白い顔が見れたからね」
面繫って知ってますか?
馬に轡を固定する為に付ける紐とか飾りの事。
轡でも良かったけれども、轡よりも上に着くというイメージから面繫。
まぁこのタイトルの意味を単純に言ってしまうと、『言うこと聞かせる側の人』って事です。
結構面倒見良いんですよ。
麗衣に対しては言わずもがな。
(良い感じに焼けた肉をあげたり、ラーメン奢ったり)
鏡花や諭羅に対しても。
鏡花相手に、『面倒』とか『うっざ』とか言いながら話に乗ってくれたり、一緒に出掛けたり、バグった時に後処理したり。
(純喫茶でキレ散らかした鏡花を抑えて、そのまま会計とか)
諭羅相手に小説のアドバイスしたり、褒めたり、今はアイコンタクト取って『喫煙でお前大丈夫か?』してるし。
マネキンじゃなくて、顔の分かる人(懐に入れた人)には結構面倒見良い。自分の人生全賭とかしちゃう。
瑠衣の周りって外れ物多いんですが、それに優しいと言いますか。傍に置いてくれると言うか。
例え自分から突き放しても、まだ結構気にかけてるし。
(麗衣の依存癖を治すのも鏡花と結婚した理由の一つ。でも結婚した後も交流あるし。良い感じの肉あげるし)
でも本人、其れに対してあんまり強い理解を示してない。
面と向かって『面倒見良いね』とか言われると『は? 何言ってるの此奴?』『どれだけ考えても的外れ。だから話す必要を感じない』って思っちゃう。
でも瑠衣がやってる事、凄く大切で有難い事だよ。って言うのがこの話。
野生の犬然り、猫然り、誰かが面倒見てくれないと長生き出来ません。
それで庇護下に置かれた証って、『首輪』とか『手綱』とかだよなぁってこのタイトル。
タイトルを分かりにくくしたのは、瑠衣の面倒見の良さも分かりにくいから、というのあります。