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 魔法のことを知ってから俺の人生は上り調子続きだと信じていたが、どうやら最高地点はとうに過ぎていたらしい。

 騒がしさだけが上乗せされた日常に明確な理想と未舗装の道のりだけが残って、足元には凡人の文字が落ちている。


 今の俺は吉田に手を引かれて空を飛んだ時の貯金でここにいる。あの時の浮遊感、開放感がこれから薄れていって、夢と大差なくなった時に正真正銘の凡人になるんだろう。それまでに猪狩が変わってくれれば話は別だけど、望みはないと言っていい。魔法を使えるやつでも見ているしかできないんだ。


 それから数日は吉田と空を飛んだ一瞬と比べても見劣りする、取るに足らない日々を過ごした。休み時間、廊下でペットボトルのキャップでサッカーして怒られた。帰り道、校則違反にならないファッションを考えて、馬鹿みたいなアイディアを言い合った。その度に浮遊感を忘れて、特別という言葉を忘れた。魔法を見た時のような衝撃はない。でも魔法を見たいと切実していた時のような焦りを感じることはなかった。でもそれは誰かといる時だけ。夜一人になると薬が切れたみたいに焦りと後悔が込み上げてくる。

 このままじゃダメだ。何とかしないと。唱えて眠って訪れた、朝には姿形も残ってない。


 そんな調子で五月が終わった。降下していくジェットコースターに恐れる夜も永遠には続かない。落ちるところまで落ちたんだと悟ったのは、何とかしないと。ではなく、何とかしてくれ。と思うようになってから。

 きっかけを求める生活に逆戻りして、退屈を誰かと過ごすことで誤魔化した。地に足着いて人と話すのは楽しい。知らずに拒絶していた事は大抵なんて事はなかったし、つまらないと避けていたものは俺がそれを知らなかっただけだった。


 色んな人がいると知った。色んな考えがあると知った。ほんの数週間だったけど人との関わりを拒絶してきた数年間より濃密で、充実していた。きっとあと数週間このままだったら、俺は何もかも忘れたままだったかもしれない。

 それはある日の放課後。


「隣町の山で怪奇現象が起きてるらしい!」


 ビッグニュースを仕入れてきたと言わんばかりの大声で、雄一は俺とほか数人をその山に駆り出した。雄一が突発的な思いつきで何がするのは今に始まった事では無い。放課後理科室に忍び込もうとか、秘密基地を作ろうだとか。色々付き合ってきた俺達はまたその延長線だと思って一回家に帰って荷物を置いてから自転車で三十分程にある山まで向かった。


 道中に雄一から聞いた話によると怪奇現象というのは夜にその山から強い光が発せられていたり、呻き声が聞こえたり、果てには山肌に白い巨大な幽霊が現れるとか。

 冷静に言うとありえるわけがない。ただその場にいる誰も、それを口に出さなかった。というより誰も真剣に否定するほどその怪奇現象に期待していなかった。皆、友達と放課後に山で遊ぶことを目的にしていて怪奇現象はその口実に過ぎなかったんだ。ただ雄一を除いて。


 目的地の山は平べったいが中々に高い山だった。山道に入る手前にあった公園に自転車を置いて俺達は山を登り始める。日も暮れかけて薄暗い山道でも人が多ければ気にならない。虫を見つけて騒いだり、誰がこの木を早く登れるかで競ったり。誰も怪奇現象のことなんて忘れて普段の遊びのように楽しんでいた。雄一も初めはそうだった。でもどこか心ここにあらずな表情で、常に辺りをキョロキョロ見渡している。そしていよいよ足元も怪しくなってきた時刻になって皆帰ろうかという雰囲気が出てきた時も雄一だけはもう少し残ると言い出す。ただこれも雄一といたら偶にある事だった。やけに真剣になって周りが見えなくなる。そういう時は俺達が何を言っても聞く耳を持たないので一人、雄一に付き合う生贄を決めて解散するのがお決まりになっていた。今日も雄一にそのスイッチが入った事を皆が察して誰が残るかという話になったが俺が自分で残ると手を挙げたので、他のみんなは「雄一を頼む」と残して帰っていった。


「すまん、あとちょっとにするから」

 そう言いながらも雄一はまだ山を登り続ける。スマホのライトで足元を照らさないと歩くのも危ない。


「俺は別に、いいんだけど」

 なんでこんな必死になってんの?

 本来、だけどの後に言いたかったその言葉は簡単に聞いていいことか分からなかったから切り捨てた。だって素直に言えることならとっくに言ってるはず。ならこっちから言わせようとしなくてもいい。俺としても家に帰っても暇なだけだし少し付き合うくらいなら苦でもなかった。そう思っていたのに。


 しばらくだべりながら歩いていた時、雄一はふと立ち止まってこちらに振り返ると「そろそろ帰るか」と笑った。みんなと別れてからまだ十分も経っていない頃だった。


「え、もう? 俺はまだいけるよ」

「いや、付き合わせるのも悪いしさ。帰ろうぜ」


 ここ数週間一緒にいただけの俺でもその言葉が今出ることに不自然さを感じ取った。雄一が真剣になって周りが見えなくなった時、終わろうと言うのは常に周りの人間で、雄一本人は日が暮れようと雨が降ろうと自分の目的だけを見ていた。振り回される俺達はたまったもんじゃなかったが、どこか自分に近しい、他人事にできないものがある気もしてたんだ。それなのに。

 雄一の潔さは、さっきまで一歩後ろに下がって見ていた俺に火をつけた。切り捨てたはずの余計な言葉がまた形を成す。


「いいのかよ、そんな簡単に諦めて。なんか大事な事だったんだろ」

 俺の隣を抜けて山を降りようとする背中に強く、そう言った。雄一は足を止め、振り向く。


「大事、だったけど、なんか空回ってる気がしてさ。こんな事してても先が見えないし、誰かを巻き込むのも悪いだろ? ほんとにもういいんだよ」


 そういう表情はどこにも落とし所の見つからない感情を浮かべている。だから余計にやるせなくなった。俺もそうだったんだ。眠れない夜があった。どうにもならないことをどうにかしようとして、ただ何かを待っていた夜が。ついこの間まで。


「話せよ。何も出来ないかもしれないけど、友達だろ」


 ただの関係値の名称を恥ずかしげもなく持ち出して押し付けるようなやつが、俺は嫌いだった。でも今はどうだっていい。

 俺の言葉に雄一は少し悩んでまた背を向ける。そして肩を持ち上げる大きな呼吸をすると、ひどく自信がなさそうな声でこう言った。


「変わるきっかけが欲しいんだ」


 普段の声量と比べたら無音に等しい。でも俺は決して聞き逃さなかった。ど忘れした事を頭の一文字を聞いて全て思い出すように。眠れなかった夜、落ちる隕石を待っていた退屈な日々の行き場のない感情が蘇ってきて、鼓動が早くなった。雄一もそうだったのか。


 ずっと俺だけだと思っていた。だって周りの奴らはみんな何かしらで自分を満足させて、このどうしようもない世界で生きる平凡な自分を納得させられているんだと思っていたから。でも実際には猪狩も雄一も変わるきっかけを求めて苦しんでいる。みんなそうだった。つま先伸ばして生きていたのは俺だけじゃない。だったら、見下して馬鹿にできるような人間は、きっとどこにも。


 ごめん。その一言を雄一に零そうとした二秒前。日の落ちた山の静寂を裂く、異質な爆発音が辺りに響いた。それは耳から体内に入ると腹の底にズンと重くのしかかってきて、俺と雄一は二人して、その音がした林の方角に視線を向ける。斜陽がまだ薄ら木々に影を作る景色の中、小さな光が一つ、その音がした方にあるのが見えた。まだ耳にあの破裂音が残っている中、俺達は目を合わせる。そしてお互いに何も言わないまま、俺達は舗装された山道から道のない林の中に入っていった。


 ついさっき早くなった鼓動とはまた違う、強く胸を打つ鼓動が背中を押して、道無き道を進む恐怖を打ち砕く。たった今きっかけの話をしていたからか、付き合っていただけの俺も何か期待してしまっている。幽霊だとかの超常現象を信じている訳では無いけど、雄一のきっかけになるような何かがあればいいと思った。


 謎の光は近づくほど強さを増す。遠くから見た時は懐中電灯程かと思っていたが、近づくとそれが何かが燃えている明かりだと気づく。


「あれ、燃えてるよな」

「ああ。雷でも落ちたんかな。そんな天気ではないんだけど」


 そのやり取りだけで辺りの空気が重く、体に張り付いてくるようで、互いに足取りが重くなる。よく言えば慎重、悪く言えば臆病。それでも俺達の足が止まることはない。ゆっくり足音を立てないようにその火の側まで近寄る。そしてやっと燃える火の熱を肌で薄く感じられる所まで近づいて、爆発音の正体を見た。


 音から想像はしていたが実際はそれ以上に異質な光景だった。木の陰から見えたそれは半径五メートル、深さ二メートルほどのクレーター。その中には爆発の前にクレーターの上に生えていたであろう木や草が無残に散らかって燃えている。そしてその周りには二、三じゃない。パッと見ただけで七、八人。クレータの対岸で何か話している人達。服装に統一感はなく、白Tシャツだったり柄物だったり、年齢も性別も幅広い。ただ唯一共通するのは、全員の手に握られている、小さなポケットナイフ。


 雄一は頬を引きつらせてこちらに視線を送った。何か言いたげで、何も言えない。様々な感情が一斉に湧き出て整理がつかない。そんな表情。雄一にも俺が同じように映っただろう。ただ、この表情の下で湧き出る感情は、全くの別物だ。


 幽霊だとかの超常現象を信じていない? 何寝ぼけたこと言ってたんだ俺は。知ってるだろ。幽霊なんて鼻で笑えるほどの神秘的な景色を。超常現象を体現したような人間を。


 こいつらは吉田結菜、あいつと同じ、平行世界から来た人間だ。


 確信、と呼べるほどの自信はない。でも今まで聞いた話や経験と照らし合わせたら疑いようがなかった。吉田を追っていた男も服装は普通のパーカーだった。そしてその後、平行世界から術師が戦争のためにその世界に来ていることも聞いた。……ならこの集まりは。


 俺が投げ出しても、世界が立ち止まるわけない。そんなの当然なのに、俺はどこかで俺の決意が固まるまで待ってくれているような気がしていた。それがどうだ。凡人の決意なんて世界は意に返さない。吉田の言っていた戦争は水面下で着々と進んでいた。いや、雄一の言っていた怪奇現象がこいつらの仕業だったとしたら、もう表面化まで出てきてるじゃないか。


「これ、やばい。逃げよう」


 雄一のように命一つ脅かされる恐怖なら俺もそう言えたかもしれない。俺のそれは、何処にも逃げ道がない崩れていく世界でただ呆然と立ち尽くすしか許してくれなかった。ただそんな感情も当然、世界にとっては糞の価値もない。


「南西の方向!子供二人が隠れてます!」


 息を殺して隠れていた俺達に突然、全ての視線が集まった。何が起こったか理解出来ないままその声がした方を見ると、少し離れた草むらにしゃがんでいる男が一人。二の腕には生々しい色の血液が見えた。時にはもう遅い。俺達に一番近い二、三人が躊躇いなく右手に持ったポケットナイフで腕を切りつけた。鋭い瞳は何があっても逃がさないという強い意志で俺達を捉えている。


 そうか、そうだよな。見られたら普通すぐに、消しにくるよな。厨二病だなんだと腑抜けたことを言うやつはそうそういるわけない。いてたまるかよ。世界の常識を覆す力を持っていながら下らない命令で俺を弄んで、どこにでも居る大人の態度でお説教してくる。あんな奴が。いたら一つ、文句を言ってやりたい。


 嘘つくなよ。


 円理術の仕組みは前に聞いた。奴らが今やろうとしているのは遠隔円理、空気とか水を操作する時に使われる。円理術の威力はそれよりさらに前に見た。人を簡単に溺れさせたり空に飛ばしたりできる。

 押し寄せてくる途方もない絶望に俺だけが重心を失って倒れそうになる。雄一がそれを支えてくれたが、もう一呼吸の有余があるかも怪しい。


 せめて何が起こるかだけでも見てやろう。そんな無力な抵抗で目を見開き、向けられる視線と視線をぶつけていた。その時、突然そこへ割って入ってくるものがあった。

 上から落ちてくるそれは、一瞬で全ての視線を奪った。奴らの斜め上で、俺達からは遠く見えづらい。それでもここにいる誰より、これから何が起こるかが明確に想像出来た。


 パンパンに脹れたニリットルのペットボトル。それが次の瞬間、腹の底に響く重い破裂音を響かせて、辺りに水蒸気を撒き散らした。

 前より近い距離でそれを受けて、その音の大きさと熱さに驚く。ただそれでケツを叩かれたような気になった。薄暗い中にこの水蒸気、視界は完全に遮断された。急いで雄一の手を取りその場を逃げ出す。背中に慌てふためく奴らの声を聞いた。


「くそ!! またあいつだ!石川班は子供を追え!俺の班はなんとしてでも……」


 聞くともなく聞こえたその声は気づけば踏みつける草木の音と自分の心音にかき消されて無くなっていた。記憶を頼りに走って何とか山道に出るとあとはがむしゃらに階段を下る。遅れてきた恐怖が今更ながらに俺を震え上がらせるが、もう何の心配も付いてこなかった。


 疑ってごめん。大丈夫って言っていたあの時の自信に満ちた声は嘘じゃなかった。


 都合がいいよな。前まで自分が何にもできないのは一人で全てを背負う吉田のせいだと決めつけていたのに。今でも情けなく逃げ出す俺に、一人で戦う吉田に、思う所が無い訳でもないのに。


 やっぱりまだ、自分の考えが間違っているとも吉田の話が全て正しいとも言いきれない。でもここ数週間で変わった所もそこにあるんだ。


 主観のみで生きてきた世界では、常に正しい事と間違っていることが明確に存在していて、俺はそれに従って特別な事とつまらない事を分別してなにかになろうとしていた。でも猪狩に俺の考えを否定され、雄一や他の友達と遊ぶようになって、もっと広く世界を見れるようになった今、俺の考えは他の人から見て正しいとは限らないと、本当に今更知った。


 俺の知らないところでも、世界は常に進んでいる。だったらなにもかも闇雲に否定するべきじゃないし、俺の考えも愚直に盲信するべきじゃない。

 猪狩の事で吉田が言っていたのは正しかったと、今なら思える。言いきれない事は言いきれない事として、どちらかに分別せず見守る。自分の利益で無理に人を変えようとしたらそれはもう、戦争なんだ。


 今はそれ一つだけを飲み込んで山を下った。「正しい正しくないだけで人は変われない」前はお説教としか聞こえなかったその言葉が今になって言いきれない俺を肯定してくれるからそれでいいと思えた。

 夜は一層深さを増す。慣れてきた目で道の輪郭だけを頼りに転がるように走って、ようやく俺と雄一は街灯が灯るアスファルトの道に出る。そのまま残りの勢いで公園まで戻ると俺達の自転車は停めた時の姿でそこにあって、糸が切れるようにその場にへたりこんだ。


「なんだったんだ。あれ」


 呼吸の落ち着かないまま膝をついて呆然と吐き零す雄一。俺は荒い呼吸を言い訳に何も答えなかった。少しよぎらなかった事もない。俺が知る真実は雄一にとってきっかけになるかもしれないと。

 それなのに言わなかったのは、前みたいに独り占めしたいとか自己中に思ったんじゃない。変わりたいにも人それぞれの理想がある。俺にとって平行世界の話はこれ以上ないものだったけど、雄一にはどうだろう。話せば後戻りはできない。戦争だなんだと説明したら必要もない責任感を背負うことになってしまう。

 呼吸を落ち着かせて、横槍が入る前の空気を何とか取り戻そうとする。雄一がどう変わりたいのか。知らない事にはどうしようもない。


「雄一が欲しいきっかけは、今見たやつじゃ足りねぇの?」

「……別に何でも良かったんだよ。どうすればいいかわかんなくて、闇雲に目立つことをしてた。騒いで、話題を作れば、前みたいに話せる気がして」


 それは俺が知る雄一の姿とはかけ離れた、情けなく弱気な言葉だった。猪狩の時と同じ、俺が知らない所で生きていた感情。当然、失望なんてしない。話してくれたことが嬉しかったし俺に出来ることなら手伝いたいと思った。


「誰と、話したかったの?」

「……猪狩」

「え」

「小学生の頃くだんねーことで喧嘩して、それがまだ続いてんの」


 それは小五の夏。きっかけは雄一の言う通り、ささいなことだった。雄一と猪狩、二人一緒にいることを誰かにからかわれて、それを猪狩が否定した事から始まったらしい。事実として二人はただの友人だった、否定することは何の文句もない。でもその時の言葉に気に食わないものが混ざっていた。そこは雄一もよく覚えていないらしいが「こんなやつ」とか「ありえない」とかそんなところだろうと言う。

 互いにそんな小さな不満を言い合って始まった喧嘩、どうせすぐ終わるだろうと思っていた雄一の思いとは裏腹に、周りの目とどちらが先に謝るか出方を窺っているうちに時間が経って、関係値になった。


 今更という言葉が現状維持を肯定して、どうしたらという迷いが足を引っ張る。そこからどうにか足掻こうとして進んだ道が、変なことをして注目を浴びたりする事だった。思惑は単純で、馬鹿なことをしていたら猪狩が笑ってくれて話すきっかけが作れるんじゃないかと思ったんだと。


「馬鹿だよなほんと。ずっと引きずってんのもダサいし、相手任せなのもかっこ悪い。分かってんだよ。分かってんだけどさ。分かんねぇんだよな」


 自分の言った言葉のおかしさに、雄一は不器用に笑った。でも俺は真剣にその顔を見ていた。分かる気がしたからだ。分かるけど分からない。その整理のつかない気持ちから出る言葉を。


 何とかなるかもしれない。点と点が繋がった偶然と、理解出来てしまった分からなさが突如、そんな根拠の無い自信を生んだ。


 吉田の言っていた猪狩の昔喧嘩したやつは恐らく雄一のことだろう。それなら猪狩も雄一と同じ気持ちのはず。引きずった結果が目立つ事か誰かに選択を委ねる事かの違いだけで、どちらかが一歩歩み寄ればきっと上手くいく。当然これは部外者の俺から見ての予測で、これには当事者の気持ちで大きく変わってしまう。だからここまで長引いているんだろう。でも、これは本当に思いつきで、それが出てきた根拠も成功する保証もないんだけど、何とかなりそうな方法を俺は一つ、思いついていた。

 猪狩の時の失敗から思いついても言うべきじゃないとは考えたけど、唯一と言っていい背中を押す自信があって、俺の口からそれは出た。

 雄一と猪狩に必要なきっかけは、平行世界なんて大きなものでなくていいはずだ。


「そんな、ことでいいの?」

「保証は出来ないけど、始まりもそんなことだったんだったんだろ? なら終わりもそんなことでいいんだと、俺は思うよ」

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