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オール・ライト 〜冒険者たちときっかけの女神〜  作者: 加藤貴敏


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13/17

「女神の冒険」

ハイネティスの国土の中の、人がたくさん住んでいる辺りから南下した原生林。植物も、虫や小動物たちも生き生きしている。何故なら、ハイネティスは、そのものが竜の縄張りだから。凶暴な知らないマテリアルは勿論、中途半端な荒らし者も寄り付くことすらできない。つまりとても安全。

「今までいろんなマテリアルや人間が女神をやってきたけど、多分過去一でちっこくてかーりんじゃない?」

「なんか安心するなぁ。ハイネティス方言。でも可愛い猫なんて、いっぱいいるけど」

「そうねー、きっと縁やよ」

「そうかなぁ」

龍の下まで案内してくれてるのは、混血であるリヴという女性。リヴはとにかく朗らかな雰囲気で、柔らかく接してくれる。だけど長年、原生林ガイドをやっているし、竜の縄張りの外で狩猟もしているからか、まるで冒険者みたいにたくましい。

「ちょっと待ってねー、ほらあれ、ミーセット」

川が近くで流れているからか、水分補給にやってくる大型マテリアルがよく出る。人を襲うなんて考えたこともないような穏やかな草食系。

「お乳で作るチーズがめーさんなんよ」

「へぇー。都会じゃ牛乳が普通だし、どんな味なんだろ」

しばらく歩くのはいいが、舗装もされてない道なき道をあとどれくらい歩くのかと考えると、気が滅入ってくる。ちょっと疲れてきた。つむぎがそんなことを考えたとき、リヴは大きく手を挙げた。

「やー、にぃー」

開けた草原にいたのは、5メートルくらいの有翼龍。

「おーう」

まるでリヴを待ってたかのように同じように手を挙げた親密さに、オリヴィアもつむぎも警戒心など湧くはずもない。

「おおじぃのとこまでお願い」

「客か?」

「ううん。女神」

「もう女神変わったんか、人間ってなぁ短命さな」

「いえ、前の女神のエマ様は、病気で」

「・・・そうか」

「なんかダークエリアの病気らしいって、でおおじぃになんか知らんか聞きに行くって」

「おう。じゃあ乗り?」

ハイネティスの街で普通に暮らしているものでさえ、龍の背中に乗るというアクティビティはそう体験出来るものじゃない。だからこれはさすがに緊張してきた。

「しっかり掴まっとれ」

そして龍は飛び立った。つむぎは、まるで借りてきた猫のように、ただ固まっていた。



第13話「女神の冒険」



「わーーーい。気持ちいーーねーー」

「おめはいつも乗ってるやろ」

原生林はまだまだ広い。滝もあったり、山もあったりしたが、ずっと自然豊かな世界が続く。なんだかちょっと慣れてきて、風の気持ちよさを感じる余裕も出てきた。そうつむぎが思い始めたところで、龍は降下していった。普段から観光客を乗せているからか着陸もスムーズだった。

「じゃ、そっちで待ってるぞ」

「うん!」

「ありがとうございました」

「おう」

龍の里は勿論初めて来る。小さいのから大きいのまで色んな龍がいて、普通に穏やかに生きている。そして知らない人間と猫がやってきても、龍たちは警戒もしない。というか市場で店を構えてる陽気なおばさんみたいに、むしろ挨拶してくる。そして中には人間と同じ姿の者、つまり混血の人達も普通に行き交っている。

「ほら、あの洞窟がおおじぃの家やよ」

「同じハイネティスなのに、なんだか外国に来たみたい」

「そうねー、まぁ、都会は人間が住みやすいところで、ここは龍が住みやすいっていう違いがあるだけやね」

里とあってか、原生林ほど歩きにくくはない。洞窟の中も、照明があって、地面もキレイに整えられている。そんなひんやりとした洞窟の奥には、10メートルの大きな龍が鎮座していた。

「やー、おおじぃ」

「おうリヴ、おかえり」

「うん、女神連れてきた」

「んーー、ちいっこいのう。ウツセミから聞いておる。よう来た」

「ウツセミさんと知り合いなの?」

「そらそうよ。本題に入る前に、おめさん達が知りたいことを聞かせてやろう。女神になったもんは必ずここにきて、ハイネティスと女神の関係を聞くのが筋なんよ。といっても、女神がここに来るんは、ウツセミがわしに会わせてもいいだろうと判断した時だがな。ハイネティスは、人間と龍の国ってのは知っとるな?」

「よく知らない。猫は学校行かないし」

「そうか。ハイネティスは、その昔、龍と竜人が作った国だ。竜人ってなぁ龍と人との子だな。今や、他の国からの移住者がおるから、都会の方では、龍との交流を最小限にしているが、わしら龍と竜人王宮は昔から1つの、家族みたいなもんだ。で、肝心の女神とは何か。女神ってなぁ、ハイネティスと外国との繋がりを作る、使者だ。ハイネティスはわしら龍が外敵から守っとるが、外国の普通の人間たちは、あまり龍と仲良く出来なくてな。それでハイネティスは精霊の力を借りて、女神という役割を作って、外国の人間との交流を図った」

「え・・・でもウツセミさんは、自由に生きていいって」

「そうよ。まぁ役割っちゅうか、希望だな。女神と関わることで、外国の人間たちはハイネティスと龍を敵だと思わなくなる。でも女神自体は、誰がやってもいいし、決まった仕事はない。存在するだけでいい。そういうもんだ」

「そうだったんだ」

「とはいえ、精霊に認められるんは心がキレイなもんだけ。おめさんには、女神の素質がある」

「でも、ただ人の話を聞いてあげることしか出来ないけど」

「それでいい。本来ならここいらで話は終わりだが、こっからはエマの病気の話だ」

「何か知ってるの?」

「正直言うと、分からん。まぁ未知のウィルスが答えや。でも検討はついとる。怪しいと踏んどるのは、ディブルドン、ラクエアハナ、ヒャクドク、こいつらかも知れんし、こいつらから生まれた未知なもんかも知れん。調べたかったらチームの冒険者にでも頼めばいい」

「分かった、ありがとう」

「それと、ちょいと頼まれてほしいことがある。もうそろそろ”踏破の群れ”が近い。わしらにとっても心配の種だ。ハイネティスを離れて暮らしておる龍たちの様子を見に行ってほしい」

「トウハの群れってなに?」

「・・・え?知らんのか?進軍とも言われてる」

「んー、ちょっと分かんない」

「そうか。大体、50年に1度くらいの周期で、ダークエリアの者どもが活発になる。色んなマテリアルの群れが混ざった最悪の群れを作る。そいつらの目的は、人間だ。というか、人間社会という人間の縄張りを踏破してやろうとする者どもだな。毎回、それは悲惨な戦争になる。ここ数百年は人間が勝っておるが、いつ人間に勝る群れが出来るかも分からん。ハイネティスはわしらが守れるが、ディッセンディアには友人も多い」

「確かに心配だね」

「先ずはそうだな。ノジルドという龍に会いに行ってみてくれ。あいつは、全然顔も見せんとふらふらしてるもんでな」

「うん、分かった」

龍の里にはワープポートはないし、要らない。だからとりあえずまた龍に背中に乗せてもらって、街の手前まで。

「2人は冒険者と知り合いなの?」

「そうだよ?チームを作ってるから。色んな冒険者がいるよ?」

「へぇ~。私、冒険ってしたことないんよ。冒険者の人ってなんかみんな楽しそうなんよね」

オリヴィアはふと立ち止まった。目を留めたのは柔らかい光。まるで綿のように、でも蝶々のように、ふわふわひらひらとそれはオリヴィアの手のひらに舞い降りた。

「珍しいなぁ。精霊が来てくれるなんて」

神秘的で、儚い存在、だけど力強い。見ているだけで心が穏やかになる。

「これからディッセンディアに戻るんでしょ?」

「そうだね。マテリアルの候補が聞けたから、チームの人に頼まないと」

リヴは精霊を見てるとなんだか不思議な気持ちになった。つながりとか縁とか、そういうものをふと感じたのだった。

「私も行っていい?実は興味があるんよ、冒険」

「いいよー」

「でしたら、ノジルドさんに会いに行く為のガイドもお願いしてもいいですか?」

「あー、そうやよね。もちろん!」

ハイネティスでは先ずウツセミと合流して、それからディッセンディアへ。つむぎストライカーズ専用の集合場所に着けば、リヴは上京してきた子みたいにはしゃいだ。

「ちょうどカグラさんがいらっしゃいますね。少々よろしいでしょうか。大事な話があります」

つむぎストライカーズのリーダーを務めるカグラと何人かが集まったところで、改めてウツセミが挨拶する。女神の補佐役であること、そしてつむぎに頼んでいる、エマの病気の調査のこと。

「ディブルドン、ラクエアハナ、ヒャクドク。これらマテリアルの調査、可能であれば討伐をお願いしたいのです」

しかしリアクションは微妙だった。

「聞いたことないなぁ。マテリアル図鑑見れば分かるかも」

スマホでのネット検索。しかし直後、カグラは青ざめた。

「いや、これは・・・どれもレベル10以上って。絶対無理だ」

「思い切りSランク案件じゃん」

「・・・そうですか」

「いやぁ役に立てずに申し訳ない。今すぐじゃなければ可能性はあるけど、手っ取り早いのはSランク冒険者に依頼することですね」

「相当お金かかると思うけど」

「でもこのまま何もしないんじゃ、つむぎストライカーズにいる意味なくない?」

「そんなことはありませんよ。エマ様の病気の調査の為に作ったチームではありませんから。あくまで、つむぎ様が、皆さんのこと思っての決断です」

「そうはいっても、なんか自分が悔しいな。オレ、これでもリーダーとしてちゃんとしなきゃって強さを求めてるんですよ。昨日だって、初めてレベル7を狩猟したんです。あの、ウツセミさんさえ良ければ、オレ達に恩返しするチャンスくれませんか?」

「そうしたいのは山々なんですが、皆さんを無理させる訳にもいかないので」

「ねえちょっといい?強いマテリアルを狩猟したいなら、私も手伝うよ。冒険やってみたかったんよね」

「えっと、新しくチームに入りたいっていうのは全然歓迎だけど、冒険したことない人がレベル10以上は、無謀だと思う」

「そういうもんなの?冒険はしたことないけど、狩猟はよくやってるし。自信はあるよ」

「え?・・・どういうこと?」

「この方は、竜人のリヴさんです。ハイネティスで、観光にいらした冒険者のガイドをなさってます」

「えぇっ竜人・・・まじか」

冒険と狩猟は違う。狩猟は、強い武器を持っていればいいというものではなく、何よりも経験が生死を分ける。冒険者ならそれは痛いほどよく分かってる。だからこそ、カグラには、リヴがスーパー助っ人外国人に思えた。

「でもこれからちょっと用があるから、それが終わったらね」

ディッセンディア領土内、年間通していつでも暖かい気候が続いている地域、サランミア。なんだか街行く人がみんな穏やかでのんびりしてそう。

「ここら辺、お気に入りかも」

「そっかぁ。じゃあたまには遊びに来ようね」

「あの店じゃない?」

ワープポートから歩いて数分、つむぎ達は広々としたレストランに入った。店内すべてがソファー席で、南国らしいゆったりとした、それでいて特色のある賑やかな雰囲気の内装。

「いらっしゃい。あら猫ちゃん。観光で来たの?」

ウェイトレスの女性ですら友達みたいに話しかけてくる感じに、つむぎはちょっと嬉しくなる。

「ううん。セドって竜人に会いに来たんよ」

「それなら、あっちの角のテーブルだよ」

向かってみれば、そこにはソファーで横になって寝ている男性がいた。

「セド!お客さんだよ!」

ウェイトレスの女性がそう足を軽く叩く。

「・・・ん・・・え?」

「私達、ハイネティスから来たんよ。ノジルドにぃに会いに行きたくて。ウツセミさんが、セドって竜人なら知ってるって」

寝ぼけたような顔で、セドはリヴ、オリヴィア、つむぎをゆっくりと見つめる。

「ノジさんだったら、最近は、えーどこだっけ、山かな。近くにでかい山脈があって。せっかくなら何か食ってから行けば?ここのタコス美味いぞ?」

「そーだよー、ここいらの街で一番なんだから」

ウェイトレスの女性にもそう言われればと、オリヴィア達は席に着く。

「猫ちゃんには、そーだなー。バーノンフィッシュっていうここいらで有名な美味しい魚があるんだけど、どう?」

「じゃあそれで」

それからタコスにかぶりつくオリヴィアとリヴ。つむぎは焼き魚のほぐし身に、なんだか美味しいソースがかかったやつ。そしてセドは自分のオルチャータというジュースを景気よく飲み干した。

「初めて食べる魚だけど、美味しいなぁ」

「山脈は広いからな、連れてくのはいいが大丈夫か?全然冒険者っぽくないな」

「私は大丈夫だけど、オリヴィアとつむぎはしっかり守ってあげないと」

「冒険者でもないのになんだって会いに行くんだよ」

「あ、つむぎ、女神なんよ。それでおおじぃに、元気か見に行ってくれって」

「女神・・・。ああ、そういや最近、死んだんだっけ。・・・んー、いくらおおじぃが言っても、山脈には結構なマテリアルもいるしなぁ。いいんじゃないか?行かなくても、ハハッ」

「そんなに危険なんですか?」

「最高で、レベル8のマテリアルが出る。この時期はどうかなぁ」

「あと何人か連れてったら、危険じゃなくなるんじゃないかな?」

「まぁそうだな。うん、そうしよう。女神がそう言うんなら」

「私、狩猟はするけど冒険は初めてで、楽しみなんよね」

「そうなのか。冒険ってのはな、無駄なんだよ」

「え?無駄なの?」

「狩猟は生きる上で必要だ。けど冒険ってのは趣味だ。他人から見れば、わざわざ行かなくていいようなところに行ったり、わざわざ危険を冒したり。けど冒険はそこにすべてがある。いかに無駄なことを楽しめるか。そういうことだ」

「そうなんだ」

「それでもいいなら、行くか?」

すべてを知ってるような怪しくニヒルな笑み。オリヴィアにはそれが不安に映ったが、つむぎには好奇心をくすぐるような何かに思えた。

「行く!」

お腹も満たされたところで、つむぎ一行はセドを加えて、とある牧場にやってきた。実はそこがセドの経営するワイバーン牧場。

「好きなやつ選んでいいぞ」

人間かと思った。でもその”何人か”は、強そうで頼りになるワイバーンだった。そうつむぎは不安になった。

「ワイバーンって猫食べないよね?」

「食べないよ。猫は肉も少ないしな」

「よかった」

「これから行くドルヘッド山脈へは、まぁ車でも馬でも行けるが、空の旅も良い」

「セド!」

「おう!こいつは幼馴染のジーン。お前も来てくれよ。今からノジさんに会いに行きたいっていう女神の護衛するんだ」

「女神!?」

すると可愛らしい顔立ちで活発な印象の竜人ジーンは真っ直ぐオリヴィアに歩み寄った。

「私じゃないです。猫のつむぎです」

「猫なんだ、へー。私ジーン、よろしくね」

「うん!」

活発な可愛い笑顔。良かった、助っ人はワイバーンだけじゃないんだとつむぎが安心したところで、ドスンドスンとワイバーンが1頭歩み寄ってくる。

「私の相棒のスレンダ」

「グアゥ」

ワイバーンは成熟すれば体高が160センチほど。竜人や人間にとれば馬に乗るような感覚だが、猫にとれば、普通は逃げ出したくなる巨大さ。そうして、つむぎとオリヴィアは1頭のワイバーンをレンタルし、背中に乗せて貰うのだった。

読んで頂きありがとうございました。

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