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オール・ライト 〜冒険者たちときっかけの女神〜  作者: 加藤貴敏


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11/17

「錆びついたもの」

駅前にあるコミュニティカフェ。どこにでもあるチェーン店のカフェ。そこは冒険者たちの集会所。入ったという事は、仲間を探しているという事。自動ドアが開いた。出てきたのは、トマクとイアンだった。

「ここでもだめか。なんでだよ」

「やっぱりみんな、子供とは行きたくないのかな」

「でもワークショップじゃ、子供だっていいって言ってたのに」

「そうだけど。別の所行ってみる?」

それから3軒目のコミュニティカフェで、2人はピンときた男性達に話しかけた。

「冒険、連れてってほしいんだけど、だめかな?」

テーブル席で寛いでいるところに話しかけられたのは、コンビで冒険をしているカサンとラクナ。大人の2人はただ戸惑った。

「まさか、中学生?」

「あぁ、いいだろ別に」

「いやあぁ~、どうだろなぁ」

「あちこちのカフェ行っても、全然ダメで。オレ、母ちゃんとケンカしてるんだ」

初めて食料とお金を持って行ってから、監視がきつくなった。何をしても怒られる。でも冒険はお金も稼げるし、楽しいから。また行きたい。そんな事情を話すと、カサンの表情は更に曇った。

「心配されてるんだろ?だったら尚更危ない目には遭わせられないな。それより、ちゃんと仲直りした方がいい」

トマクとイアンは街をさまよった。優しそうな大人たちでさえ、みんな同じことを言う。それから何となく公園のベンチに座る。

「もう、2人で行こうぜ?」

そうトマクが切り出せば、イアンも決意を固めた。

「あぁ」

2人には自信があった。何故なら2人共、首からペンダントを下げていた。

現代ではもう、クエストの受注申請はスマホでサクッと。受けたのは始まりの平原での採集クエスト。ただ数種類の薬草を採るだけ。上限はない。採ったものは”郵送用の光”の中に入れ、指定ポイントに送るだけ。現物の確認が取れ次第、相応の報酬がスマホの口座に振り込まれる。

そして2人はいよいよ街の外に出た。先ず襲ってきたのは、不安と緊張。とは言え見晴らしの良いここには無害の草食マテリアルしか見当たらない。あれよあれよと森に入り、薬草判別アプリを見ながら採集する。遠くでガサガサと音がした。2人はビクッとする。トマクは長剣を、イアンは短剣と小盾をそれぞれ光から取り出した。敵はまだ見えない。鳴き声がした。

「どこだ」

「と、とにかく森出よう」

「薬草は森にしかないし、それに出てきてもレベル1だろ。平気だって」

トマクのやる気にイアンも闘志を募らせる。

「ギヤァー!」

バサバサと羽ばたく音。2人はすぐに頭上を見上げた。

「うわあ!」

少し凶暴な中型の鳥のタックルでイアンは倒れこんだ。

「いてっ」

トマクが斬りかかるも、鳥は素早く飛び上がり、逆に足で掴みかかって来た。

「くっ」

突然の銃声。逃げる鳥。2人が振り返ると、そこには騎士が居た。



第11話「錆びついたもの」



「怪我してるじゃない!バカ!」

「こんなのかすり傷だし」

トマクの自宅。パトロールしていた騎士に家まで送り届けられ、トマクはやっぱり怒られていた。

「何で危ない真似するの!」

「あんなの、平気だったし。別に助けて貰わなくたって」

「友達だって危ない目に遭ったんでしょ!平気な訳ないでしょ!」

「・・・もういいよ!」

いつもの公園。トマクが待ってると、そこにイアンが来た。

「・・・まだ、クエスト、途中だよな?」

「ていうか、魔法、すっかり忘れてた」

呆れて笑い合う2人。冒険者だって言ったのに、子供というだけで騎士も認めてくれない。でも諦めない。2人は逆に燃えていた。そして再び門前大広場へ。

「ん?あ!おっさん」

そこでイアンが見つけたのは、ジョンだった。

「おっさん!」

「ん?なんだ、ああガキ共か」

「また冒険連れてってよ」

するとジョンは大笑いした。

「バカ言うな。子供がすることじゃねえよ」

「この前は連れてってくれただろ」

「あれは、お前らが冒険をバカにしたからだ。楽しかっただろ?」

「だからまた行きたいんだ。見ろよ!魔法使いにもなったし、剣も買った」

「なら、お前らはもう冒険者だな」

「あぁ!そうだよ!だからいいだろ?」

「なら、お前らとは行かない」

「・・・え」

「お前らは立派な冒険者だ。でもガキで素人だ。そんな奴が居たら、こっちは強くて金になるマテリアルを狩れない。弱いやつは要らない。どっかいけ」

2人はがっかりした。ジョンの眼差しは、とても冷たかった。

「あんただったの!」

「ん?」

振り返ったトマクは言葉が出てこなかった。いつの間にか、母親がついて来ていた。

「なんだお前」

「あんたが、この子を冒険に連れていったせいで、この子は自分で冒険に行って死にそうになったの!ふざけないで!まだ子供なのに!バカじゃないの!」

「はあ?ハハッこいつの母親か。うるせえよ。不登校を育てるようなバカが、文句を言えると思うな」

「な・・・」

「こっちは命かけて戦ってんだ。命かけたこともないようなアホに文句言われる筋合いねえんだよ!何様なんだよ!のうのうと不登校育てやがって。ガキで素人でも、命かけてるこいつらの方がよっぽど偉いんだよバカ野郎!」

トマクの母親は、静かに号泣した。

「私・・・私だって・・・必死に、シンママで・・・必死に」

「ふざけんなよ!」

ジョンを怒鳴りつけたのは、トマクだった。

「オレは、母ちゃん1人で大変だから、冒険で金稼ぎたいんだよ!助けたいんだよ!母ちゃんいじめるなよ!」

飛びかかって来たトマクを、ジョンは簡単に投げ飛ばした。

「冒険者は結果が全てだ。弱いやつが吠えるな」

さっさとジョンは去っていった。トマクの母親は涙を拭いながら、たくましく立ち上がった息子を見る。ただ学校が嫌だから、冒険だなんて言ってるだけだと思ってた。

「ごめん、トマク・・・そんな風に考えてるなんて、知らなかった。なんで、全然上手くいかないんだろ。トマクの為に必死で働いてるのに。お金も無いし、美味しいものも全然食べさせてあげれてない」

「頼むよ母ちゃん。オレ、冒険行きたい。中学生じゃ仕事も出来ないし、冒険しかないんだ」

「でも、危ないし」

「仲間集めていけば大丈夫だって。イアンだっているし」

「イアンくんは、いいの?」

「友達だから、一緒に冒険したい。それにオレの母さんは、許してくれてる」

トマクの母親は必死に思いを巡らせた。今まで、トマクにはとにかく怪我をしてほしくなかった。勉強はそこそこでいいから、元気でいてほしかった。でも、最近、いや何年も、楽しい思い出も、会話もない。

「冒険、楽しい?」

「うん」

「そう・・・分かった。好きにしていいよ」

「ほんと?」

「でも約束、絶対に大人と冒険すること」

「あー、うん・・・それが、全然相手にして貰えなくて」

「そっか・・・じゃあ、私の友達に相談してみる。友達の旦那さんが冒険者で、人脈もあるみたいだから。いい?2人共、それまで冒険しちゃダメだよ?」

それから翌日。トマクとイアンはとあるビジネスホテルに向かった。一緒に冒険に連れてってくれる人が見つかったから。ホテルのエントランスに入った2人。辺りを見渡す。男性と女性と犬。それが目印だと。

「あのーヘイゼルって、おじさん?」

「おお来たか。って、子供じゃねえか。お前らが、トマクとイアンか」

「あぁ」

「ボクはトモピッピだよ」

「えっ喋った!」

「すげー。犬喋った」

「私はアンリよ。それで、ほんとに行くの?ていうか中学生?」

「あぁ。オレ、生まれた時から、母ちゃんだけで、ずっと母ちゃんが大変なの見てて、それで、冒険でお金稼いで助けてあげたいんだ」

「そっか」

「あっはっは。いい奴だなお前。いいよ、連れてってやる」

「ほんと!よっしゃ!」

「子供なのは予想外だったが、そうだな、割の良い採集クエストでいいだろう。銀色のバラだ」

「何それ、嘘でしょ、そんなのあるの?」

「1本10万で売れる」

それからワープポートで目的地周辺まで一瞬。トマクとイアンは目を輝かせた。目的地は草木がちらほらと生える鉱山。トモピッピの冒険話にも、少年達は終始テンションが上がる。

「おっと、出たな、ストップだ」

ブーリー鉱山と呼ばれるそこには、レベル3相当マテリアル、クディクスが良く出る。縄張り意識が強い、岩石のような皮膚をした2メートルのアルマジロ。肉はそれなりに美味い。昼飯にする為に1体狩った。少年達は全く何も出来なかったが、見学だけでもとても勉強になる。それは、本物の冒険だった。適当な場所でキャンプ用品を広げ、そして肉を焼く。

「うめえ!」

肉にがっつく少年達に、ヘイゼルは何だか家族を思い出していた。

「最初はどうやって冒険に行ってたの?」

火を囲み、甘めのコーヒーを片手に問いかけたのはアンリ。

「最初は、冒険には興味無かった。毎日楽しくなくて、でも、ジョンっておっさんに金やるからって言われて、冒険に」

「ジョンか・・・」

「おじさんも知ってるの?やっぱり悪い人で有名って本当なの?」

「まあな・・・あいつも、最初は、あんなんじゃなかったんだがな」

「でも、それで、冒険って美味い肉食えて、お金も稼げていいなって思って」

「ふーん、そっか。イアンの親は許してるの?」

「うん・・・母さんは、喜んでくれてる」

「父親は違うのか?」

「父さんは・・・・・いつも、暴力で、叩いてくる。オレだけじゃない、母さんにも。だからオレ、強くなりたいんだ。母さんを守れるように」

「大変だね」

「今はもう大丈夫。魔法でガード出来る。でも・・・学校行くと、みんな、家族の仲が良いとか、アピールがウザくて。なんで、ウチだけなんだろうって」

「お前だけじゃない」

「え」

「世の中、仲の良い家族ばかりじゃない。暴力ってのは、不安の裏返しだ。マテリアルだってそうだ。縄張りに入って来たやつを、不安だから攻撃する」

ステンレスのカップを両手に持ち、イアンはしんみりと頷いた。

「とにかく、家族にはどんどん美味いもん持ってってやれ。美味いもん食って幸せにならないやつなんていない。お前の父親も、その内認めてくれるようになる」

「・・・うん」

「じゃあ、2人もチーム入れば?」

トモピッピの純粋な発言に、ヘイゼルはラム酒の炭酸割りを吹き出しそうになる。

「え・・・いいのかな」

「いいでしょ?」

トモピッピがそうヘイゼルを見ると、ヘイゼルはアンリを見た。

「私は、別に良いと思うけど」

「オレ、母ちゃんに、大人と一緒じゃないと冒険はだめって言われてて」

「だろうな。・・・分かったよ、しょうがない。あれだ、旅は道連れ、世は情けだ。弟子になりたいなら好きにしろ」

「この人、めっちゃ強い魔法使いなんだよ?」

「まじか。弟子になる」

「オレも」

「やったー。ボクたち仲間だねー」

お腹も満たされたので再び冒険へ。銀色のバラは、採るのは難しくない。鉱山のミネラルの影響で鉱物っぽく咲いてるだけのただの野バラだから。真っ先に駆け寄ったのはアンリ。

「すごーい!きれい!」

ラム酒をまた一口ラッパ飲みしながら、ヘイゼルは周囲を見渡す。

「これって宝石なのかな」

そういってイアンは恐る恐るバラの花びらに触ってみる。植物というより、何だかプラスチックみたいな手触りだった。

「10本ある。これで、100万ティア!すげえ」

「あんまりのんびりするなよ?すぐ採って帰るぞ?」

「はーい」

家に帰るまでが冒険。ワークショップでお姉さんも言ってた。銀色のバラはきれいだし、名残惜しかったが、10本とも換金した。ヘイゼルのスマホ口座に振り込まれた金額は、アンリ達それぞれのスマホ口座に分配した。

それから帰宅したトマクは嬉しそうにスマホを母親に見せた。良い点を取ったテスト用紙のように。ついでにお土産も持ってきた。昼飯の為に狩ったクディクスの肉の余り。スーパーで売ってるようなブロック肉にして貰った。トマクは母親と2人暮らし。別に一気にお金持ちになった訳じゃない。生活は変わらないが、トマクはその夜、笑顔と会話のある食事をした。すごく久し振りな気がした。

翌朝、イアンはいつものように家族3人で朝食。父親との会話は無い。でも母親は必ずいってらっしゃいを言ってくれる。イアンは母親と約束していた。中学校はちゃんと卒業すること。だから今日は仕方なく登校する。途中でトマクと合流し、共に学校へ。国語の授業中、トマクが生徒用タブレットで授業に関係ないマテリアル図鑑を見ている一方、イアンは昨日の事を思い出していた。それは昼飯の時の事。

「オレ、母さんと約束してて。中学校はちゃんと行くって」

「まぁそらそうだろ」

「でも勉強なんて退屈でさあ」

そう言ってトマクは肉をかじる。

「確かになぁ。けど、役には立つ。金の計算とか、この国の歴史とか、知っておけば冒険には役に立つ」

「・・・そっか。そうだよな」

イアンは、それから真面目に授業を受けようという気になった。3時間目の歴史の授業で冒険者の話になった。今までは真面目に聞いてなかったから分からなかったけど、冒険が歴史と文明を築いた。それはとてもすごい事で、そこでふとジョンを思い出した。ジョンはどうして、トマクの母親にあんなにキレたのか。何となく、言葉の深みが分かった気がした。

放課後になって、イアンはトマクと一緒に門前大広場に向かった。会えなければそれでいい。でも会えたらと思って。キョロキョロする少年達。

「やっぱいないか」

そんな時だった、ワープポートの1つからジョンとその子分達が姿を現した。

「いた!」

駆け寄っていく少年達。

「おっさん!」

「あ?チッなんだよ。冒険にはもう誘わねえって」

「そうじゃない。その・・・授業でやってた。冒険が、社会の役に立ってるって。だから、おっさんもすごい人なんだって」

子分が笑い出すと、ジョンはその脇腹を小突く。

「当たり前だ。だから何だ」

「その、冒険のこと教えてくれて、ありがとう」

「・・・はあ?」

イアンの言葉に驚いた顔でフリーズしたジョン。そんな顔は初めてだった。でも少年達は微笑んでいた。

「おっさんに冒険教えて貰わなかったら、ずっと楽しくなかった」

「オレ達、今はヘイゼルのおっさんの弟子になったんだ」

「・・・ヘ、ヘイゼル・・・ハハッくそ懐かしい名前出しやがって」

「それだけ。じゃあな!」

すごいと思ってる人にタメ口の無邪気な少年達は颯爽と去っていった。そんな2人を、ジョンは険しい表情で眺めていく。稲妻のように脳裏に走ったのは、若き日の記憶。息子と、その友達。

「ジョンさん、来ましたよ?」

子分のレビーの言葉に我に返った。別のワープポートからやって来たのは、冒険の指南をしてやるからと呼びつけた、新米冒険者2名。大学2年生だそうで、昨日冒険者になったと息巻いてるくせに自信満々の、怖いもの知らずのバカ野郎共。


中心街からは少し離れた立地にある、つむぎストライカーズ専用の集合場所。そこに1人の客が来た。出迎えたのはオリヴィア。

「ウツセミさん、いらっしゃい。どうしたんですか?」

「お伝えする事がありまして、ついでにどんな空間か寄ってみようと思いまして」

キャットタワーのてっぺんに座っていたつむぎは身軽に降りていく。

「龍に関するお話です」

読んで頂きありがとうございました。

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