表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ですか?…すみません ウチそういうの結構です   作者: ODN(オーディン)
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/62

53.「衣替えの時季は人それぞれです」

「…目を閉じて、アキちゃん。…そうよ、体の力を抜いて。…ふふふ、素直で可愛いわ」

「アダルティーさん止めて下さい。不謹慎です。」

「ふむむむむ~」

昼食後の一休み。アダルティー指導の下、アキは自身のマナを操作する修行に励んでいた。

ベルマーの下で学んだ瞑想(めいそう)によって精神統一と自らに流れるマナを知覚する基礎を築いたアキ。今度はその応用として自らのマナを(からだ)の外側で循環させる修行だと、アダルティーは語っていた。



『 ねえ、ウロコ。アキちゃんの服って、元は貴方のモノよね? 』

発端は昼食の片づけをしている最中のこと、アキが纏っていた衣服に目を止めたアダルティーの質問から始まる。

服といっても、裸んぼのアキに耐えきれなかった鱗が自身のスカートを外套のようにしてアキにかぶせたもの。アキ本人は裸でも気にしないと言っていたが今後の事を考えるとアキの服を用意する必要がある。

 幼女、少女、乙女…と自身のマナに応じて様々な姿に変化するアキ。

与えたスカートでも全て(、、)を覆い隠せるわけではない。「火」という性質上、並みの衣服では感情の起伏だけで燃え焦げてしまうため、現状では地底湖での戦闘にも耐えた鱗のスカートが最もアキの衣服に適しているといえる。

『 アキちゃんの頑張り次第だけど、どうにかできるかもしれないわ 』

事情を伝えるとアダルティーは意気揚々と立ち上がって、銀髪をなびかせる。

「ああ、美しい髪だな」と鱗が僅かに意識を反らした刹那、アダルティーは全裸になっていた。

『 私たちエルフの衣服は自らのマナを編んだもの。普通の衣服では過酷な旅や戦闘には耐えられないから私たちは自らのマナを体表に纏って形にしている。エルフも元を辿れば母様たちの(マナ)そのもの。肉体という概念が人間よりも曖昧(あいまい)なのよ。だから本質が「火」であるアキちゃんにも同じことができるのではないのかしら? 』

・・・凄いものをみてしまった、と述べる他ない。

同性でありながら鱗は初めて女性(、、)の身体に芸術的感動を覚えた。「触りたい」という邪欲よりも「見ていたい」という願望が勝る神の創造物。あの御姿を見てしまっては自身の悩みなど小さきものと錯覚するほどの果てしない美しさ。美しい()いうつくしいふつくしい…そも「美」とは何たるかという形態崩壊を発症するほど衝撃が鱗の脳天を貫いた。

『 アダるん!まだおふろのじかんじゃないよ!』

『・・・は。すみません。話が入ってこないので、とりあえず服を着てください。』

小一時間ほど棒立ちになりかけていたのをアキの一声に救われたところで、ようやく鱗は消し飛んだ理性を取り戻したのであった。



「むむむむ~むずかしいよ!アダるん!」

「アキちゃん。「火」として生まれたときの記憶を思い出しなさい。火は風に揺らぐもの。今の貴方は()に入っていることに慣れてしまっているだけで本当は分かっているはずよ。ゆっくりと()えている()を思い出して。ちょっとだけ自分を大きくするの。」

「自分を大きく…」

「そう。貴方たち人間の感覚でいえば「身体を拡張する」といった具合かしら。…ああ、そう言うと私の魔力感知に通ずる部分はあるかも…ついでだからウロコも魔力感知の修行をしてみましょうか。」

「え!あ、はい!…魔力感知かぁ…」

若槻鱗は魔力感知が出来ない。ベルマーとの修行の日々で「目にマナを宿す」やり方を実践してみたところ目から血が吹き出そうな感覚に馴染めず断念。以降は剣術鍛練と魔術の工夫に注力するばかりの日々であった。

「ウロコ。あなた魔術を知らなかった人間にしては(おそ)ろしく筋が良いから…きっとすぐにできるようになるわよ」

「ありがとう…ございます?」

あのアダルティーから「筋が良い」なんて誉め言葉(、、、、)を貰えるとは思わず、曖昧に御礼を述べる。

「自分を拡張する…か」

ひとまずアキに(なら)って瞑想の形から集中に入る。

目を閉じて呼吸。息を吸い、吐く。緊張と緩和を繰り返して身体の力を抜いていくと脈々と流れていた心臓の音が耳の中を支配する。ベルマーは呼吸から血流の流れを意識してマナを知覚する、と言っていたが鱗は心臓の鼓動だけで事足りる。

昔、生前にやった〝潜水遊び〟の記憶。世界の中の世界(、、、、、、、、)を見出して、死を追いかけていく感覚を思い出す。

生前になかった身体の異物(、、)を捉え、それを内側で搔きまわす意識——お椀で混ぜる卵を想像しながら彼女の言葉を思い出す。

「身体を、拡張」

お椀を透明な硝子の器に変えて、それをなくす(、、、)。宙で再現なく掻き混ぜられる卵だけが残り、徐々に回転(かいてん)を強めていくと。

「‥‥ダマ(、、)がある」

混ぜても混ぜても消せないもの。

回転の強まりと共にそうしたダマがぶつかっていくと卵を回す(はし)が次第に重くなり始める。

「ウロコ、そこまで。」

肩に手を置かれたところで現実に引き戻される。攪拌(かくはん)して広がった卵は逆再生のように中心へ。そして元の身体(うつわ)に戻ったところで僅かな疲労感が波を立てる。

「…初めからここまで出来るとは予想外だったわ」

「正直、出来ていたかどうかも分かりませんが…」

「いいえ、上々よ。引っ掛かり(、、、、、)を感じられたのなら後は繰り返して精度を高めていくだけ…それと「回転」だと疲れてしまうから次は一方向に「伸ばす」よう意識してみましょうか。」

初めての試みとなったアダルティー式の魔力感知。

ベルマーに習った視覚による魔力感知よりも不快さはないが難易度はかなり高そうだ。

「みてみて!あたしもできたよ!」

嬉しそうな声を上げるアキの方を見ると炎のようなものを纏った幼女アキの姿があった。実体のない炎と表現すべきか赤いモヤのようなモノが彼女を包んでいるのが見て取れる。

「一応…服にはなってるのかな」

触れてみようと手を伸ばすと、やはり実体はなく少し温かな感触が手に残る。

「とっても上手よ、アキちゃん。最初は難しいと思うけれど慣れてくれば眠っていてもその状態でいられるはずよ。頑張って」

「うん!あたしね!いつかねっ!マ~ちゃんみたいなフクをきるの!」

「あら~?私のは着てくれないの?」「うむむむ~」

やや悲し気な表情をするアダルティーをみて、アキも難しそうな顔を浮かべる。

「う~ん。じゃっあ~ ふたりのフクをきるよ!」

「本当に?じゃあ楽しみに待ってるわね」

「うん!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ