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転生ですか?…すみません ウチそういうの結構です   作者: ODN(オーディン)
第一章

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41.「大都へ」

「————それでアキちゃんだけでは物足らずウロコまで容赦なく負かして逃げて来た、ってことね。大人げないわ」

「あれも修行の一環ですから、」

アダルティーのチクチク言葉に嫌気が差して耳を搔くと指先に乾いた土がこびりついていた。アキとの魔術戦で受けた土魔術の跡。それを見て成長(・・)を喜ぶと共に泣き崩れた赤の幼女の姿が鮮烈に蘇る。

拠点近くの小川で(どろ)は全て洗い流したつもりだったのだが、どうやら見落としがあったらしい。

「…ただワカツキには(わる)いことしてしまいました。」

朝食後に対峙したワカツキの視線が一時外れた時があった。隙と判断したベルマーはすかさず木剣を打ち込んだが、あれは相手の集中を乱した自身に非があったと猛省する。

「帰ったら、ちゃんと二人に謝ります。」

ここに二人はいない。地底湖で遭遇した怪物の件があまりにも複雑であったため依頼を受けたベルマーと怪物を消滅させたアダルティーの二人だけで大都へ報告に向かうことにした。

‥昨日ガラティア洞窟に向かうまでは彼女らも大都に連れて依頼報告のついでに冒険者集会所と面識を持たせる予定であったが、あの時と今では状況が大きく変わってしまった。


「あそこ・・・」すると後ろを歩いていたアダルティーが突然足を止める。

振り返ると目的地とは違う方向へ駆け出した彼女の後姿があり、煌めく銀髪の軌跡だけを残して彼女は森の中へと姿を消してしまう。

「ちょ、ちょっと…」

人とは違うエルフの肉体。制止する間もなく慌てて彼女の痕跡をたどって見えない背中を追う。地面に残った足跡と散らばったネルバ木の木屑。倒れた木々の隙間から見えたネルバ木の切り株。以前にも目にしたような光景からベルマーは一人の淑女の姿を思い浮かべていた。

「ここは…あの場所か」

どうにか彼女に追いつき、息を整えながら周囲を見渡す。

あの頃とは地形が少し変わっていたため一時気づくのに遅れたが辿り着いたのは所長コウウラが倒れていた場所。ベルマーが地龍の襲撃に遭った地であった。

「どうしてここに?」そう尋ねようとしたところでアダルティーが口を開く。

「龍黒と天の母様のマナ…荒れているけど龍黒(かのじょ)の魔術の痕跡がある。これは…何かを守ろうとしたのかしら。防御の魔術に近しい波形だけれど彼女の体格に対して範囲が小さすぎるし――――」

周囲の痕跡を魔力感知で視ながら考察を続けるアダルティー。彼女の気持ちも分かるが急ぎ大都へ向かいたい心情も相まって横やりを入れる形でベルマーは自分が見た光景を口にする。

「この場所。俺の記憶違いでなければコウウラ所長が倒れていた場所ですね。」

「――――――うそでしょ」

アダルティーの耳がピンッと跳ね上がり、その場の雰囲気が一変する。緊迫した彼女の声。思わず放った自分の言葉を後悔するほどの緊張がベルマーの背を撫でる。

 普段は表舞台に現れない謎多き人物コウウラ。昨晩の話しぶりからアダルティーも彼女と面識があるような様子だったが二人の関係性を彼女の顔が物語っていた。

「彼女が・・・龍黒と?」

最恐の龍たる龍黒と所長コウウラ。その両者に関係があることを予期した美しきエルフは狼狽の表情を浮かべていた。儚げで、今にも膝から崩れ落ちそうな弱々しさ。何物にも動じない絶対的な余裕を持ち合わせていた彼女が取り乱す様子にベルマーは底知れぬ恐怖を抱いた。


          ・


「おーい!ベルマーじゃねぇか!」

視界の端に捉えただけだというのに門兵リング=リンドンは一早くベルマー達の到着に気づいた。

「こんにちは。リングさん」

「なんだよ。今日はやけに辛気くせぇ顔して…―――おい。そっちのべっぴんさんは誰だ?」

ベルマーの顔を見るなり何か言いかけたリング。

ところが後ろに立つアダルティーの姿を見ると態度が一変する。

「こんにちはベルリン(・・・・)の子の片割れ。弟さんは元気?」

「その言い回し…親父が生きていた頃に聞いた覚えがあるぞ。…アダルティーさん、だっけか。弟は元気だよ。今は‥‥ダメだな。昼飯を買いに出ちまってる」

「あら。私のこと、覚えていたのね」

「ああ、俺も驚いてるよ。案外、こっちはまだ衰えちゃいないってことだな」

頭を突きながら自慢げに語るリング。一方のアダルティーは話すたびに揺れる彼の立派な口ひげがツボにはまったようで楽しそうな笑い声をあげる。

「あ、そうだ。アダルティーさん。一応契約(・・)は上書きしてくれよ。エルフ様はいつ来るのか分かりゃしないからな。突然来られると参っちまう」

「そうさせてもらうわ」

そのまま詰所に連れられてアダルティーが契約の更新を始める。

新規の入都者も同様に行う契約。その手続き自体は簡単なもので門兵に手数料を支払い代わりに渡された上質な紙に自身の名を記し、紙に血を染み込ませるだけ。

「…あんた意外と字汚いのな」「達筆、って言って頂戴」

アダルティーの書いた紙。そこへ染み込ませた血に口を近づけるとリングは舌を出して一舐め。これで契約は完了となる。

「いつ見ても変わった魔法よね。貴方たちの「契約」って」

「そう真剣に見つめられると、あんまりいい気がしねぇけどな」

リンドン家の持つ「契約」は血に連なる魔法。

リンドン家の誰かが取り入れた血の記憶を一族全てに共有し、血の主を知覚する。

知覚範囲は広く、リンドン家の血筋が多いほど力を増す。ところがエルフのような長命種の場合「契約」の時から外れてしまうらしく契約の上書きが必要になるのだという。

「これで手続きは終わりだな。ところで前にも他のエルフ様が来たんだがアンタら集会でもすんのかい?」

「いいえ、偶然よ。‥‥ふーん。あの子いま——…まあ、とにかく気をつけてね」

「何だよ。気になる言い方だな」

一時何かを思案した後、含みのある忠告を述べるアダルティー。

不服そうに眉を吊り上げながらも「とにかくだ。ようこそ、アスカテーラへ」と二人を通してリングは門兵の仕事に戻っていった。

 ところが入都してから間もなくのこと。買い物から帰ってきたリングの弟と軽く会釈をしてすれ違うと後方からドスッドスッと大きな足音が迫ってくる。

どこかで聞いたような足音だと思い、振り返ると兄リングが必死な形相で「頼むから!路上で!全裸にならないでくれよぉぉぉぉお!」とアダルティーに懇願していた。

‥前回ベルマーが大都を出る際にすれ違ったエルフ。エルフ(かのじょ)に悩まされるリングの心境が思いやられた。


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