6.初めの朝…2日目へ
2日目
「うっ」
眩しい。カーテンもないこの部屋では直射日光が顔に刺してくる。
目覚ましが鳴る前に起きてしまった。いや、逆にこの状態でよく寝れたと自分をほめるべきか。絶対寝れないと腹をくくったが、疲れには勝てないようだ。一応2人を見てみた。
隼人はクーラーによって日が遮られているため快適に寝ている。そして、服部さんは壁際に顔を向けているため、日光で起きることはなさそうだ。
起こすわけにはいかないので、ゆっくりと体を起こしてベッドから出た。
体が少々痛いので思いっきり伸びてみた。
「グッ。グワーッ」
声にならない声を押し殺しながら出した。かなり伸びたことで気持ちが良い。寝ぼけている体が目を覚まし始めたらしく、動きが徐々にスムーズになってきた。
やることもないのでとりあえずスマホを見ることに
「あれ、圏外…あ…ここセブ島だ…回線なんて通ってなかった…」
ついいつもの癖でスマホをいじってみたが、ネット回線がないので使えない。昨日はホテルのWI-FIを直ぐに設定したが日をまたいだことで解除されていた。解除されるとネット回線は無いので何も使えない。海外にいることを実感した。
スマホが使えないことは実に不便で仕方ない。娯楽品が一切なく、危なそうな外に出るわけには行かないので、スマホがなければ時間は潰せない。
時刻は朝の7時。予定の起床時間より1時間早い。俺はWI-FIを再び接続してネットを開いた。俺のスマホには何百㎞も離れた母国のニュースが表示される。変な感覚だ。俺は日本にいない。なのに、出てくるニュースは日本のもの。実際にいるのはセブ島。技術の発展というものは恐ろしいものだ。地球にいる限りどこにいても日本の情報が手に入るのだから。
実感のわかないニュースを見て時間を潰し、洗顔などを行った。3人一斉に動いても洗面所が渋滞するだけ。なんなら早く起きて正解だったかもしれない。
初日でかなりハプニングが起きているこの旅も2日目を迎えている。俺はかなり心配してしまう。絶対もっとハプニングが起きるであろうことを予感しているからだ。
「こいつらよく寝るな」
時差ボケはないものの、俺がこんだけ動いて音を立てているのに一向に起きない。初めての土地でこんだけ寝れるのは旅向きの体質だ素晴らしい。一応声をかけてみた。
「起きてるやついるか」
「起きてない」
「うわぁ起きてんのかよ」
声の正体はクーラーの間近で寝ていた隼人だった。
「いつから起きてたんだ」
「起きたのはさっきだ」
「なんで動かなかったんだよ」
「勿体ないだろ目覚まし前に起きるの」
「まぁそうだけど」
マジレスされてしまった。だが、俺と話したことで目は覚めてしまったらしい。しぶしぶ起き上がった。眠そうだ。クールなやつはいくら寝起きでもクールなのは納得いかない。少しくらいブサイクな姿を見せて欲しいものだ。そうでないと世の中不平等だぞ。
「お前もう顔とか洗ったのか」
「あぁ」
「はーい。俺も洗うか」
目覚ましが鳴る前に2人も起きてしまったが、必然なのか一番寝そうな服部さんは寝ている。放っておくか。とは言えそろそろ起床の時間なので是が非でも起きることになる。
隼人も洗顔などを終えてスッキリしていた。2人で喋っていると目覚ましが鳴って服部さんが起床。爆睡していたようだが、俺らと話している内に起きてきた。
予想よりも早く支度が終わってしまい、暇を持て余すのも勿体ないので、少し早いが手荷物を持ってロビーへと降りていった。
もちろんミゲルはまだいないが、観光客らしき人達がちらほらとロビーにいる。国籍は様々な気がする。ロビーで座るよりも少し外に出たかったので、ホテルの前だけ出てみることにした。
屈強なガードマンに再び目が行くがドアを開けた。
「うぉ!なんだこの湿気は」
怪訝そうな顔を隼人が浮かべた。
必要以上の湿気が俺らにまとわりつく。昨日は夜だけだったのでわからなかったが、陽が出ているととんでもないくらいの高温多湿だ。熱帯だこれは。
「これはすぐに汗をかくな」
「歩く人皆超薄着だしな。服部お前は特に注意しろよ」
「誰が脂肪の上着を着ているだって?」
「言ってねぇよ」
2人でアホなことを言っている。少しだけ歩いたが初めてセブ島を俺たちだけで歩いていて気分が高鳴っている。こんなにも見るもの全てが面白く感じる瞬間はあまりない。スリにだけは気を付けて歩いた。あまり歩くのも怖いのでホテルのロビーに戻った。
「楽しい」
俺は思ったことを正直に吐いた。これには彼らも共感してくれた。
「やばいよ!よ俺ら本当に海外にいるんだ」
「暑い…がそれ以上に楽しいね」
一日の始まりはとてもいいものになった。