46.キャニオニング3
俺は気づいたことがある。どんどん飛び降りる崖の高さが高くなっているのだ。
ゴルゴ曰く次が最後らしいが、どんな高さになってしまうのだろう。
そろそろ命の危険を感じてくる。
キャニオニングも終盤。最後の崖に行く道も険しいものになった。
両脇を岩の壁で囲まれているところでは急にゴルゴが壁を登り、壁ジャンプをして飛び込んできた。
壁に沿って落ちないようにしないといけない場面では、ゴルゴが足場で懸垂を始めた。
泳いで渡る場面では最後尾にいたはずのゴルゴが俺たち全員を泳ぎの速さで追い抜いた。
この男は身体能力が化け物なのだ。
あまりの身体能力の高さに俺は彼をサイボーグだと疑い始めた。
ゴルゴはジャングルを進撃する。
「着いたぞ」
険しい道のりの先に最後の崖が待ち構えていた。
「高っ!!!ナニコレ!!!」
軽く委縮してしまった。
「この高さは恐ろしいねぇ。樹里がそこまで縮こまるのも納得だよ」
「服部さんは怖くないってのか?」
「もう感覚おかしいから恐怖のリミッターが外れた」
「一番怖い状態じゃねそれ」
「飛びたいね!」
「落ち着け服部さん!隼人こいつを止めろ・・・あれ」
隼人は膝に両手を当てて肩で呼吸をしていた。
「あ?呼んだか?」
「疲れてるね」
「そりゃそうだろ。ジャングルを駆け巡り泳いで崖から飛び降りまくってるんだぞ。体力の限界が来てもおかしくない。お前らが余裕そうなのが不思議だよ」
「いや、違うぞ隼人よ。アドレナリンが出てよくわからなくなってるだけ」
「お前も怖い状態じゃねえか!服部のこと言えねえよ」
若者でなければこのキャニオニングを完走するのは難しい。
それだけは言い切れるだろう。
「よしお前らヘルメットを脱げ」
「え?」
今までずっと着けていたヘルメットを取れと言われた。
この状況で取るのはなぜだろうか。
「最後は高さが15メートルで着水した時にかなり深くまで行ってしまう。ヘルメットしてると首紐が首を絞めてしまう可能性があるんだ」
命を守るはずのヘルメットが逆に命を脅かすとは考えもつかない。
言われた通りヘルメットを外してゴルゴに渡した。
「よし、では最後のジャンプだ。誰からだ」
最後の崖。みんな恐怖はあるものの顔つきはたくましい。
最後を楽しもうとしている。
「最初行ってないのは俺だけだ。俺が行くよ」
隼人が率先して名乗り出た。
驚いたが、俺と服部さんは大人しく後ろに下がった。
ゴルゴも率先したことを褒めている。
「率先するとはいい肝を持っている」
「まあね。俺だけ最初の恐怖を味わってないのは不公平だろ」
「いい心がけだ。飛ぶ前に1つ言っておこう。お前ら3人共通してのことだ」
最後の崖を前に何を言われるのだろうか。
「お前たちはこのジャングルで何も危険な目にあっていない。障害らしい障害も起こってない。これはジャングルの主がお前らを気に入っている証拠だ。そのジャングルの主に見せつけるように最後飛ぶといい。ジャングルの主を楽しませられたらお前たちは英雄だ」
なんてカッコいいことを言うのだろう。
そんなことを言われたら火が付くに決まっている。
やる気は十分補充された。
あとは飛ぶだけ。
「よし!行ってくる!」
隼人はジャンプ台に立って直ぐに飛んでいった。
隼人が着水する音がするまでかなりの時間がかかった。相当に高いことを物語る。
「じゃあ次はこの服部が行くよ」
「お、まじか。お先どうぞ」
服部さんも躊躇なく崖から飛び降りた。
最後は俺だ。
ジャンプ台に立った。
なんて綺麗な景色なのだ。眼下にはジャングルが広がり、上を向けば空が近い。
ジャングルが俺に注目している気がする。
確証はないが、そう思う何かを俺は心の中に感じている。
これがジャングルの主によるものだとしたら面白い。
「見ててくださいよ。ジャングルの主!よし!」
キャニオニングの最後であり最後の崖。
俺はジャングルを前身に感じてジャンプ台から飛び降りた。
目の前の一番高い木が少し揺れていた。
「改めて言おう。お前たちはジャングルの主に気に入られていた。それは誇っていい。しかも、みんないいジャンプをする。面白い奴らだったよ全員」
俺たちのキャニオニングは最後に飛んだ崖で全行程を終了した。その後はゆっくりと歩きながら受付近くに戻った。
更衣室で着替えてミゲルと合流したところ。
つまり、ゴルゴとお別れの時だ。
隼人が答えてくれた。
「ジャングルの主に気に入られてよかったです。キャニオニングはすごく楽しかった」
「楽しいと言ってもらえてよかった。最後は握手でもしておこう」
俺たち全員とゴルゴは握手をして別れを告げた。
「じゃあな。達者で」
「ゴルゴもね!」
最後まで渋い男だった。
「ホテルに・・・いえ、空港に行きマスよ!」
「はーい」




