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3.いざ上陸

 

 税関は特に何もなかったので安心した。

 日本でも同じようなことをしたし、持ち込み厳禁なものはしっかりと把握しているので厄介なことはなかった。引っかかてしまったらシャレにならない。

 そうなることなく、俺たちは空港のロビーへと通過することに成功した。

 この時点ではあまり南国感はない。そう、やけに近代的なのだ。このセブ・マクタン空港は。

 上は木が編み込まれて作られたであろう屋根が見え、床はしっかりとした綺麗な白タイル。

 とても島の空港とは思えない。新しすぎる。セブ島ではないだろうこれは。

 確かに従業員は東南アジアの方々なので、そこは東南アジアと感じる。この現代的な空港を出て現地のガイドと合流することでホテルまで連れて行ってくれる。

 

「なぁ隼人。出口に行けばいるんだよなガイドの人」

「いるはず」

「絶対と言える?」

「ちゃんといるだろ」

「ファイナルファンタジー?」

「ファイナルアンサーや」

 

 やりとりを終えて「Exit」の看板を見つけた俺たちはそそくさと向かっている。

 出口を見つけて出口の自動ドアを開けた。

 

「蒸し暑いっよぉ」

 

 服部さんが弱音を吐いた。飛行機を降りた時よりも感じる湿気。湿気に包まれるというよりもほぼ水の中にいる感覚だ。息苦しささえ感じる。日本では春先だったのでシャツを羽織るレベル。それが急に湿度70%くらいの真夏に投げ出されたら体は驚く。さらに隼人が思いを述べる。

 

「暑いぃぃぃなんだここは」

「これが熱帯なのかそうなのか」

「樹里うるさい」

「ナカヤマサーーーーン」

「ん?」

 

 どこかで俺を呼ぶ声がする。この湿度の中酸素が頭にいかず脳が働かない。だが、俺を呼ぶ声は判別できる。カタコトの日本語なので考えられる可能性は1つ。

 

「ガイドが俺を呼んでる!」

「お、名前を叫んでいるとはわかりやすい。いいガイドを選んだぜ。よくやった俺」

 

 隼人が自画自賛している。

 

「隼人が申し込んだのに、何で俺の樹里の名前で呼んでるんだ」

「現地の人に名前送る時に一番上に樹里の名前書いた。そしたら、そこ代表者名だった」

「何してくれんだ!ガイド全部俺に話振ってくるじゃねえか」

 

 まさかだった。勝手に代表者は隼人だと思っていた。いや、普通そう考えてもおかしくない。現地ガイドのメールは隼人に来ていたはず。あちらのガイドは「ナカヤマ ジュリ」にメールを送っていると思い込んでいるのに、実際は「シミズ ハヤト」が受け取っていた。それを本人は訂正することなく、そして、俺に何も言わずなりきっていたのだ。俺に。

 

「よし、ガイドの声がする方へ行くぞ」

 

 しらばっくれて隼人は歩き出した。文句を言いながら俺はそれについていった。服部さんは大爆笑しながら着いてきた。

 物凄く俺の名前が呼ばれているので、すぐにガイドの場所はわかった。とても陽気に見える日焼けした少々小太りなお兄さん。俺も言いかけたが先に隼人が代弁してくれた。

 

「服部。あのガイドお前を黒くした感じじゃん」

「えぇ!俺?あぁ確かに俺だ」

 

 彼は納得してしまった。少々小太りな時点で似ていると錯覚してしまう。

 やっとガイドに話しかけた。

 

「ナカヤマは俺らです」

 

 仕方がないので「ナカヤマ」である俺が話しかけた。

 

「待ってましター!よろしくお願いしマース」

 

 南国の人という言葉がぴったりなガイドだ。日本語は上手であることに間違いない。英語でのやりとりが無いことがわかると安心する。

 早速メールでの件について話始めたが俺は何もわからない。なので、メールを受け取っていたのは隼人であることを伝えて誤解を招くことを防いだ。

 

「ハッㇵッㇵッ!面白いデス。あ、申し遅れまシタ。私ミゲル」

 

 このガイドはミゲルというらしい。簡単に挨拶を済ませるとミゲルはいいことを教えてくれた。

 

「夜ご飯はそこら辺で買っておくといいデスよ」

 

 ここからホテルまで連れていく中で、どうやら夜ご飯を変えるところはあまりないらしい。そして、空港内にあるお店であれば日本人は基本的に口に合うらしい。中に戻るのもめんどくさかったので

、出入口付近にあった売店へ向かった。その間に荷物を車にいれておいてくれるとのこと。身軽な荷物で売店へ向かった。売店は日本とあまりかわらない風貌。国際空港ということもあるのか、かなり清潔で現地らしさはない。

 

「夜だからあまり無いなサンドイッチでいいか」

 

 そうぼやくと服部さんが反応した。

 

「充分だ。美味しければそれでいい」

「じゃぁサンドイッチ買って戻るか」

「お前ら水も買え」

「うぉ!忘れてた確かに!」

 

 俺たちはこれからホテルに行くというのに何も持っていない。飲み物も持っていないのだ。コンビニという概念が定着しているのですっかり危機感が足りなかった。こんな暑い中、飲み物無しは即脱水症状だ。保険の効かないこの地で病院送りは避けたい。水はかなり在庫があるらしく、余裕で買えそうだった。お菓子とかも買おうとしたが、どうせホテルに戻って飯食ってシャワー浴びて寝るだけ。いらないだろう。時差は1時間なのであまり時差ぼけの支障はない。普通に寝れるはず。

 

「さて、会計するか」

 

 現地通貨での初めての会計。緊張する。俺が一番最初の会計だ。

 商品を差し出すと店員がレジに色々打ち込んで金額が出てきた。

 そこには「120」という数字。これは高いのかわからない。だが、1ペソあたり2円から3円換算だと聞いた。てことは、これはお会計が300円くらいという事。安いかもしれない。事前に両替をしてペソは持っていたので支払いはスムーズに行えた。初めての買い物は意外とあっさり終えれた。これなら後続の彼らもスムーズにお会計ができそうだ。

 

「隼人、服部さん。外で待ってる」

 

 彼らはうなづいた。

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