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35.コンビニエンスストア

 長いドライブの暇つぶしにはなる話だっただろう。海外旅行には珍道中が付き物というが、珍道中過ぎたのだイギリスでの思い出は。

 

 おかしい。俺は陰キャのはずなのだ。日本で過ごす時はれっきとした陰キャでやらせてもらっているのに、俺はなぜかよくわからないタイミングで異常なコミュ力を発揮することがある。普段はそこまでコミュ力高くないのに。自分でもどういった時にコミュ力を急に発揮するか不明なのだ。もしかしたら俺は生粋のコミュ力お化けなのだろうか。いや、ありえない。過度な妄想は辞めて陰キャという現実を受け入れよう。

 

「さぁ皆・・サーン!チョコレートヒルズまでは長いデスよ!!」

「はーい」

 

 俺たちは少々長いドライブをすることになった。

 

 

「コンビニ寄りマスか?」

 

 ミゲルは長いドライブ中急にそう俺たちに問いかけてきた。

 

「え、コンビニ?」

 

 俺はそもそもコンビニがあることに驚いた。

 

「この先にありますよ。どうでしょう。皆さんも飲み物とか買うために一度コンビニで休憩するのは」

 

 アンドレアの提案に俺らは同意したのでコンビニに行くことになった。

 ミゲルが提案してから本当に直ぐにコンビニがあったのだが、俺は目を丸くした。

 それは日本人ならだれでも知っているセブンイレ〇ンが車窓の左先に現れたからだ。見間違えるはずがない。あのロゴにあの色合い。フィリピンのボホール島で出会うとは思わなかった。車窓の右前を見ると子どもが沢山。これはまさしくあれだろう。

 

「コンビニの前学校じゃねえか!」

 

 学校を終えた学生なのか続々とそのコンビニに入っている。買い食いだ。コンビニも儲けるためにここへ建てたのだろう。制服を着た学生がとても多く、日本と同じく学生らしいあどけなさを少々感じる。俺達も学生ではあるものの大学生。彼らは見た感じ中学生だ。同じ学生でも彼らにはあどけなさを感じてもおかしくはない。精神年齢はもしかしたら同じかもしれない。俺らが低いからだ。

 

「駐車しマス!!」

「はーい」

 

 コンビニに入ると日本と同じような空間に、店員さんはあの制服。

 

「日本じゃん!」

 

 服部さんは目を見開いている。

 

「一応商品はフィリピン仕様だけど店内の雰囲気は変わらないか」

「でも、隼人よ。熱帯の中から現れる建物が急に無機質なのは変だよ」

「確かに木造でもないしな。景観としては不思議だな」

 

 そう。熱帯の中からセブンイレ〇ンが現れるのは違和感が凄いのだ。住宅街やオフィス街の中にあるという固定概念がこの感覚のズレを生んでいる。

 

「Hi~」

「ん?あ、やぁ」

 

 俺は誰かに声をかけられた。いや、正確には挨拶されたというべきだろうか。そういえば店内に入ってから視線を感じる。日本人が物珍しいのかもしれない。中学生として学校の前で外国人の若者を見かけるというのはそれだけで稀な出来事なのである。自分に置き換えればなんとなく理解できた。

 

「ドライマンゴー!!」

 

 服部さんはドライマンゴーを見つけたのでテンションが上がっている。俺と隼人はそれを無視して冷蔵ケースから飲み物を取ってレジへ行った。

 

「・・・」

 

 店員は無言で商品をレジ打ちした。俺は他の店では驚かなかったのにも関わらず、ここでは驚いてしまった。「いらっしゃいませ」がない。他の店でも「いらっしゃいませ」はなかった。それに対して何も思わなかったのに、ここでは不思議に思ってしまったのだ。だってここはセブンイレ〇ン。俺の脳はここを日本であると錯覚しており、日本的接客が行われると勝手に先読みしてしまったのだ。脳が驚きと共に再び認識をフィリピン仕様に戻した。

 

「Thank you」

(ニコッ)

 

 俺を言うと店員さんは笑顔で答えてくれた。その笑顔はとてもきれいだった。絶対彼はいいやつだろう。さて、必要なものは買えたので戻るとしよう。

 

 車は再び目的に向かって進みだし、服部さんが買ってきたお菓子やドライマンゴーを食べるもぐもぐタイムに突入している。服部さんが買ってきたお菓子はどれもハズレがないので、お菓子を取る手が止まらない。無限に食べられるとはまさにこのこと。

 

「あ、そういえば皆さん。先ほど学生たちに挨拶されていましたよね」

 

 アンドレアがそう話を切り込んできたということは何かあるのだろうか。

 

「フィリピンの若い人達は日本人の顔だちをカッコいいと思う傾向があります。皆さんは憧れの対象として見られていたのですよ」

 

 とても意外な理由が聞かされた。

 

「ん?つまり俺はフィリピンだと爆モテ!?」

「おい樹里。爆モテなんて言葉はもう使わねぇよ」

「なんだと隼人。こちとら爆モテを目指して日々頑張っているんだぞ」

「知ってるよ。短冊にも書きやがって」

「仕方ないだろモテないのをネタにしたらこうなっちゃったんだよ」

「かわいそうな奴め」

「グハッ・・・!」

 

 俺は隼人の言葉が心に突き刺さった。言われ慣れているので何とも思わないけども。ネタにしているのは俺自身だからな。

 

「隼人!樹里が可哀そうだろ!」

「いや、服部。いつもこのやり取りしてるだろ」

「樹里が可哀そうだろ!」

「いや、だからいつもこのやり取り・・」

「俺も爆モテしたいんだよ!」

「お前もかよ!なんだ2人そろって!」

 

 彼女が欲しいとか明確な目標を挙げるのではなく、あくまでも抽象的な「爆モテ」という単語を使うことでネタらしさを全開にしている。モテないという逃れられない既成事実が存在している以上、このモテないという肩書をどう使用しようが我々の自由だ。俺に課せられた肩書を全うしている。何も悪くないし、悲しくもない。虚しさもなければ悔しさもない。でも、なぜだろう。泣きたくなってきた。

 

「なんで顔死んでるんだ」

 

 隼人にはこの絶望している心の内が見透かされていたようだ。

 

「いや、まぁ自分の発言でちょっと」

「自業自得やん」

「グハッ・・・・!!」

 

 そんなやり取りを続けた。

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