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34.海外珍事件簿

「はい。ではそろそろ下船準備です。皆さんの踊りは非常に素晴らしかったですから、ミゲルにも話しましょう。いいお土産話です」

「はーい」

 

 船着き場に到着したので下船したのだが、降りる時に非常に多くの人に話かけられた。多分Young Manで踊ったからだと思うし、褒められているのは言葉わからずとも感じ取れる。しかし、感じ取れるだけで本当に言葉はわからないので、何言ってんのか一切わからない。これほど英語を喋れたらと思ったことはない。

 9割の満足感と1割の恥ずかしさを船に置いていってこの船と川に別れを告げた。

 俺はこの船での出来事は絶対忘れない。

 

 

「あぁぁ涼しい」

 

 今回はちゃんと駐車スペースにミゲルがいたので、スムーズに乗車できた。どっと疲れが押し寄せてきたようで、全員ぐったりしている。プロのダンサーは毎回こんな疲れることをしているのかと思うと、尊敬をしてもしきれない。凄すぎる。

 ぐったりしている間にアンドレアがミゲルに事のいきさつを話していた。

 

「皆さん最高デーーース!見たかったですヨーーーー!」

「ありがとうミゲル」

 

 アンドレアは隠していただけで、興奮していたようだ。興奮冷めやらぬテンションでミゲルに熱弁している。

 

「皆さん。ここから車長いですからね」

「はーい」

 

 その言葉を最後に俺は徐々に意識が遠のいて・・

 

 

「!?」

 

 この感覚は間違いない。絶対寝てた。

 

「あぁぁぁぁまた寝たぁぁぁ」

 

 俺は天井を見上げて悔しがった。もうある程度の移動中は全て寝ていると言って間違いない。

 

「お、起きましたネ!」

「あ、ミゲルおはよう」

「ここトイレデース!他の2人は今さっき出ていきまシタよ」

「え、あ、じゃあ行ってくる」

 

 俺は急いで車から降りてトイレに行った。だが、俺は不吉な予感を覚えた。

 まず目の前にある建物がトイレなのだろうが、なんと今にも壊れそうな恐ろしさだ。

 ボロい。この言葉に尽きる。大丈夫なのだろうか。

 隼人がボロい建物から出てきた。

 

「お、隼人!どうだったトイレ」

「樹里・・気を付けろ」

「え、」

「気をつけろ」

「何に」

「ここを日本のトイレだと思うな。トイレの概念をまずは消してからここに入れ」

「え、あ、はい」

「これだけ言っておく、個室の鍵はかからない。便座が無い。その他諸々だ」

「Wow・・・」

 

 隼人は俺の肩を叩いて車に戻っていった。

 隼人を見る限りなかなかやばそうではある。あいつがあそこまで言うのだ。余程心してかからないとダメな気がする。

 俺は満を持してトイレに入った。

 

「Wow!!!!!!」

 

 俺はそう口にして、絶句した。

 

 

 

「みなさーーーン。トイレに行きましたが、そろそろ目的地デース!」

「あ、はーい」

 

 トイレはゆっくり用を足すことができなかった。日本がいかにトイレ先進国なのかがよくわかる場所だった。

 さて、トイレのことは忘れて次の目的地に意識を向けることにする。場所はチョコレートヒルズとのこと。このボホール島でもかなり有名な観光地であり、名前の印象深さから1回聞いただけでなんとなく覚えられるこのチョコレートヒルズ。非常に美味しそうではあるが、名前の通りなら丘のはず。チョコレートの丘と直訳するといまいちどんなものなのか想像ができないが、多分チョコレートに似ているのだろう。美味しく観光できるように到着までに空腹にでもしておこう。

 

「さて、樹里よ」

 

 隼人は満を持したとでも言ってくるような口調で話始めた。

 

「さっきの海外2回とも踊らされた話を聞かせてもらおうか」

「船で隼人と服部さんが驚いていたやつか」

「そうだ」

 

 冷静に考えると意味が分からない話だからな。聞きたくなるのもわかる。

 流石に1度話題を出してしまった以上説明責任を果たすとしよう。

 

「俺フィリピンが2回目の海外旅行で、1回目はイギリスに行っているんだよ。季節は冬だったかな。ロンドンの街のお土産屋で何か買おうと思って、店に入ろうとしたんだ。そこで事件は起きた」

 

 隼人と服部さんは真剣に話を聞いている。そこまで真剣に聞く話でもなかろうに。

 

「入り口にお店の店員さんだと思われる人がサンタのコスプレして踊ってたんだよ。客引きの意味合いがあったんだろうね。ほんでまぁ、そのサンタに絡みに行ったんだよ」

「何でだよ!」

 

 隼人の的確なツッコミが入ったけどもとりあえず話を続ける。

 

「面白そうだったから絡みに行ったのかな確か。クリスマスの時期とっくに過ぎているのに、サンタのコスプレで踊っているのめちゃくちゃ面白いだろ」

「いやぁ確かにそれはそうね」

 

 服部さんは大きく頷いていた。

 

「そこで絡んでからお店に入ろうとしたら、一緒に踊ろうぜとか言われてね。この状況で断るのは空気読めない人みたいだし。それは嫌だったから、承諾したのよ」

「なるほど。それでどうなったんですか」

 

 アンドレアが急に入ってきた。聞いていたのかこの人。

 

「サンタともちろん踊ったよ。なんか色々ジェスチャーで指示されてそれに従いながら、踊ったね。恐ろしいのはこの全ての元凶サンタと踊ってたらさ、なんかのパフォーマンスか何かかと勘違いされて結構人だかりができちゃったんだよ。もうこうなると中途半端なことできなくなっちゃって」

「oh・・」

 

 いや、ミゲルあんたも聞いてたのかよ。

 

「パフォーマンサーになりきってこのサンタと観客を楽しませることに全力だった。そしたらめちゃくちゃ動画取られてたし、人だかりに近づいたらハイタッチとかめちゃくちゃしてくれたし、なんなら踊り終わってお辞儀した時は拍手を浴びたんだよ。はい。これが海外で踊らされた話の全貌」

「お前イギリスでなにしてんだよ」

 

 俺はとりあえず微笑んだ。隼人のその純粋なその疑問は寸分狂いなく正当な疑問だ。俺はイギリスで何していたんだろう。あのサンタのせいでわけのわからない経験をしてしまったのだ。そして、服部さん達はただただ笑っている。

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