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32.船上ランチ

 

 今日一日ミゲルが全部運転してくれるのだが、とても不安になってきた。運転がただ荒いだけならいいが、事故とか起こしたら洒落にならない。

 

 

「あ、来た」

 

 隼人は指を指してそう言った。見覚えのあるというか、本来ここにいたはずの車が適切な場所に戻ってきたとでも言っておこう。近づくにつれて運転手の顔も見えてくる。間違いなく、というかそもそも1つも疑っていない。あれは確実にミゲルだ。ここからの距離でもわかる。いつも通りニッコニコだ。

 

「やっと来ましたか・・」

 

 アンドレアは安堵の声を漏らす。なんかこの一瞬でアンドレア老けたか?

 

「皆さーーん!お待たせしまシターーーー!」

 

 めちゃくちゃ元気。罪悪感とかは何も感じない。もはやここまで清々しいというのは素晴らしいのではないだろうか。賞賛に値する。ここまでの図太さを俺も持ち合わせたいものだ。

 

「では、皆さん車に乗ってください」

「はーい」

 

 アンドレアに促されて車に乗った。保護施設自体の滞在時間は短かったが、今日も1日は長い。まだまだ予定は目白押しのはずだ。

 

「ミゲル!*+‘*+‘*+‘‘‘‘‘+???」

「HA!HA!HA!=~```L+>??++`O&%$」

「ミゲル!&%$#&&」`+#”””””*+」

「HA!HA!HA!$#“$&&&&&&&!」

 

 車に乗ったら即座にアンドレアによるミゲルに対しての説教が行われている。ミゲルは何も気にしていない。ずっとニッコニコ。日本人っぽい真面目な感性のアンドレアと現地セブ島の陽気な感性を持つミゲルだ。そりゃこうなる。てか、俺ら一応観光客なのだ。なんで目の前で説教してるんだ。普通こういうのって会社帰ってから後日怒られるものじゃないのか。

 

「隼人~すごいね~我々を乗せているのに公開説教してるよ~」

「俺たちのこと忘れてるんじゃないのかあれ」

 

 服部さんと隼人もやはり同じ感想だ。

 

「自由だね~」

「まぁ、セブ島らしく陽気で自由と言えばそれまでだが・・」

「面白いじゃないか!これぞセブ島!」

「馬鹿たれ!服部!セブ島の人に怒られろ」

 

 彼らのそういった会話の最中も前では説教が行われている。カオスだろこの車内。

 そしてこの車どこ向かってるんだ。お昼食べるとだけ事前に言われているけども、それ以上の情報はない。何を食べるのか楽しみにしながら目の前の喧嘩・・説教を見守るとする。

 

 

「着きまシタァァ!」

「え、ここ?」

 

 到着したのはレストランではない。川辺だ。

 

「ちょっとミゲル~お昼ご飯じゃないの?」

 

 服部さんがそう問いかけると思いがけない言葉がアンドレアから返ってきた。

 

「ここであってます。皆さんには船に乗ってそこでご飯を食べて頂きます。船上ランチです」

「えぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 今日一番声が出た。船上でお昼を食べるだなんて想像していなかった。驚きしかない。

 だが、待て。船上ランチと聞けばとても豪勢なものを期待するが、船上といえどもここは海の上ではない。川だ。しかもここは見た感じ熱帯雨林。熱帯雨林の中を巡る船。そこで食べる食事。想像つかない。

 

「私は・・・終了地点で待ってマーース!先回りデー―ス!」

「あれ、ミゲル来ないんだ」

 

 服部さんはどこか寂しそうだ。

 

「車を放置デキまセーん」

「あぁぁそうか。そうなると車を移動する人が必要か」

「皆さんの話期待してマース!」

 

 そう言い残すとミゲルは即座に消えていった。

 消えるまでが早い。言い残した瞬間車で消えた。

 

「では、みなさんこちらです」

「はーい」

 

 案内されると本当に船があった。1階建てで室内とかいう概念はなく、床が1面に張ってあるのが見える。屋根はしっかりと付いているので、日差し等の心配はない。まるで劇場の舞台かと思うほど床しかない。そんな船である。

 床が一面に張ってあるとはいうものの、そんなのはものの例え。それほど床が平坦ということだ。実際は船の真ん中に食事が沢山置いてある。ブッフェ形式ということが判明した。

 その食事を囲うようにテーブルがセッティングされている。

 俺たちはその1つに着席した。テーブルには水が入ったピッチャーが2つ。そして、皿が沢山積まれている。

 

「食事か・・」

 

 俺は服部さんを無意識に見た。

 

「いやいやいやいやいや。え!?何!?」

「何って、食事だから服部さん見たんだけど」

「え!?なんでだい!」

「お腹」

「お腹って言ったね!!!こちらは真剣に蓄えているんだよ!」

「なんやねん蓄えって!リスか!」

「無意識に蓄えているんだよ」

「やっぱりリスじゃん」

「あれは意図的でしょ?こっちは無意識だからね。全然違うよ」

「いや、でもその蓄えは何かに使えるのかい?」

「防弾だね!」

「命狙われているんだね。大変だ」

「日々修羅場さ」

「修羅・BARってBARあったらセンス感じて行きたくならない?」

「おお!いいね!そのお店!」

「そして、その店の店主は・・ミゲル!」

「HA!HA!」

「いいぞ!似てるぞ服部さん!」

 

 そういえば、俺と服部さんの会話ではよく言われることが1つある。「なんでそんなわけわかんない会話を無理やり成立させられるの」これだ。会話のテンポが早いのだが、お互いに次何を言い出すか予想がつかないのだ。条件反射で喋るので、いつの間にか話は脱線してるし、そのまま会話は続行されて本来の話の結論は出ない。客観的に聞いてても意味が分からない。よく隼人はこの会話を理解できているな。凄い。

 

「相変わらずわけわかんない会話するよなお前ら・・」

 

 そう隼人はぼやいていた。ごもっともだ。

 そんな会話を隼人交えながらしていたら、続々と他のお客さんが入って来ていた。

 出発までしばし待つことにした。

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