31.ターシャ保護施設
「はい、皆さん着きましたよ」
「はーい」
体感的には1時間くらいだろうか。それくらいの乗車時間で目的地である施設に着いた。ミゲルはジェームズと同様、車で待つため一旦お別れだ。
「保護施設だ」
見た目は公園ではない。全体が建物で覆われていて外部からの敵侵入は不可能な作りである。絶滅危惧種を絶対守ると言う強い意志を感じる。これでは外敵も入ってくる隙がない。そんな絶対領域に我々は足を踏み入れる。
入場料は入り口でアンドレアが支払っている。ここで支払うお金がおサルさん達の餌代になるので、多少高くても全然払う。
「入場料全員分お支払いしたので中に入りましょう」
「はーい」
アンドレアを先頭に施設の中へ。
「こ、これは凄い・・。施設の中に木々が生い茂っている。植物園並みの生い茂り方だ。」
隼人が驚きを隠せないでいる。
熱帯らしい植物が様々確認できる。とても木が多いけども、もしかしたらおサルさんの住みかを増やすために沢山生えているのかもしれない。
ただ、おサルさんはかなり小さい。見つけられる自信がない。
「皆さん・・ターシャはかなり繊細ですので私語は無しでお願いします」
「え、わ、わかりました」
ターシャが何か一瞬わからなかったが、そういえば小さいおサルさんのことだった。小さいおサルさんは名前をターシャと言うというのを忘れていた。私語してはいけない程まで繊細だとは凄まじい。
大人しく施設の中を進み、奥へと向かう。奥へと向かう中で多分一匹もターシャを見ていない。そろそろ現われてもいいはずだが。
(サッ!)
アンドレアは無言で勢いよく木を指さした。てことは、まさか等々!
(いた!!!!小さっ!!!かわいい!)
小さいという事前情報を持っていても驚くほど小さい。そんな愛おしい生き物にメロメロになりかける自分がいる。
ただ、残念ながら見れているのは寝ているターシャの姿だ。三匹。全員寝ている。木の上で器用に寝ているのだが、これは落ちないのだろうか。心配ではあるが絶対に落ちないのだろう。是非今度見る機会あったら起きている姿を見たい。
他の2人を見てみると、声は出せないが服部さんと隼人も相当興奮しているようだ。
アンドレアは全員が見たことを把握すると出口に向かって歩き出した。長居は禁物なのだろう。俺たちもそれに続いて出口に向かう。
「どうでしかた皆さんターシャは」
アンドレアの問いに俺は即座に回答する。
「超かわいかったです」
「あら!それは良かったです。夜行性なので起きてませんでしたが、寝ている姿もこれまた超絶かわいいので人気です」
「寝ていたから声出してはいけないんですね」
そりゃ寝ているところに大きな声出されたらストレスだ。寝顔を拝ませてもらっただけ良しとしよう。
「いや、寝ていたからというのもそうですが、驚かせてしまうと死んでしまう可能性があるのです」
「え!?!?!」
なんか恐ろしいことを言われた。服部さんもこれは聞き逃せないようだ。
「え!?アンドレア!ど、どういうことですか」
「ターシャはとっても繊細でして、驚かせてしまうと自ら息を止めてしまうんですよ」
「えぇぇぇぇぇ!?そんなぁぁぁぁ!?」
「信じがたいですが、事実なんですよ」
俺含めて全員絶句している。あまりにも可哀そうで言葉が出ない。
「そういったことも知ってもらうのがこの施設の目的でもあります。絶滅危惧種ですからこれ以上個体を減らせません。是非皆さんは今回のことを忘れずに帰ってください」
「は、はい」
最後に重い話を聞いてこの施設を後にする。ターシャを見ることができたのはとても貴重なのかもしれない。
「あれ、ミゲルと車が・・ない。Whats!?」
アンドレアが驚きを全面に出して表現している。
無理もない。車がミゲルを連れて消えているのだ。逆か。ミゲルが車と共に消えたのだ。まじでどこ行ったんだ。
「本当にいないな。周りを見てもいない。なんなら今回に関しては駐車スペースに止めていただろ。なんでいないんだミゲル。」
隼人もこの謎が解けないようだ。アンドレアが俺らの心配を感じ取る前に早速ミゲルに電話している。
「Hi!ミゲル!どこにいるんデスか!」
「ハァァァ!?喉乾いたから買いに行ったデスってェ!」
「あとどれくらいデスか!5分!?了解デース」
アンドレアのキャラの濃さに慣れない。
「みなさん。すみません。あと少しでミゲルが来ます」
「全然お気になさらず。はい」
ミゲルはガイドの時めちゃくちゃ仕事ができる男だったのに、なんで運転手になった瞬間そのイメージを壊してくるんだ。ハンドル握ったら人格変わるタイプの人なのか?




