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27.海外の洗礼

「はぁぁぁぁ疲れたぁぁぁぁ」

 

 俺たちは部屋に帰ってきた。服部さんは帰宅早々ベッドに飛び込んだ。車の中でベッドじゃんけんは既に終えている。俺と隼人が二人で寝て、服部さんがエアコンの隣という形に。

 片やエアコンの恐怖に苛まれ、俺と隼人はベッドの狭さに苦しめられるのだ。

 なんとも休まらない夜ではあるが、2日目ともなれば慣れてくるのではなかろうか。いや、そうであって欲しい。これからまだまだ旅はあるのだ。体を壊している場合ではない。

 

「なぁ外でないか?」

 

 隼人がそう提案してきた。

 

「外に?まぁいいけどなんで?」

 

 俺は率直に疑問を投げた。

 

「昨日は遅かったからあれだったが、今日は割と早く帰ってこれているだろ?夜出歩くのも面白いんじゃないか?」

「いいけど夜は危なそうだな」

「周りを軽くみるだけならいいんじゃないかな」

「あぁ警備員いたし周りならいいか」

「だそうだ。服部はどうする?」

 

 服部さんは首を傾げていた。

 

「ん~俺は残るかな。先にシャワーとか浴びたいし」

「そうか。全員で出てもあれだしな。じゃあ留守番しててくれ」

「うむ!いいぞ!行ってきたまえ!」

 

 夜出歩くのは少々怖いので、最低限の物だけ持って俺らは部屋を出た。

 相変わらず何ともいえない雰囲気の廊下を抜けてエレベーターで下り、外に出た。

 明らかに昼間とは別世界であった。昼間はあくまでも観光時間。夜ともなればそれはローカルな時間。様々な人間が出歩く完全に自由な無法地帯と化すのだ。まとわりつくのは湿気ではなく淀んだ雰囲気であった。

 出歩く前は「怖い」という印象を抱いていたが、その通り。いや、それ以上であった。隼人も怖気づいている。

 

「おい隼人。これは・・」

「うん。めっちゃ雰囲気が怖い」

「だよね。いかにもな治安の悪さが醸し出されているんだよね」

「いやぁぁちょっと歩くか」

「えぇ!?まじかーー隼人が言うなら歩くかぁ」

 

 大通りを歩いているのに安心できないこの感覚は不思議だ。ただ、俺はある場所を見て即座に引き返そうと思った。

 

「隼人・・その大きな路地を見たまえ・・」

「ん?」

 

 隼人は言われるがままそちらを向いた。

 

「お、おぉ・・」

 

 隼人は絶句している。それもそのはず。大通りから1本道が外れだけで異常な暗さだ。そして、明らかにやばい人達であふれかえっている。

 

「樹里。あそこの人達なんか売ってるね」

「あぁぁぁ絶対アウトなものだろ。あれ」

「売人と目が合ったらどうする」

「怖いこと言わないでくれる!?」

「冗談さ」

「肝試しよりも怖いんだけど」

「とりあえず逃げようか」

「う、うん。命がいくつあっても足りなさそうだわ」

 

 結局ホテルから半径30m圏内の夜散歩は終了。ホテルの横にある売店でポテチとビールを購入して部屋に帰還した。

 

「服部さん!!ただいま!!」

「うぉ!夜に出す声の大きさじゃないね!樹里君!」

「ポテチとか買って来たよ」

「これは嬉しいね!レシート出してよ。割り勘するから」

「OK~。じゃあ俺次シャワー浴びていい?」

 

 隼人は「先どうぞ」と手の平を見せてきたので、俺はシャワーを浴びるために浴室へと向かった。相変わらずの浴室の狭さではあるが、お湯をしっかりと浴びられるだけでもうれしいものだ。鼻歌でも歌いたくなる。

 

「ふぅ~スッキリした」

 

 俺が戻ると神妙な顔つきをしている人が2名目の前にいる。

「どうしたの」

 

 隼人が重い口を開けた。

 

「ぼったくられた」

「は?」

 

 何を言っているのか理解できなかったが、数秒して理解した。隼人は「ぼったくられた」と言ったのだ。一体なにをだろうか。

 

「それはどういうことで」

「全部倍の値段で売られた」

「何を」

「ポテチとビール」

 

 理解してしまった。さっき寄った売店でぼったくられたのだ。

 

「えぇ!?さっきのところで!?はぁぁぁ!?」

「お金を計算している時に明らかに数字が合わないなと思って、買った方のレシートとかちゃんと見たら全部倍の値段で支払いさせられてたよ。商品の値札覚えてたから間違いない」

 

 海外ではお金のトラブルはよくあると聞くが、いざ自分がその事例に遭遇すると驚きでいっぱいになる。店員に騙されたのだ。言葉にならない。

 

「文句言いにいくしか」

「言葉通じないから白を切られるだけさ・・」

「ぐぬぬ・・」

 

 お金を回収することは実質不可能なわけだ。まんまとやられた。

 

「まぁいいじゃない。ちょっとした勉強料だよ。そこまで痛い出費じゃないし楽しくのもうじゃないか」

 

 服部さんはそう言った。確かにその通りだった。何千円のぼったくりではない。少々多めにお金を取られただけと考えればどうでもよくなってきた。

 

「確かに服部さんの言う通りだ!よし!隼人!服部さん!倍味わって飲むぞ!」

「おーーー!」

 

 悔しさの味を噛みしめてビールの苦みを味わった。

 

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