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19.サンペドロ要塞・後編

 写真を撮ると言われたが、残念ながら全員どこで撮るのか分かっていない。看板がある訳でもないので写真を撮るには良いアングルが無いと思うのだが。

 

「個人個人撮るのデスよ」

「個人?」

「一人一人その大砲に跨って貰いマース!それで写真撮るヨ」

「おおぉ!!」

 

 わかりやすいくらいテンションが爆上がりした。触っていいのかも不明であったこの大砲に跨っていいと言われたのだ。そもそも大砲とかは男の子は大体好きなはず。潜在的な男の子心が湧き上がってしまったのもテンションが上がった理由だろう。

 

「では、各々跨ってポーズ取ってネ」

 

 ミゲルに促されてそれぞれが好きなポーズを撮ることに。服部さん、俺、隼人という順番だったのだが、大砲に跨うことなんて初めてなので、どんなポーズをすればいいかわからない。そのため、両足で跨ってダブルピースというテンプレみたいなことしか服部さんと俺は出来なかった。

 

「もっと他のポーズ無いのか!!服部と同じだろそれ!」

 

 と隼人から茶々を入れられたけども他のポーズは思いつかなかった。そして、最後は隼人の番だ。

 果たしてどんなポーズをするのか。

 

「おいおい、俺と服部さんと同じポーズはすんなよ?」

「もちろん」

 

 隼人はそう言うと俺らと全然違うポーズをしてきた。

 

「なっ!」

 

 隼人は両足で跨るのではなく、大砲をベンチのように腰掛けて足を組んだ。このままでは横を向いている状態だが、顔をこちらに向けてきた。手の置き所まで考えていたらしく、完璧なポージングをしてきた。雑誌の表紙かと思ってしまう。

 

「クソっ!めっちゃいいポージングじゃねえか!!」

 

 俺は素直に悔しがった。

 

「いいポーズ…デーーース!」

 

 ミゲルもテンション高くなって撮影してる。この瞬間この場所は隼人の独壇場となった。

 完全なる勝者隼人。完全に負けた俺と服部さん。俺らは膝から崩れ落ちた。何と勝負しているかわからないけども、大きく負けた気分なのはなぜなのだ。

 

「クソッ!樹里!僕たちは負けたね」

「あぁ服部さん。俺たちはもう立ち直れない」

「もし僕たちが芸人だったらもう見せ所を奪われたのも同然」

「あぁ。でも、俺ら芸人じゃないから」

「なんだよ。急に話に乗らないじゃん」

 

 話の展開がわけわからないが、なぜか話を無理やり理解して進めることができるのが、俺と服部さんのいらない特技なのだ。

 

「いやぁ話の着地点見えなくてさ」

「えぇぇ樹里俺たちふざける時はいつもじゃん」

 

 そう。どちらかがおふざけのスイッチを入れると、強制的にもう片方のスイッチも入れさせられる。そのため隼人が無理やりツッコミで制止しにかかる。いかに我々が3人で成り立っているかがわかるだろう。大体隼人に言われるのは

 

「思い付きで後先考えずに話出すな!ボケ!」

 

 だ。いつも申し訳ないとは思っている。ツッコミに助けられるボケ2人。この構図なのだいつも。

 

「さぁ!撮影完了デース!」

 

 撮影会は無事に終了し、順路を進み始めた。要塞ならではの監視塔や保存庫などなかなかに面白いものを見た。大砲だけでなく、ベンチで写真を撮っている人もいた。どうもここは緑が多くて、日陰となれる部分が多い。そのため日陰に置いてあるベンチで休む人も散見する。だから写真を撮っているんだろう。それ以上の目ぼしい情報はなさそうなので、壁の上の観光を終えた。先ほどの階段を下りて下の階へと降り立った。再び広場へと俺たちは戻ってきた。

 

「お、ネコだ」

 

 一目散に俺はその猫に近寄った。人慣れしているのか全く逃げない。黒いこの猫は野良猫なのだろうか。猫はきれい好きなため、野良でもきれいな見た目をしているので見分けはつかない。

 

「ヌッコ!」

 

 服部さんも猫を見て近づいてきた。二人で猫にデレていると隼人もさすがに近づいてた。

 

「俺も見たい」

 

 3人で猫と戯れる予定だったが、隼人が近づくと猫は隼人をガン見し始めた。俺たち視線から外して一点「隼人」だけを見ている。ただなんだろう。かわいらしいものではなく、睨んでいるように感じるのだ。残念なことにその予想は当たってしまったようだ。

 

「ニャー!!!」

 

 そう猫は威嚇すると走って消えていった。猫が逃げたことで俺と服部さんはがっかりしているが、この後ろではただならぬ悲壮感を漂わせている人物がいる。

 

「あれぇ・・俺を見て逃げたなぁ・・」

 

 隼人だ。それもそうだ。猫と戯れたくて近づいてきたのに一方的に威嚇されて逃げられたのである。とんでもない落ち込みを見せている。動物から露骨に避けられる人間は少なからずいる。これといって何かをしたわけでも機嫌を損ねるような態度を取ったのでもなく、ただ歩み寄っただけで敵判定をされて避けられる奴。これはなんなんなのだろうか。

 

「俺・・結構こういうことあるんよね」

 

 やっぱりか。動物から避けられる人物は、時と場所を変え、他の動物と対面しても威嚇される傾向がある。こういう体質なのだろう彼は。とてつもない程悲しそうなので励ます。

 

「隼人どんまいだ」

「励ます言葉が見当たらない人の言葉なんよそれ」

「ツッコミができるならまだ問題ない」

「まぁ動物から威嚇されるのは慣れているからさ」

「嫌な慣れだな」

「ホントだよ」

 

 気にしないようにしていたが、ミゲルは大爆笑していた。

 

「可哀そうデー――ス!!!HA!HA!HA!」

 

 寡黙なジェームズでも笑っていた。余程面白かったらしい。いや、面白いけどそんなに笑ってやるなよ。ただ、嫌味のある笑いではない。心から笑っているようだ。この国の人達は笑うことが多いなと思っていたけど、楽しそうに笑うから見てて嫌な気はしない。

 

「おい!ミゲル笑うなよ~。これいつもなんだからさ」

 

 隼人も笑われたことに不快感を抱いていないようで安心した。

 

「ごめんなサイね。なかなか面白い場面デして!」

「今までこんなに動物に嫌われている人は見たことないでしょ?」

「無いデー―ス!!!」

 

 俺の周りでもいない。服部さんも首を横に振っている。

 

「もう俺のことはいいから!先に行こ」

 

 こうして俺たちはサンペドロ要塞の観光を終えた。そして、俺の予想した事態が発生した。

 

「集合写真撮りマスよ」

「はーい!」

 

 サンペドロ要塞に来た時、木の看板があった。他の観光客が写真撮影しているから、俺たちも後で集合写真を撮ると予想していた。それが見事的中した。小さなことだが、予想が的中して嬉しかったため、心の中でちょっとだけガッツポーズをした。

 先に撮影していた観光客が撮り終えるのを待って看板に近づいた。近くで見ると、よくできているなと感じる。なかなかに立派な看板だ。是非ここに来た人は記念写真をこれで撮って欲しい。看板を挟むように左右分かれて撮影をした。

 

 ・・俺は後にこの写真がとても気に入り、額縁に入れて飾ることになる・・

 詳しい話は別の機会で・・・

 

「OK――!撮れマシタ」

「はーい!」

 

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