16.スコール
「暑っ!」
俺は忘れかけていた事実を思い出してしまった。クーラーが効いていた場所から暑さの凄い屋外へ。そして次はクーラーがついていない車中へ行くのだ。かなりキツイ。
お腹がいっぱいになっている俺たち3人は車に戻るべくミゲルとジェームズの後に着いて歩き出した。
食事に向かう時はじっくりと見れなかったので、観察してみることにした。俺はじっくり観察しながら歩いているけども、知っている店の名前があるわけもなく、そもそも文字が読めないため店をパッと見ただけで得られる情報は0に近しかった。服屋とか雑貨屋という“行き”と何も変わらない結論を導きだすだけとなった。ユ〇クロとかあれば親近感が湧いてお店に絶対入るのだけども。俺は結局トボトボと歩いて駐車場へと向かった。
「車暑いネーーー」
やっぱりかなりの暑さらしく、すぐに乗って出発とはならなかった。出発を待つと言っても待つ場所は炎天下の駐車場。かなりキツイ。キツイと感じているのは無論俺だけはない。
水を飲みながら脱水を防いでいる隼人と、車の陰に座り込んで日の光を遮っている服部さん。それぞれ独自の方法で暑さを凌いでいるけども数分経ったところで、ある異変に俺は気が付いた。
「あれ?なんか曇ってきた」
強い日差しが消えて暑さが和らいで良かったのだがミゲルは何か言いたげであった。
「Oh! 皆さーーん!車に急いで乗ってくだサイ!」
「え?あ、うん」
本当に急いで乗らなければならなそうだったので、急いで車に乗り込んだ。次の目的地までの時間が切羽詰まっているから急かされたのだと思ったが、発進しない。ミゲルはジェームズと話をして、少しこのままで待ってるということを決定したらしい。そのことを伝えられて何で留まっているのか理由がわからない。聞いても「すぐにわかる」とだけ言われて、答えを教えてくれなかった。2列目にいる2人が話をし始めた。
「なんでだと思う?服部」
「これがさーわからないんですよー隼人君」
「ミゲルが答えを教えてくれないということは俺たちに“答え”となるもので驚かせたいのだろう」
「ニヤニヤしてたもんね」
「車の中にわざわざ入れたから外で起こることのはずだが」
そう隼人が言った途端“答え”が判明した。
「ぎゃぁぁ!なんだこれ!」
服部さんの驚く声が車内に広がった。“答え”の正体はスコールだった。局地的な大雨を指す言葉で日本だと、ゲリラ豪雨に近い。ただ、あれだけの強い日差しが数分にして、強い雨に様変わりしたことに驚きを隠せない。冷静に俺は頭を働かせて、この国に来る前に見た観光パンフレットの注意事項を思い出した。そこには確かにこう書いてあった
「急にスコールが起こる可能性がありますので、分厚い雲が見えたら屋内に避難してください」
という記述だ。そのまんまのことが今行われた。そしてこれは日常茶飯事らしいのだ。またスコールに遭遇する可能性は高い。驚いたりしている俺たちを見てミゲルとジェームズは爆笑していた。どうやらスコールを見た反応として期待以上の反応を示せたらしい。ハイタッチまでしている。
「おい樹里。日本のゲリラ豪雨よりも急だったぞ」
隼人はあまりの急激な雨にドン引きしている。
「んな。一瞬だったな」
「気づくのが少しでも遅れたらびしょ濡れになってもおかしくない」
「マジで今後も気を付けないとだね」
「その通りだな」
降るまでが急であれば止むまでも急。雨が弱まったと思えば即雨は止んだ。
スコールが嘘だったかのように再び強い日差しが顔を出してきた。スコールなんて知らないとでも言うような腹の立つ顔だ。だが、時間が経ってこちらはもう快適な車内環境を手に入れている。今のところ日差しと暑さは怖くない。
「スコールも去ったので行きマーース」
「はーーい」
元気よく俺たちは返事をして、それを合図にジェームズは車を発進させ、昼食の地から出ていった。




