12.ご当地おやつバナナ
ジェームズがどこから来るかわからないけども時間はありそうなので、支給されてまだ残っているドライマンゴーを食すことにした。バッグからドライマンゴーを取り出した。
「おっと!?それはドライマンゴーじゃないか!君!残ってたんだね!?」
「おいおい服部さん。まさか車の時に食べつくしたのか」
「もちろん」
食べきることは必然だと顔に書いてある。
「早いなぁ。わかってたけども」
「さぁ!それを少し寄越したまえ!」
「いやなこった!絶対あげないからな」
「ジェームズ来ましたヨ~」
「早っ!」
服部さんとハモってしまった。
「ジェームズ・・ホント何者なんだ・・早すぎる・・」
隼人に至ってはジェームズが常人ではないと疑い始めた。サントニーニョ教会の時もとてつもない早さで現れたジェームズが再び異常な早さで俺たちの前に現れた。ミゲルは何も驚いていない。言われるがままに3人で車に乗り込んだ。確認をしたがこのセブヘリテージモニュメントにも駐車場らしきものは見当たらない。どこで待っていたんだジェームズは。3人で話し合っても結論は出なかった。謎な人物だジェームズは。
「次はそんなに遠く無いですヨ」
今日だけで何個観光スポットに行くのだろうか。この短時間でこんなにも多くの観光スポットを巡れるというのは充実感が大きい。
「うわ!なんだこのバス!」
俺がそう叫ぶと彼らも同じような反応をしてきた。
「何人乗ってるんだこれ!」
「ドアが無い・・」
表現の仕方は悪いけども、いわゆる東南アジアっぽい小汚いバスであった。しかも決して大きくは無いバスに何人もの人が乗っている。これはそもそもバスなのだろうか。それさえも疑ってしまう謎なもの。ただ、行儀よく座っている。荒れている印象は受けない。車体の模様はださい。これだけは断言する。
「ミゲル。あれ何だい?」
隼人がそう質問すると、ミゲルは上機嫌に説明しだした。
「あれはジープニーですネ~。日本語だと乗り合いバスになりマスかね」
「乗り合いバス?」
「えぇ。そうデース。バス停は存在しまセーん。誰でも運転手を呼び止めれば乗れるんですヨ。走行ルートは決まってイルのデ、タクシーとバスを足して割ったような感じデスかね。降りたくなったら乗組員に言えば降ろしてくれマス。そこでお金払えばOK。気になりますカ?」
「うん。まぁちょっとは」
「乗りマスカ~?」
「それは嫌だ」
絶対に乘りたくない意思を感じる。いや、俺も乗りたいとは思っていない。あれを見て本気で乗りたいと言える人はほとんどいないはず。治安の悪そうなこの街で治安の悪そうなバスに乗る勇気など持ち合わせていない。服部さんだけは何故か乗りたそうにしている気がしなくもない。確認のために聞いてみる。
「ねぇ服部さん。乗りたそうにしているのは気のせい?」
「え?そう見えるかい?よくわかっているじゃないか~」
図星であった。だがしかし、人の気持ちを見抜いたのに嬉しさは無い。メンタリスト並みの観察力で彼の考えていることを導き出したものの、観察力で導き出された答えは喜べるものではなかった。冗談であることを願いたいが、理由も聞いてみることにする。
「いったいなぜ・・だい」
「この地でしか乗れないんだよ?」
服部さんは若干目を輝かせているように見える。
「うん。そうだけど」
「何か怖いことあったらいい土産話になるじゃんか」
「芸人みたいなこと言わないでよ。芸人みたいな見た目だけど体張る旅じゃないんだよ服部さん」
俺でもさすがに乗りたいとは思わない。
「えぇ~面白い土産話欲しいのは樹里もだろ~」
「そうだけど、俺は命重視!」
「よ!健康志向!」
「ガハハハッ」
「なんで乘り合いバスの質問が結果的に健康志向で話が締められるんだよ。どうなってんだ」
ごもっともなことを隼人に言われた。
車は細い道を抜けて坂道へ。するとミゲルに車を降りることを指示されたので俺らはそれに従った。一体何があるというのだろうか。疑念を持ちながらも坂を歩いていると、美味しそうな匂いがしてきた。それは甘くも香ばしい香り。この正体は何なのだろうか。ただ、どこかで嗅いだことある匂い。それは今日だ。思いだす瞬間、1人の男によって答えをフライングされた。
「バナナの匂い!」
服部さんは目を輝かせている。そう。この嗅いだことある匂いの正体はバナナだ。バナナであることはいいのだが、なぜ香ばしい香りもしているのだろう。
「どこからバナナの香りがするんだろ」
ミゲルが答えを教えてくれた。
「あれデース」
俺らがそこへ視線を向けるとそこには1つの屋台が。バナナが沢山置いてあるのは確認できた。ただ、香ばしい香りが何なのかは証明されていないので、その屋台に寄ってみた。すると、面白いものが売ってあった。現地でどうやって呼ばれているかはわからない。だが、日本語で一言で表すならばそれは「揚げバナナ」だろう。
「バナナキューじゃないデスか。美味しいデスヨ~」
バナナキューと言うらしいこの揚げバナナは。バナナの本場でのバナナおやつは絶品であろう。時間が大丈夫か心配ではあったので、俺はミゲルにこれを食べたいけど時間は大丈夫かと聞いていると、問題ないと返事がきた。
早速俺らは揚げバナナを購入する。お昼の時間をとうに迎えている俺らは腹ペコだったので美味しく食べれる。しかし、1つ懸念点がある。
「この揚げバナナ、1つでバナナ2本分じゃね」
一番先に並んだ隼人がそう声を漏らした。
店頭に並んでいる揚げバナナをよく見ると、どうやら小さめのバナナ2本分が一緒に揚げられて、串にささっている。これが1人分だとするならば、かなりのボリューム感だろう。
「これは1人1つというわけにはいかないかな」
俺はそう言った。いくらお腹が空いている状態でもこれをおやつとして食べるには、重すぎる。昼ごはんが入らなくなる。なので、作戦会議を開いた。
結果、俺らは2つ買って、それを3人で食べるシェア食べをすることになった。お金を支払い2つ購入。
じゃんけんで食べる順番を決めて、いざ実食。
俺は揚げバナナにかぶりついた。触感は表面が砂糖でまぶされたものが揚げられているらしく、カリッとした触感だ。その後はバナナの柔らかさが伝わる。油を吸っているのでただ甘いだけでなく、味に深みが出る。
「これは美味いぞ!」
簡単な味付けや調理方法なのにとても美味しい。これはバナナが名産の国だからこそ生まれたおやつだろう。絶品だ。
ただ、バナナではあるのでかなり腹が膨れることは間違いない。そこだけは注意して食べたい。気を付けて食べないと昼ごはんが食べれなくなる。
「甘いがこれは余裕で食えるね」
隼人も絶賛していた。ミゲルはそんな俺たちを見て満足そうに笑っている。それ以上に満足そうな顔をしているのは服部さんであった。本当に美味しそうに食べていた。
結論から言うとかなりの早さで揚げバナナは無くなった。3人全員が食べる手を止めずに黙々と食してしたためいつの間にか無くなってしまったのだ。今朝服部さんが言っていたフィリピンらしいものを食べることができたが、大満足だった。家で作れそうだけどもここまで美味しく作ることはできない。なんせバナナ自体がかなり甘くないと無理そうだ。
またどこかで見つけたら食べたい。
「キャラメルまぶしているのもあるヨ」
「なんだって!」
ミゲルの言葉は俺らのテンションを上げた。これよりもしっかりとした味付けがされた揚げバナナがあるだなんて考えていなかった。考えるだけでワクワクする。
そんなことを頭に思い浮かべている時に何回もクラクションの音が耳から入ってくる。俺らに対してのクラクションではない。単にこの国はクラクションを普通に鳴らすのだ。しかもここは坂道であり、広くはない道。鳴らす場面が多いのだろう。日本がいかにクラクションを鳴らさない文化なのかが伺える。
串を店員に渡して美味しかったことを伝えた。
「yeah! good! delicious!」
「yeahhh! Thank you!」
これくらいの英語でも通じると楽しい。見た限りかなり喜ばれた気がする。その場の勢いと気持ちをぶつけただけのこの英語。通じれば問題ない。
店を離れて坂道を上っている。この坂道を上るだけでもセブ島らしさを感じられる。例えば両脇の建物に張られている紙広告だ。日本でもよく見かける張り紙広告。ここセブ島で俺がみている状況では、とんでもない数の張り紙広告が1つ1つの建物に張られている。張り紙で壁が消えてしまっているものもある。もはやこれは広告の意味を成しているのだろうか。甚だ怪しい。この島に来た昨日も車内から張り紙広告の多さに驚いたが、間近で拝むとその異様さにビックリする。字が読めないから尚更だ。
「ハーイ!そろそろデス!」
どこに行くか知らされていない。誰もどこに行くか聞かない。摩訶不思議なこの移動。それも終わり、無事にどこかへ到着したらしい。




