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04.恋とか、障害とか、苦手なのです。


とりあえず、毎日を平穏に過ごしたい。

平々凡々万歳。

そう思いながら、静かに紅茶を口に含んだ。どうしてこんな事を思ったかと言えば、何故なら昼休み、いつもの人気の無いお気に入りの中庭で昼休みを堪能していると、何故かヒロインであるアリア様と、殿下が一緒に同席している、と言う事態に陥ってしまったからだ。


(平穏な日常カムバック···)


何事も無く静かに過ごしたい。

もしかしたら、私がアリア様にそそをしでかして断罪される可能性が無きにしも非ず···と、言う状況に陥ってしまうかも知れない。嫌な妄想が次から次へと溢れて止まらない。緊張し過ぎて、せっかくアレックスが淹れてくれた紅茶の味がしない。あれ、紅茶ってお湯だったけ、何て考え始めた頃から私の頭はだいぶテンパっていた。


冷静な振りをしつつ、このゲームの断罪って何だっけ?と、今更だけれど、一生懸命フル回転させていた。ギロチンで首チョンパ?、島流し?、毒薬?···、とりあえず、逃げる(脱出)準備しておいても損はないわね、きっと。


「実はわたくし、フレイア様とは以前からお近付きになりたいと思っていましたの」


柔らかな笑みを浮かべて、小首を傾げるアリア様。その笑みは聖女だからだろうか、とても輝いて見えた。あぁ、眩しい。

なぜ、私はモブの令嬢に生まれ変わらなかったのだろうか。


(え、どう言う事?)


出来れば私は関わらずに卒業したいのに。

しかし何の悪戯か、遡る事数分前。

中庭に来たアリア様が、慣れないブーツに足を挫いてしまったらしく、捻挫をしてしまった。それに気がついた私は、アリア様に治癒の魔法を施し、完治させた···。


てっきり軽くお礼を言われて帰るかな、と思いきや、「まぁ、素敵な魔法ですわ!」と、手を握られて感激されてしまい、なんやかんやで同席になり、アリア様を探しに来た殿下までこうして同席する、と言う事態に陥ってしまったのだ。


(でもあれ?聖女様なら自分の怪我くらい一瞬にして治せるのでは···、と、すると私は余計なお世話だったかも知れない。あ、ヤバい。墓穴掘ったかも···)


「ちょっと、一言よろしいでしょうか?」


「!、は、はい。なんでしょう?」


背中に冷や汗が伝うのが分かる。

殿下は何も言わずに優雅にお茶を飲んでいる。内心ビクビクする私。もしかしたら、頬を打たれるかしら、何て嫌な想像ばかりしてしまう。被害妄想だとわかってはいるけれども。けれども、帰って来たのは思いもよらない言葉だった。


「宜しければわたくしと、お友達になっては頂けないでしょうか!!」


「は、···へ?···おとも、だち···?」


「えぇっ!!是非。それに、怪我まで治して頂いたうえに、美味しいお茶やお菓子まで頂いてしまって。出来ればお礼をさせてくださいな!」


瞳をキラキラ輝かせて、身を乗り出して私の手をぎゅっと握り、真っ直ぐ見つめて来るアリア様。背後にキラッキラ光る何かが見える気がする。もしかして、ヒロインのスキルである【天使の祝福】を発動させているかも知れない。どうして私なんかに···。


「あ、あの···お気を悪くされていらっしゃらないのですか?」


「何の事ですの?」


「アリア様は公爵家令嬢で、聖女様でもあります。ですから、その、咄嗟とは言え、勝手な事を···差し出がましい事をしてしまったのでは無いかと思いまして···」


家柄の爵位は絶対だ。

もしかしたら、私に触れられて嫌な思いをする令嬢や子息もいるかもしれないはずだ。ポカーンとするアリア様と、殿下。あぁ、2人の視線が痛い。


「あらあら、そんな事はありませんわ。わたくし嬉しかった。聖女として覚醒した後は、皆さんに腫れ物触れるような反応されて、···だから、わたくしを平等に接してくれた事が嬉しかったのですわ」


「ですか、是非!」と、ゴリ押しされてしまった。アリア様を見ていると、何だかそれまで思っていた事が バカバカしくなって来た。


「···。わたくしで宜しければ、よろしくお願い致します」


1泊置いて、私はお辞儀をした。

座りながらという何とも不思議な格好で。

今まで空気になっていたアレックスが、フィナンシェやパウンドケーキチョコチップと市松模様のクッキーの乗った皿を私達の前に置いた。


「おめでとうございます。お嬢様」


アレックスと見つめ合う事数秒後、殿下からの咳払いが聞こえて来た。


「んん!、そう言えば、私が初めてフレイア嬢にお会いした時も、足を治してもらいましたね」


(!?···え、まさか、覚えているの)


アレックスを見れば、クスッと笑みを···いや、気が付かれないように笑った。嫌な予感が胸を過ぎる。アリア様を見れば興味深そうに殿下を見ている。


「もしかして、殿下とフレイア様が初めてお会いした時のお話ですの?!」


「えぇ···。あれは確か、私が幼少の頃の事。私は初めて訪れた街が酷く楽しくて、執事の目を盗んで馬車から抜け出したのです。少しだけ探検のつもりでしたが、道に迷ってしまい、たどり着いた場所がフレイア嬢がいた庭だったのです。馬車に帰るつもりで慌てていましたから、走って転んでしまい、居合わせたフレイア嬢が手当してくれたのです」


何でそこで頬を染めるのですか、殿下。


「まさか、まさか、初恋!?一目惚れですの?!」


キャーキャーと乙女な反応を見せるアリア様。しかし、殿下は「ご想像に、お任せします」とこの場を濁した。


え、もしかしてアレックスの話、確定なんじゃ?!お願いだから、笑みを深べるのは止めて!!



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