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00.俺が知らぬとでも思ったか~ティオロード~

 王立学園を卒業した者と、その保護者や婚約者などの招待客が集う記念舞踏会。

 会場であるホールの中央で俺は、皆に聞こえるように声を張り上げた。


「アルセイラ・フランネル。貴様との婚約、今この場で破棄させてもらう!」

「は?」


 俺が名を呼んだ相手、親に決められた婚約者であるフランネル公爵の娘アルセイラは、驚いたのか目を丸くしている。その表情に、俺の背後に隠れているクラテリアがビクリと震えた。ああ、大丈夫だ。俺が守ってやるからな、リア。


「クラテリア・ツィバネットに対する侮辱及び暴行の数々、俺が知らぬとでも思ったか!」

「……殿下が何をご存知なのか、わたくしの方が存じ上げませんが」


 対してアルセイラは、青みがかった黒髪を揺らすように軽く首を振った。何も知らなければ青いドレスと髪の色がよく調和しており、そうして気品のある顔立ちと見える彼女だが、今はその平然とした顔が面白くない。

 まるで、自分は何も悪いことをしていないと思い込んでいるかのようだ。冗談じゃない、俺はその仮面を剥がすためにここで声を上げたのだ。


「それと、ツィバネット……でしたか。男爵家であることは存じておりますが失礼ながら、そちらの方とはわたくしは初めてお会いしましたわ」


 首を傾げながらそのようなことを言うアルセイラに、俺は怒りを覚える。確かにクラテリアは俺たちより一つ年下で、故に受ける授業も全く別だ。だからといって、同じ学園に通う者がここまで顔を合わせないなどということがあるのだろうか?

 少なくとも俺は、クラテリアに惹かれることになるまでに数度顔を合わせている。それからは何度も言葉をかわし、今日彼女がまとっている爽やかなピンク色のドレスは俺と彼女の二人で色とデザインを決めたものだ。クラテリアの、赤みがかったブロンドのふんわりとした髪によく似合うものだと思う。

 その俺たちを前に、周囲を取り囲む卒業生やその取り巻きたちを前に、アルセイラはあくまでも自身の無実を主張した。


「フランネルの娘として申し上げますが、婚約者をお持ちであることを知って殿下に近づくような娘に知り合いはおりませんの」

「ひどいです! アルセイラ様、わたしの制服を破ったり教科書を汚したりしたじゃないですか!」

「アルセイラ! クラテリアに文句があるのならば、言葉で言えばよかろう!」

「存在自体は存じ上げておりましたが、先程も申し上げたようにお会いしたのは今、このときが初めてですの。それに抗議を差し上げるお相手はその方ではなく殿下、あなたに対してですわね」


 クラテリアの証言があるというのにアルセイラは、己の罪を認めようとしない。ああ、だからこの女は俺にはふさわしくないのだ。いくら姉上と仲がよく、家柄が申し分ない相手であっても、だ。


「くどいぞアルセイラ! とにかく、俺はお前を妻とすることはあり得ない! 俺の妻となるのはここにいる、クラテリアだ!」

「ああ、ティオ様!」


 故に俺は、皆の前で宣言した。クラテリアが背後から、俺の腰にしがみついてくる。そうだな、君の家・ツィバネットが続くためには君に婿が必要だものな。

 任せておけ、クラテリア。俺は、君の望みを叶えてあげるから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この世界の女性って逞しいよね まぁアルセイラ(公爵令嬢)ですら、って状況で、それ以下の彼女らはガチで歳合わない、問題児で婚約者すら出来ない、ってのしか選択肢ないから、この件で叩きなおされ…
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