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プロローグ?マジで?(1/2)

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「……おい、見ろよ。ありゃ前線基地ベースフロントの人間じゃないか?」

「本当だ……。あの黒々しくも艶を放つ全身鎧……なんて威圧感だ」


 ――――その日、僕は冒険者ギルドが併設する酒場を訪れていた。


「――あの剣……まるで鉄塊だ。あんなもん振れるのか?」

「――前線基地の人間だからあれくらい重装備何だろ……すげぇ……いくらかかるんだ」

「――全身真っ黒だ……まるで死神みてーだぜ。上級職の暗黒騎士か?」


 酒場中の目線と言う目線が向けられ、席に座る人々を通り過ぎて行く度に、ヒソヒソとした話声が僕の背を追いかけてくる。


「い、いらっしゃいませ。ダッ、ダンパの冒険者ギルドへようこそ……」


 そしてそのまま僕がギルドカウンターの前に立つと、受付の女性職員は萎縮した様子で笑顔を強張らせていた。


「……宿は何処に?」


 フルフェイス兜のせいか籠ったガラガラ声で尋ねると、女性職員は明らかに動揺を隠しきれない様子で出口の方へ手を差す。その手は明らかに震えていた。


「こ、こちらの出入り口を出て直ぐ左側に……」

「…………」


 無言でくるりと踵を返し、出口目掛けて歩く。


「――何て物々しさだ……これが前線基地の人間か。オーラが違うぜ」

「――おいおい、一体何が始まるってんだ……?」


 普段は雑踏音でごった返しているであろう酒場内は、何故か大の男共が僕から目線を逸らす様に背中を丸め、ヒソヒソとした声だけがポツポツと微かに響いていた。

 最早、店内はお通やムード……そんなに珍しい事なのだろうか?


「――一体何の用事でこんな所に……?」


 ふと、酒場の出口を境にそんな声が僕の耳に止まる。


 ……そりゃ、僕は冒険者を目指して、駆け出しが集うこの街に来たのだ。



 ――――此処は駆け出し冒険者が集まるダンパ

 僕は輝かしい冒険者ライフを送るため、魔王領土寸前にある前線基地と呼ばれる場所から一番遠いこの街に来た。

 何せ、前線基地から来たと言っても、僕の冒険者としてのレベルは1である。

 駆け出しの街から正式に冒険者としてレベルを上げて行くのは、当然の事だと思う。

 ……何をそんなに皆驚いているのだろう。


「ふぅ……。緊張したなぁ。そんなに新参者が珍しいのかな……?」


 汗をぬぐい、僕は宿の自室で着込んでいた鎧を着脱していた。

 緊張で喉はカラカラ。そのせいで受け付けのお姉さんと宿屋の店主からも変な眼で見られた。

 それに突き刺さる目線の数々が怖くて、思わず直ぐ宿を目指してしまったし……。


「多分こんな格好だったから浮いちゃったんだろうなぁ……。いくら前線基地は常に臨戦態勢で鎧を着た人達ばかりだったからって、駆け出しの街はそこまで危なくないはずだし……気を付けよう。変な人だと思われるかも」


 独白しながら思い返すと、酒場店内には比較的ラフな格好をした冒険者ばかりだった。

 だからこんな重鎧でうろついてしまえば、浮いてしまうのも当然頷ける。


「よし! とりあえず冒険者登録をして、ちゃんとした仕事にあり付かなきゃ!」

 普段着に着替えた僕は、再び酒場を目指すべく宿を後にした。




 ……僕が再び酒場に戻ると、活気こそ戻っているが僕の話題で持ちきりだった。


「――きっと前線基地から派遣されてきたんだ。恐らくデカい事が起こるぜ」

「――マジか……! 名を挙げるチャンスじゃねえか?」

「――ありゃ前線基地内でも屈指の冒険者だろうよ。俺達じゃ無理さ」


 しかし、戸を開いて中に入った所で、鎧を着ていない僕に注視する者は誰も居ない。

 やっぱりあの装備が不味かったんだと、胸を撫でおろす。


「いらっしゃいませ。ダンパの冒険者ギルドへようこそ」


 僕がカウンターの前に立つと、先程は強張った面持ちを見せていた職員さんも、朗らかな笑顔で応対してくれた。


「あ、あの。先程遠い街から来まして、冒険者になりたいのですが……」


 少し緊張しながら僕が口を開くと、お姉さんが小首を傾げる。


「あら、初めての方ですね。初めまして、私はこの街の冒険者ギルドの受付管理をしているミーアと申します! ご存じの通りこの街は駆け出し冒険者の街として、比較的安全なクエストの紹介や斡旋を行ってます。先ずはあちらの別紙に記入されてから此方に提出してくださいね」


 そう告げたミーアが手を差す方、事務机の上に積み上げられた紙が目に入った。

 愛想よく笑う彼女はきっと看板娘的なポジション何だろう。

 前線基地の受付嬢と言ったら、美人だけどとっても怖くて鉄面皮な人だったし、優しそうなミーアさんの笑顔を見ていると心なしか頬が熱くなってしまう。


「……あ、ありがとうございます」

「はい、では後程」


 ワクワク冒険者生活の第一歩。きっとこれから色々な出会いがあるに違いない。

 共に旅して、冒険して、そして……女性冒険者といい感じになったり……。

 そう思うと、浮足立って口角が緩んでしまう。


「なんだ、あんちゃん。冒険者志望か?」

「は、はい! ついさっきこの街に来たところなんです!」


 僕が机上の紙とペンを取って近くの席に座った時だった。

 正面に座っていた強面の冒険者さんが、声を掛けて来たので返答する。

 これはきっとイベント的な要素が始まる予感……!


「ついさっきと言えば……。あんちゃんも見たか? 最前線基地の人間を」


 身長。体重。年齢。身体的特徴等々、記入欄に走らせていたペン先を止める。

 僕は装備こそ最前線のお店で買ったやつだけど、中身は本当にペーペーなのだ。


「あ、実はですね、あれは――――――――」


 先ずは一人でも誤解を解こうと、僕が口を開いた時だった。



「――何だって!? その話本当か?」


 僕が座る席の後方で、冒険者らしき男が仰々しく驚きの声を上げていた。


「――ああ、本当さ、間違いねえ。噂で聞いた事あるんだ」


 何やら只ならぬ予感に話を辞め、一旦耳を傾ける。

 冒険者達の……特に酒場では噂話に事欠かない。

 それにひょんな噂話でも、重要な何かが隠れてたりするのだ。


「――この街には魔王軍すらも恐れるモンスターが眠ってるって話でな……その情報に確信を得た前線基地の人間が極秘でダンパに来たに違いねえ」


 ――――えッ?


「――どうりであんなやばそうな奴が乗り込んで来た訳か。しかし何故極秘に?」

「――馬鹿野郎! 此処は駆け出し冒険者の為の街だ。俺達の不安を煽らない為だろ」


 ……いや、待て、さっきからこの人達は何の話をしているんだろうか?


「成程……そういう事か。確かにその噂は聞いた事があるな……」


 そんな話を聞いてか、僕の正面の強面冒険者さんも深く頷いてらっしゃる。


「あ、いやっ……! 違っ……」

「おう、あんちゃん。冒険者たるもの、名を挙げなきゃやってる意味もねえ。そうだろう? いち早く名を挙げるチャンスかもしれねえぜ、お互い頑張ろうや!」


「いや、だから……」


 ……何だろう。とても言い出し辛い雰囲気になって来た。


「――おい、聞いたか……。千年前に封印された魔物を倒しに……」

「――いやいや、俺が効いた話じゃ魔王軍がこの街に目を付けたとか……」

「――そいつは本当か!? 前線基地からのスカウトマンだって!?」

「――間違いないぜ。ありゃ魔王軍すらも震え上がらせる伝説のソードマスターだ」


 こうしている間にも根も葉もない噂話と言う噂話が、ポンポンポンポン酒場内の雑踏音に混じって乱立していた。

 ……いや、本当に良い辛くなってきた。

 というか、最早言い出せる雰囲気じゃない……!




20/7/16

誠に勝手ながらタイトルを変更させていただきました。

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