第三話 オトコの娘
やっとヒロイン?出てきます
午後4時半、春という事もあり、まだこの時間でも青空が広がっている明るい時間であるが少しずつ日も落ち始めている。俺はラブレターに待ち合わせ場所と指定された中庭に立っていた。
中庭としか書いてなかったため全体を見回せる中央の桜の木の下で待つことにした。
「で、なんでお前もいるんだよ」
「だから言っただろ、お前に相応しいか見定めるって」
えーイケメンのこいつがいたら持っていかれそうなんだけど…
しかもめっちゃやりづらい
「わかったよ、ただし邪魔だけはするなよ」
「わかってるって」
どうだか……それにしてもどんな人かなぁ、まだ知ってるのは名前ぐらいだし…先輩?もしかしたら後輩かもしれない…それにしても…
「うーん遅いな、まあ放課後しか言ってないしな…」
「てか駿、あれ本当にラブレター?悪戯かもしれないって昨日言ったじゃん」
「うっ……」
確かに昨日は興奮しすぎて忘れてたけど、こいつの言う通り悪戯の可能性だってある…それだったら恥ずかしい…そんな事を思っていると、中庭に誰かが入ってきた。
「おい駿、誰か来たぞ?」
そこには体操着姿の小柄な子が誰か探してるのか辺りをキョロキョロしていた
「おーすげー桜みたいな髪色だな…」
あれ?どっかで見たような気がする……どこだっけ?と悩んでいるとその子がこっちを見て目が合い、走って来た。えっ?あの子が桜さん?
「あ、あの森谷駿さんですか…?」
「はっはい森谷駿です。えっと…綾瀬桜さんですか?」
「はっはい綾瀬桜です」
うわーすげー可愛い顔、それにめっちゃ甘い声…
「ごめんなさい、掃除が長引いちゃって…それに急いで来たせいで体操着姿で…すみません。」
「ううん、大丈夫ですよ」
「あの、自分一年生なので、敬語は……」
「あ、うんわかった。」
と、会話してると空気の読めないホモイケメンが割って入って来やがった。
「で?内容は?」
「おい!邪魔すんなって言っただろ」
「あの、こっちの方は?」
「あ、いや気にしないで」
くそ!良い雰囲気だったのに邪魔するなって言ったよね?絶対俺言ったじゃん!頼むからこの時だけでも俺のお願い来てくれー
「お前は、向こう行ってろ!」
「なにをする!俺はお前を守る使命がー」
「そんなの頼んだ覚えはなーい」
やばい…もうこいつ縁切りたい……
「あ、あの大丈夫ですか」
「あ、うん大丈夫」
「それで話なんですけど……」
「はっはい!」
うわーめっちゃ緊張…変な顔してない?俺汗大丈夫?
「あの、先輩!!好きです付き合ってください」
その言葉を聞いた瞬間、俺を桜達が祝福するように桜吹雪が空に舞い、ついでに俺の心も舞っていた。
よっしゃーついに来た!春到来!!
「はっはい、よろしくお願いします」
……………俺がそう返すと桜さんはへたり込んでしまった。
「だ、大丈夫?」
「よかった…僕、先輩と付き合えた…」
「そっか、ありがt……ん?僕?」
あれ?桜さんって僕っ子なのかな?さっきの自分は礼儀で言ってたのかな……?
「あの、桜さん…桜さんは僕っ子なの?」
「い、いえ僕っ子もなにも僕……男ですから。」
「へー男なんだ……………って男!?」
「はい!」
え!男なの?嘘でしょ!こんな可愛いのに?てか男が俺に告白して来たの!?もしかして俺女子に見えてた?いや、でもこんなごつい女子やだ…人を間違えた?いや、森谷駿って言ってたし…もしかして俺は森谷駿でない…ってそんな馬鹿なことがあるか!
「でも、桜さん男なんて一言も…」
「ああ、今は体操着で分かりにくいかもですが。でも、一回僕と先輩制服で会ってますし、僕髪が派手だから分かると思ってたんですけど」
「え!?いつ?」
「始業式です」
その時俺の脳内では1つのシーンが再生されていた。移動のため教室を出た時のことだ…俺は桜さんのように淡い桜色の髪をした子にぶつかり、違和感を覚えた。
そう、俺は最初女の子だと思っていた…顔も声も可愛かったから、でもその子は男子生徒が履くズボンを履いていた。
「あの時の!」
「はい!あの時は少してんぱってしまいましたが、これからお願いします!先輩」
「さ、桜さんあの」
「桜さんはやめてください、桜でお願いします。」
「桜!俺はその…」
「別れるんですか…?okしてくれたのに……」
うっ、そんな小動物みたいに見ないで、泣かないで。てかこの顔で男って無いだろ…
「いえ……これからお願いします……」
「はい!」
俺の人生初めての彼女は…女の子みたいな男の子……いわゆる男の娘になってしまった……ずるいよ!!
友達と会えるって嬉しいね!