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《サラブレッドを撃墜せよ3》

RX7とM635CSiが並んだコーナー出口。


RX7は2速全開で走っていた。


シフトアップのタイミングをずらして一歩前に出たい。


燃料カットされる8250rpmまで回し切る。


先にシフトアップしたのはM635CSiの方だ。


シフトロスの分、おれのRX7がほんの2m前に出た。


だが、登り坂では分が悪い。


3速に上げた瞬間、2台が並んだ。


じわじわと前に出るM635CSi。


トルクの細い12Aでは抑えが効かない。


この先は右、左、右と、だんだんRが小さくなるコーナーが続いている。


1番目の右コーナーの進入で、右側にいるM635CSiに先行された。


左、右と抜けて行く。


問題はない。


ここで抜けるとは思っていない。


この先で仕掛けるためのプレッシャーは十分に掛けられた。


おれのコーナリング速度が速い事を理解した奴は、必ずミスをする。


短い直線が終わると、タイトコーナーが左、右とあり、すぐに左のヘアピンコーナーがある。


ここで抜く!


直線はM635CSiに頑張ってもらう。


車間を10m開けた。


ぴったり張り付いてしまうと、おれのコーナー進入速度が低くなるからだ。


左のタイトコーナーにM635CSiが切れ込む。


続いて、おれのRX7がパワースライドで進入する。


一つ目の出口で、RX7のノーズをM635CSiのインにねじ込む。


そして、すぐに諦める。


全開で立ち上がるM635CSi。


おれのRX7は少し手を抜く。


二つ目のコーナーに入る。


M635CSiはオーバースピード気味になっている。


おれのコーナリング速度を怖がっている証拠だ。


大回りになりインがガラ空きだ。


おれはパワースライドで車の向きは早々に変えて、立ち上がり加速に集中する。


三つ目のヘアピンの進入で得意なラインを取れないM635CSi。


入り口から大回りをしている。


速度が乗っているおれは、易々とインに並ぶ。


そして、ワザと加速を鈍らせる。


おれがミスをしたと思ったのだろう。


M635CSiは、無理にアクセルを開けてRX7の前に出ようとする。


さっきはそれで前に出られた経験がある。


また、RX7に前に出られてしまうと、コーナリング速度で引き離されることは目に見えている。


ここで抑えられなければ、負けが確定する。


だが、M635CSiは、とっくにオーバースピードだった。


おれが加速を鈍らせたのはアクセルを緩めたわけではなく、スライドをやめてグリップ走行に切り替えたからだ。


ほんの少しの重心移動とアクセルワークで簡単にスライドに移れる。


大きめのパワースライドでM635CSiの鼻先を塞ぐ。


チョンとブレーキを踏む。


減速が目的ではなく、テールランプの点灯が目的だった。


RX7のテールランプの点灯を見たM635CSiのドライバーは、オーバースピードで旋回中に、アクセルを緩めてしまった。


パワーオーバーステアでコーナリングしてる途中でアクセルを緩めるてしまうと、アンダーステアが顔を出す。


曲がれるはずのコーナーも曲がれなくなる。


M635CSiは右側面を法面のコンクリート押し付けるように停止した。


思ったより盛大に火花が散ったクラッシュだった。


おれは、ほんのちょっと慣性ドリフトで駆け抜けた。


本来であれば、コーナーの後半でパワースライドを使ってM635CSiのノーズを弾き出す事も出来た。


そうやってノーズから法面に激突させる方が簡単なのだ。


ただ、それでは名機と謳われたM88型エンジンが失われてしまう。


手間はかかるが、エンジンを無傷で残す方法で停止させたのだ。


このコースでは、ミスは必ずクラッシュにつながる。


今回のバトルでは、なるべくダメージを残さないように、相手を走行不能にする必要があった。


同じコースを、勝者が決まるまで何度も往復する。


もし途中で、負けた相手に体当たりされたら、シャレでは済まないからだ。


他人の車を平気でクラッシュさせる奴が相手だから、必要な策だった。


おれは、先行している328GTBを追った。


全く見えない。


どこにいるんだ。


次の右コーナーを慣性ドリフトで駆け抜ける。


行ける。


今日のおれは乗れている。


緩やかなS字を抜けて、タイトコーナーが連続するテクニカル区間を慣性ドリフトを使い全開で駆け抜ける。


地元の走り屋と比べて、おれのコーナリング速度は、20キロほど速いはずだ。


グリップ走行と慣性ドリフトは、そのぐらいレベルが違う走り方なんだ。


もうすぐ六方沢橋の手前の直線に出る。


いた!


328GTBのテールが見えた。


やはりタイトコーナーはおれの方が速い。


安定性を犠牲にしてまで高めた運動性がモノを言う。


12Aが唸りを上げる。


コーナーの脱出速度の速さが、直線の速度に乗る。


六方沢橋の入り口の左コーナーで差を詰める。


暴れるテールを押さえ付けて、RX7は橋の上を加速する。


だが、橋の上は直線だ。


パワーにモノ言わせ、328GTBが怒涛の加速でRX7を引き離す。


これも作戦のうちだ。


絶妙な車間距離が開いている。


「おれは、六方沢橋の出口のコーナーを、130オーバーで進入できるんだぜ」


奴がその言葉を覚えていれば、おれにチャンスがやって来る。



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