表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

《サラブレッドを撃墜せよ 1》

昭和60年 春

おれが、走り屋として駆け上がっていた頃の物語


霧降高原有料道路で車を潰し合う公道バトルが繰り広げられた。


イニシャルD、ゴッドハンドのモデルになったおれの真実の公道バトル。

序章 昭和60年 春


おれが、走り屋として駆け上がっていた頃の物語



ある日、霧降を拠点とする走り屋がおれを訪ねて来た。


頼み事があると言う。


村田(仮名)と名乗る男が言うには、都内から来る走り屋が霧降を我が物顔で走っている。


地元の車は、思うように走れない。


無理な幅寄せが原因で、地元の仲間の車がスクラップにされた。


また、そいつらのテクニックを鼻にかけた誹謗中傷に耐えられない。


だから、そいつらを追い払って欲しい...と。


おれは部外者なので、断るつもりでいた。


「村田さん。

それ間違っていないか?」


村田は意味がわからず困惑しているようだった。


構わずおれが話を続ける。


「そいつらのマナーが悪いのは問題だけど、走り屋は速さでケリをつけるのが筋。

そいつらより速い奴がビシッと言えばいい事だろう。

あなた達で勝てないのなら、先輩でも誰でも読んでくればいい」


「その通りと思う」


村田は悔しそうに同意した。


「だけど、その先輩達も全員負けたんだ」


えっ?


「霧降と言えば、ハンドリングに定評がある連中だと聞いていたけれど...」


「俺達もそう思っていた。

だけど、手も足も出なかった」


「何故?」


「奴らはサーキットを主戦場としているから、峠の走り屋とはドライビングテクニックに差がある。

でも、それ以上に車の性能差があり過ぎるんだ」


「相手の車は?」


「相手は2台、それは....」


おれはその車種を聞いて、俄然やる気が出た!



ミッドガルドの旋風 1

《サラブレッドを撃墜せよ 1》


『フェラーリ 328GTB & BMW M635CS i

VS

マツダ サバンナRX7 ターボGT』


時は昭和59年。


場所は日光霧降高原有料道路 大笹牧場〜六方沢橋駐車場 区間。


おれがまだ、19歳の時。


おれの車

・マツダ サバンナRX7 ターボGT

12Aロータリーターボ

最高出力 165ps(グロス)

(ネット表記では、およそ130ps)


相手の車

・フェラーリ 328GTB

3.2リッターV8自然吸気

最高出力 260ps(ネット)


・BMW M635CS i

3.5リッター直6自然吸気

最高出力 265ps(ネット)



これだけの性能差があると、通常であれば全く勝負にならない。


もし、コイツらに勝てれば、おれのドライビングテクニックの証明になる。


「じゃあ、やってみようか」


きっと、おれの顔はニヤついていただろう。


「本当か?」


村田はにわかに信じられないようだ。


「本当だが.....おれが勝った時は、そいつらと同じようにおれが排除の対象になるんじゃないか?」


村田はニンマリと笑った。


「そうだと思う」


「だろうな」


次の日曜日の夜。

待ち合わせの大笹牧場。


フェラーリとBMWのドライバーと地元の走り屋が3人いるだけだった。


「随分少ないな。

ギャラリーがいるかと思った」


「お前が負けるところを見られると可哀想だから、人を減らしてやったんだ」


フェラーリのドライバー、鈴木(仮名)だ。


「お前の走りなんかに興味を持つ野郎はいねえよ。

どこの田舎者だお前は?

サルか?」


BMW のドライバー、佐藤(仮名)だ。


なるほど、そういう連中か。


「どうもありがとう。

おかげさまで、お前達の車をスクラップにしてもおれの心は痛まないよ」


と、おれ。


「ギャラリーはいない。

巻き添えにならないように遠慮してもらっている。

それと、俺の仲間は各所に配置させている。

貴様等がどんな卑怯な手を使うか録画させている」


仕切り役の村田が説明する。


鈴木と佐藤は、あからさまに嫌な顔をした。


霧降高原有料道路を走るのが初めてだったおれは、本番前に2往復させてもらう条件を事前に出していた。


おれは村田を助手席に乗せて、霧降のレクチャーをお願いした。


スタートして1kmほどは、緩やかに曲がる道だ。


パワー差で一気に引き離されることだろう。


左のタイトコーナー。


短い直線を挟んで右のタイトコーナーへと続く。


ここで奴らの腕が見られる。


また1kmくらいの緩やかな道だ。


右のヘアピン。


その出口に左のタイトコーナー。


技術の差がはっきり出る場所だ。

きっと、ここで追いつけるだろう。


登りの緩やかな右コーナー。


ここで離されなければ、次からのタイトコーナーが連続するテクニカル区間でインを刺せる。


最悪、橋の出口の左コーナーで仕留められる。


おれは2周目も軽く流してスタート地点に戻った。


「こんな軽い走りでいいのか?」


心配そうな村田。


「もう、おれの勝ちが見えた。

心配ない」


鈴木と佐藤のイライラが見える。


ちょっと遊んでみるか。


「おいお前達」

おれの呼びかけに苛立つ2人。


「あの橋の出口にある左コーナーへは何キロで進入しているんだ?」


「ああ?

そんなのお前から言えよ」

と佐藤。


「おれは130オーバーで入れるぞ」


と、おれ。


「なに?」


「ひゃ...ひゃくさんじゅうだと?」


奴らの苛立ちが驚きに変わった。


「もちろん130オーバーで進入しているに決まっている」


強気な発言をする二人。


「もし、無理だと思ったら逃げ帰ってもいいぞ。

あっちから降りれば、誰にも見つからずに帰れるから」


大笹牧場から栗山方面に下る道を指差した。


「ふざけるな!

フェラーリやBMW がマツダに負ける訳がないだろう!」


もうこのぐらいでいいだろう。


「じゃあ、さっさと終わらそうか?

スタートは、お前達が前でいい。

どうせ追い越せるから」


牙を見せて笑ってやった。


スタートはフェラーリ、BMW 、RX7の順番になった。


大笹牧場を出たところで、3台が縦に並んだ。


フェラーリの排気音でRX7の排気音はかき消されてしまう。


村田が前に立ち、スタートの合図をする。


3秒前


2


1


スタート!


タイヤスモークを上げながら豪快なスタートを切るフェラーリ。


クラッチミートに失敗したが、怒涛のトルクでグイグイ速度を上げるBMW 。


12Aロータリーターボ搭載車において、世界最速の加速をするおれは引き離されることはない!(下記参照)


8000rpmまでのレッドゾーンを飛び越え、ブラックゾーンまで一気に回す。


8250rpmの燃料カットまでがおれの常用回転数だ!

フェラーリとBMWの車間は約10m。


BMW とRX7の車間は僅か50cm。


2倍のパワー差なんてテクニックで跳ね飛ばす。


どうだこの野郎!


と思ったところで加速が止まった。


180km/hのスピードリミッターだ!


ヤバイ!


引き離される!


BMW との車間が開いていく。


早く来いよ左コーナー!


絶対にブレーキングで追いついてやる!




参考

サバンナRX7ターボのメーカー公表0→400m加速は15.6秒ですが、おれは15.4秒の記録を出しています。

条件は同じく2人乗りです。


計測はメーカーであるマツダです。


12Aターボ搭載車(ノーマル)の世界最速のゼロヨン記録を持っているんです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ