JK百合小説ースタバ編ー
中学の頃書いた話です。
「JK百合小説」の続きというかプロローグというか、そんな感じです。
「ねえ聞いてよあいちゃん!真希ったら彼氏できたんだってー!」
「…そう」
真希…確か、彼女の友達だったと記憶している。
他人に興味を持たない私は、人の名前を覚えるのが苦手だが、彼女の話に度々出てくるので覚えてしまった。
話を聞くに、彼女の親友かなにかなのだろう。
誰にでも明るく接する彼女には、たくさんの友達がいる。同級生だけでなく、先生からも好かれる彼女。
私にはとても上がれない舞台、それが彼女の立つ舞台。
「え、それだけ!?もっと驚くことだよ?これって」
「そう言われてもな。第一、私は真希さんがどんな人なのか知らない」
「えー?真希とあいちゃんって同じクラスでしょ?ほら、このコ!」
そう言って、私にスマートフォンの画面を見せつける彼女。
そこには、彼女と、真希さんと思わしき人物のツーショットが映っていた。
私が知らない彼女の一面を、真希さんは知っているのだろうか。
「…いたかもね、こんな人」
「もう!そっけないなあ。少しは他人に興味持ちなよー?」
ふくれっ面をした後、何かに気付いたようにスマートフォンに目を落とす彼女。
どうやら、友達へのメッセージを返しているらしい。画面を見ながらころころと表情を変える。
「いやー、それにしても真希に彼氏かー」
メッセージを返し終えたのか、スマートフォンを手放し、ストローに口を付ける。
真似するように、私もストローに口を付ける。
キャラメルフラペチーノ、という飲み物らしい。毎日のように彼女が飲んでいる、見るからに甘ったるそうな液体。
「…ねえ、それ、美味しいの?」
「んー?おいしーよ?一口飲む?」
と、私の側にカップを近付ける彼女。
受け取り、蓋に刺さったストローを抜こうとすると、
「なんで一々ストロー刺し替えるの?そのまま飲めばいいじゃん」
と、彼女に止められた。
…なんで?だってそれは、人の使ったストローを使うということは…
刺さったままのストローをじっと見つめる。心無しか、少し濡れているようにも見える。
それはキャラメルフラペチーノの為なのか、それとも…
チラリと彼女の方を見る。不思議そうに私を見つめている。
「…」
一考して、口を付けた。そして中身を啜る。
思った通りの味だ。甘ったるい。
でも、嫌いな甘さではなかった。
「どう?おいしーでしょ」
「…甘い」
「それがいいんだよー!」
「私には甘すぎるよ」
「んー、まああいちゃんいっつもブラックだもんねー」
「ブラックじゃないよ。砂糖入ってるし」
「えー?ちょっとだけじゃーん!」
自分のストローに口を付ける。
…苦い。さっきので舌が麻痺したのかもしれない。
もう一口飲む。やっぱり苦い。
何故か、あの甘ったるさが恋しくなった。
「ねえ、もう一口貰ってもいい?」
「え、甘いんじゃないの?あ、さてはこの味にハマっちゃったなー?」
「そうかもね、だから一口ちょうだい。私のも一口あげるからさ」
「えー?いらないよー」
笑いながらも、私のカップを手に取る彼女。私も、彼女のカップを手に取る。
躊躇う素振りも見せずに、私がさっきまで口にしていたストローを咥え込む。
「うえー、苦い!よくこんなの飲めるねー」
「…」
「ん?どうしたの?飲まないの?」
「あ、いや、うん」
二度目なのでもう躊躇わない。…ああ、やっぱり甘ったるい。
でも、なんだろう。安心するというか、もっと味わっていたい甘さだ。
誰にも渡したくないくらい。
「あーあ、私も彼氏欲しいなー」
…彼氏、か。
そういうの、考えたことも無かった。
彼氏みたいな人となら、“間接”じゃなくて“直接”できるのかな。