5話「偽物勇者出現」
遅くなってすみません!
今日から護衛、見張りが始まった。
城内の赤い絨毯に包まれシャンデリアで照らされた長いテーブルがある部屋で。
これで偽物が見つかればワンチャン「マリ」の村の事件について何か分かるかもしれないとふと思う。
「おい勇者、お前確かバトルでお嬢様を刺そうとしてたらしいじゃねえか?」
俺は早速カマを掛けようと試みる
「それは勘違いです。僕はそんな事をする気なんて始めから無いです、ただ、剣を投げた時まさか回転しながら戻ってくるなんて思いもしなかったので、そのまま素手で戦っていたのですが、まさかの事故でわざとに見えてしまったという……もう疑われても仕方ないです。」
「へぇ、でも普通に投げたらまず回転しながら戻ってくる事は無いだろ?ていうか、勇者ってそんな事出来たっけ?もしかしてお前勇者じゃないだろ?」
「いえいえ、勇者じゃないって……僕は勇者ですよ。まぁ勇者っぽい事なんて何もしてないから別に勇者に見られなかっても不思議ではないですが……」
「お前もしかしてまだ分かってねぇ様だな、お前が偽物だという事はメイベルやマリ、お嬢様、メレン達の目撃と、俺の猜疑心によって付いた利き勇者のコツによって証明されているんだ!」
「何を言っているんだ、だいたい君は僕の事が嫌いじゃなかったのか!?だったら君が僕について知ってるわけ」
「一つ教えてやろう!人は好きなモノより、嫌いなモノの方がキツく記憶に残るんだよ!ソースは俺、お前がコケの様に頭にこびりついて取れなかった、言動の一つ一つがな!」
「あと、わざとじゃないって言った件、私は見たわ、パンチした瞬間止められた所を、あなたニヤリと笑っていたよね?被害者から言わせて貰うと、あれはわざとにしか見えなかった」
流石ヘンゼル!俺のホラだけだと心細かったんだ!
「クソやろうが」
そう勇者が呟くと紫色の煙に包まれ、少し経つと、偽勇者らしきモノの正体が姿を現した。
「以外にアッサリだったね」
メレンは安心した表情で綻んだ
「あぁ」
「ねぇ馬原、カマを掛けようとしてたっていうのは分かったんだけどさ、勇者に対するアレ、本当なの?」
メイベルが呆れ顔で問い掛ける
「いや、嘘だけど、そもそも勇者の事あんま嫌ってないぞ、それに言動なんてそんなもんも知らないし……ぶっちゃけちょっと嫉妬してただけ……」
ま、本物の勇者だったらメンタルヘルスレベルかな、危ないカマだったぜ!
「成る程ね」
メイベルはまだ呆れ顔だった。
「おいお前らがグタグタ話してるんだったら俺は勝手にエリエ族狩って帰るぞ?」
「あ?」
グレーテルのその声を発して刹那、偽勇者の目の前に瞬間的に移動して構えた右手で殴り掛かった。
偽勇者の顔面にグレーテルの拳が食い込みその反動で偽勇者はテーブルを壊し城の壁を貫通して外へ吹き飛ばされる。
つ、つえー……
馬原、メイベル、マト達は衝撃的な光景につい固唾を飲み込んだ。
グレーテルは外に吹き飛ばされた偽勇者を窓から飛び降りダッシュで追う
馬原はその途中グレーテルの眼が薄っすら見えた、その眼は赤く何か威圧的な雰囲気を纏っていた。
「私達も追いましょ!」
「はい!」
ヘンゼルとメイベル達はメレンの声に反応しヘンゼルとメレンが走り始めるとメイベル達はメレン達の後を追う様にグレーテルの後を追った
ーードゴーン!ーー
とてつもなくゴツい音が何度も響いて聴こえてくるんだが…….
「急ぎましょ!」
メレンの掛け声によって足を早めるメイベル達
見え始めるグレーテル、お嬢様は城から少し離れた黄土色の岩の塊を、偽勇者を何度も殴りながらカチ割って行った。
そして、グレーテルの右の一振りで岩は割れ崩れる。
偽勇者は岩の中に埋もれる。
こ、こわい……
「グレーテル、そこまでにして帰りましょ?」
ヘンゼルはグレーテルの元に行くとグレーテルの肩をポンと手で叩く。
グレーテルは振り向くと水色の眼で心配気な表情を浮かべてヘンゼルに問い掛ける。
「お姉ちゃんは大丈夫だった?あの時怖くなかった?さっきの言葉嫌じゃなかった?」
「うん、怖くもなかったし、嫌でもなかったよ、私はあなたが生きているだけで嬉しいから、それだけで、恐怖と嫌悪感が麻痺してるの、だから大丈夫、安心して」
「うん!」
グレーテルはヘンゼルの片目が穏やかなオレンジ色に染まっている事が分かると安心し、明るく返事した。
「可愛いもんだな」
「えぇ、だからメイドは辞められぬ!」
メレンよ、お前も充分可愛いぞ!
「はい、これは約束の救急点滅笛セットだよ」
「あ、ありがとう。」
「妖精ちゃんと幸せにやっていくんだぞ!」
「分かってるよ」
「ここには敢えて首を突っ込まないメイベルである」
「おいおいそれなんか恥ずかしくなるからやめてくれ」
そうして皆して笑い合って城へ戻り食事を始めた
これで偽勇者の件については一件落着か……て
「本物の勇者何処だ?」
「!?」
皆何かを思い出しかの様に騒然とし
メイベルとマリは飲んでいる最中の飲み物を吹き出した
「まさかお前ら忘れてたのか?て俺が言えた事でもないが……」
「そんな、ねぇ……」
「忘れてました。」
おいマリ正直過ぎんだろ!?
「やっぱりな」
「だって、勇者の癖にトラブルメーカーなだけで特に需要無かったから……いつのまにか私の中でモブ化してました」
「おいっ!」
「それ同感ー!」
て、メイベルいつのまにか酒入ってるし!
結局勇者あるあるのハーレム属性ってのは実力ありでの特権だったのか……て俺結構グッジョブな事した筈なのに……ハーレムどころかパーティメンバー一人にすらモテてない……勇者補正込みかよ……後顔……
リリいなかったら泣いてたぜ俺……
「勇者がトラブルメーカーって言いました?」
メレンが不思議そうな面付きで問い掛ける
「言いました」
マリ酒入るとあり得ないくらい素直になるな……
「私もー」
メイベルお前は同感系女子か…….
「確か勇者は転生した時から謎の勇者の印があって、それが必然的に起きたトラブルを引き寄せるらしい、本当だったんだな」
マジかよ……
「えぇー」
メイベルめっちゃ引いてる……
「とは言っても、起きないトラブルは引き寄せないから、まぁそれにトラブルの根源を断ち切ってしまえば、勇者がいても平和だし」
「メリットで言えばトラブルによって亡くなるかも知れない命をトラブルを引き寄せる事によって救える。」
やべぇそうやって勇者が素敵に見える法則使うのやめてくれます!?ますます嫉妬してくるというか……
「なんでだろう……勇者が素敵に感じる……」
遅かったか……
「惚れそうになった」
マリ、今までは爽快だったのにそのセリフ出た瞬間ものすっごく悲しくなったぞ!
「勇者探しするか」
「それが良いと思うわ」
まずは何処を探そう……
「まぁ偽勇者が出たという事は、勇者はどっかに縛られてるんじゃないのか?」
「じゃあ、先ずは城内を探しましょう」
そして暫くの間城内を隈なく探しまくったメイベル達……結果勇者は見つからなかった。
「次は何処探す?」
「偽勇者に聞けば良いんじゃね?」
酒入ってるけどナイスマリ!
「偽勇者死んじゃった」
淡白な声でそのセリフ怖すぎるよ柿色の眼をしたグレーテル!
「んー、じゃあどうする?」
「そういえば私の村偽勇者らしき人物に焼かれたんだけど」
「エリエ族はいたか?」
メレンは衝動的に問い掛ける
「エリエ種?そんな名前聴いた事ないし居なかったよ」
「居ないのに襲った?怪しい」
「じゃあ次はその村に行くか」
「そうね」
メレンは何か気になる様子だ。
「じゃあ明日出発しましょー!」
マリ酒は明るいなー
「おー」
メイベル……
こうして次は勇者探しが始まるのであった。
次話も少し遅くなりそうです!
二度もすみません!