地下に隠されていたモノ
俺は近所で有名な「オバケマンション」に住んでいる。
実際に住んでみて、色んな怪現象に出会ってきた。
これから書き込むのは、俺が体験した中で一番現実味のない出来事。
今でも夢を見ていたのではないかと、自分を疑うような話。
それは俺の仕事では珍しい事に、残業が続いた3日目に起こった事。
夜の10時を過ぎていた。
俺は車を地下駐車場に止めて、エレベーターに乗り込む。
明日にまわした仕事の事を考えていて、ボタンを押し忘れて、しばらくの間エレベーターの中で壁に寄掛かかっていた。
エレベーターの扉が閉まる。
気づくとエレベーターが下に動く感じがした。
ボタンの表示を見ると地下一階(B1)と屋上(R)のボタンが光っている。
押した覚えはなかった。
俺は地下一階から乗り込んだので、地下一階を押してもボタンは反応しないはず。
不思議に思っていると、エレベーターが止まって、扉が開く。
外を覗いて見ると、白い壁と広い空間があった。
なんとなく興味をそそられて、俺はエレベーターから降りる事にした。
出てすぐの場所、その右手側にフックがあり、そこには警察官の制服らしきものが数着掛けられている。
なんとなくだが、正義の味方の秘密基地を思い出させた。
広い空間の真ん中にはブルーシートが敷かれている。
その下に何か隠さなければいけない物でもあるのか、小さい山を作っていた。
俺はブルーシートの盛り上がりが気になって、近づいてしゃがみ、めくってみた。
腕が見えた。
色を失って青白くなった腕。
ブルーシートを持ち上げて、さらにめくる。
その腕は肘の部分で雑巾が絞られたかのように、服ごと捻じ曲がっていた。
俺は人の腕をそんな形に出来る現象を知らない。
いつもの怪現象だと思ったが、一体どんな怪現象なのか見当もつかなかった。
さらにブルーシートをめくろうとした時に、肩を叩かれた。
振り返ると、そこには人の良さそうな顔の警察官がいた。
「どうしましたか?」
俺はブルーシートから手を放して、立ち上る。
相手をよく見たが、外見は人間のようだ。
いつもマンションの周りをパトロールしている警官だった。
「エレベーターが勝手に動いて、ここに着いたんです」
俺は正直に話してみることにした。
相手が警察官なので一応言葉使いに気をつける。
「そうですか」
警察官は笑みを浮かべていた。
まるで何かを知っているかのように。
「一体、ここは何なんです?」
「そうですね。どうせ忘れてしまうでしょうから、言いますけど。
門のようなものです。」
「門?」
「ええ、あちらとこちらを行き来する為の門。
見えないように、触れないように、隠されています。
その所為で、あちらに行きたいモノが集まってくるんです。
我々が対処して行かないようにしているんですけどね」
「ここで何をしているんですか?」
「この世界にいらないものや、対処出来ないモノ。
それをシロマチに送っています」
「この死体は?」
「あまり知られてはいけないものです。
一時的に置いているだけで、これから別のところに運びます」
警察官は一度奥に見える扉を指差し、そう言った。
マンションの位置を考えると、その扉の方向には廃墟みたいな屋敷があるはず。
もしかして、あの屋敷とマンションは地下で繋がっているのかもしれないと、飛躍した考えを持ったのを覚えている。
「あなた達は何なんですか?」
「私達は鏡に写る姿が、正常であるように努力している者です」
恐らく比喩なのだろうが、俺には何を言っているか分からなかった。
「マンションに変なことが起きるのは、あなた達の所為ですか?」
「私達だけではなく、世界がそうなっているからとも言えます」
「俺はどうすれば良いと思いますか?」
「帰れば良いと思いますよ」
そこで、目が覚めた。
気づくと、俺は自分の部屋にあるベッドの上で寝ていた。
変な夢を見たと思いながら、朝の支度をしてTVを点けて飯を食う。
違和感があった。
このニュースは昨日、見た覚えがある。
俺はその日の朝に戻っていた。
残業3日目の朝に。
あの警察官は忘れると言っていた
だが、俺は地下であった事を、しっかりと覚えていた。
一日の出来事も。
その日の仕事はどこに問題点があるのか、何が起きるのかを知っていたので対応が迅速に出来て、定時に帰る事ができた。
本当に時間が戻ったのだと知った時に、俺が考えた事は『競馬、競輪、競艇、どれでもいいから結果を頭の中に入れておくんだった』というものだった。
マンションに帰ったときにエレベーターのボタンを色々押してみたが、何も起きず地下より下にエレベーターが下がる事もなかった。
その次の翌朝は、普通に次の日になっていた。
翌日に起きる事の予知夢を見て、途中から普通の夢に戻った。
そうなのかもしれない。
この話をMさんにしたら
「私は何も聞かなかったし、貴方も何も覚えていない。
これ以上、その話を他の誰かにする事もない。いいね?」
そう、凄まれてしまった。
マンションの周辺であの警察官と出会ったが、俺が会釈しても会釈を返してくるだけで、特に何もない。
俺から声をかけるのもおかしい気がして、そのまま放置している。
この話を書き込むかどうか悩んだが、どうせ夢の話だ。
問題はないと思う。
俺でも信じられない話なので、特に信じてくれとは思わない。
オバケマンションでは、こんな奇妙な事もあったという事だけだ。
また機会があったら、オバケマンションでの出来事を書き込もうと思う。
オバケマンションシリーズ、結




