居酒屋での出来事
結構、最近の出来事なんだけれど。
居酒屋で体験した事。
その日は飲み足りなくて、自宅の近くでやっている飲み屋に寄ったんだ。
繁盛していて、席がカウンターしか残っていなかった。
それで、席に座ったら、後ろから声が聞こえてくる。
後ろが座敷で、どうやら3人の男が飲んでいる。
襖とか仕切りがないタイプの座敷。
飲み屋に入ってみれば分かるだろうけど、大きな声で話している人も多くて、近い位置にいると話の内容が丸分かりになる時もある。
「昨日のアレどうだった?」
「ああ、大した事なかったですよ。外から来たみたいで」
「最近、多いな。エレベーター関係?」
「いえ、海の外らしいです」
「ああ、そっち系」
「家に勝手に入り込む系統の奴でした」
「シロマチ(白町?)に放り込む程ではないか……」
「そういえば、イアムアカ(外国人?)はどうでした?」
「分からん、移動しすぎてどこにいるやら……」
「ジバイ(自賠?)は無くなったから、数は少ないけど。
被害は多いな」
ビールを飲んで、焼き鳥を食いながら、なんとなく話を聞いていた。
どうやら、仕事の愚痴を言っているらしい。
専門用語なのか、隠語なのか、変な言葉を使っている。
途中から何の仕事をしている人か気になりだして、どんな職業か当てるクイズみたいな感じで、色々と想像していた。
「赤と黒は数が多くて困りますね」
「昔からいる奴は対処しきれない。神社に任せるしかない」
「狐や狸は実害が出ないから楽で良い」
ところどころで聞こえない話もあって、うろ覚えだけれど、なんとなくの内容はこの様な感じ。
保険屋かと思っていたけど、どうやら違うらしい。
猟師? 害獣駆除? 緊急救命? 宗教関係?
「とにかく今は、ウキ(浮き?)を何とかしないと」
「それ、前も聞きました」
「まあ、次は成功してもらいたいな」
「ウキの元は祭壇を作っているから、もう一度らしい」
「上げたり落とされたりで、神様も大変ですね」
そこで、俺は見たいTVがあったのを思い出して
勘定を済ませようと席を立ったんだ。
なんとなく、後ろを振り向いて座敷の方を見たら。
座敷にいる3人がこっちを見ていた。
その顔が尋常じゃなかった。
画像処理プログラムで変形させて、渦を巻いたような、絵の具を水の上に垂らして、かき混ぜたような顔。
一瞬だけ息を飲んで、早足で会計に向かった。
絶対、普通の人間じゃないと思ったね。
他の人達は普通の顔だったから、酔っていたせいじゃないと思う。
3人の周りの人は普通にしていたから、俺にだけそう見えたのか……。
店を出てから3人の会話の内容を思い出して、薄気味悪く感じて。
昨日、同じ店に行ってみたけど、同じ顔の人はいなかった。
あの3人はいったい何の話をしていたんだろう。




