食べ尽くす
ちょっと、気持ち悪い表現があります。閲覧注意
オバケマンションに住んでいるものです。
これは情報通のMさんという人から聞いた、昔起きた事件の話。
それを体験した人は、もうマンションには居ないけど、その人をFとします。
Fの身に毎日、奇妙な出来事が起きていたそうです。
Fがマンションに帰るとドアノブにビニール袋が吊るしてある。
ビニール袋の中にはタッパーに入った、おそらく手料理と思われるオカズ。
袋の中には料理の他に手紙が入っていた。
『作りすぎたので、良かったら食べてください』
そう書かれていた。
Fは田舎から出てきて半年ほど。
なので、そういった事が都会では珍しい事だとは知らなかった。
Fは同じ階に住んでいる美人さんや、コンビニの可愛い女店員を想像して、喜んでそれを毎日美味しく食べていました。
結構手の込んだ料理が多く。
変な物は入っていなかったそうです。
強いて言うなら、肉が必ず入っていた。
数ヶ月後、自分の体を切り刻んで料理していた、猟奇的な女性の死体が、同じマンションで発見された事をFは新聞で知りました。
Fはその記事と、自分に起きている事を、関連付けてしまった。
新聞記事を読んだその日、Fはドアノブに袋がかかっていること願いました。
死んでしまっているならば、料理を持ってくる事は出来ないはず。
そう考えての事だった。
その日、玄関のドアノブには袋がかかっていた。
中身はいつもと同じ肉料理。
中の料理も腐っている様子はなく、何より美味しそうに出来ている
Fは新聞の記事とは何も関係がなかったのだ、と安堵してその料理を食べました。
料理を食べ尽くした時に、Fはタッパーの底に何か入っている事に気づきます。
ビニールによって密封されていた一枚の紙。
その紙には小さな字で
『あなたと一つになれた事が、唯一の救いです』
と書かれていた。
その日から部屋のドアノブに、ビニール袋が吊るされる事はなくなったそうです。
「幽霊でも冷蔵庫を使うのかしらねぇ」
Mさんはのんきにそんな事を言っていましたが、個人的には怖くてそれどころじゃなかったです。
今は入居前に管理人さんが面接しているので、変な人は住んでいないそうです。




