オバケマンションであったこと
俺は近所で有名な「オバケマンション」に住んでいる。
実際に住んでみて、色んな怪現象に出会ってきたので、それを書こうと思う。
ここ数年の体験を思い出してみると、不思議なことや怖いことが、よくもまあこんなに起こったなと自分でも感心するぐらいだ。
今日は細々とした小さい怪現象を、まとめて吐き出そうと思う。
1.玄関前に黒い塊。
朝、いつも通りに玄関ドアを開けて、部屋を出ようと思ったら
目の前に黒い塊があった。
砂場で子供が作る山ぐらいの大きさ。
近付いて確かめてみたら、全部が虫の頭だった。
バッタ、カマキリ、蛾、ムカデ、カブトムシ、蜂、カミキリムシ……。
とにかく多種多様な昆虫の頭の部分。
それが山を作るぐらいに大量に。
冬だったのに。
管理人さんに電話して、掃除してもらった。
2.キッチンにいた緑の手
マンションの重鎮であるMさん(30代主婦)の家に、お世話になっている人々が集まって小さな誕生日パーティーを行った。
何かモーター音が聞こえると思ったら、キッチンで円盤型のお掃除ロボットが、床から生えた一本の緑色した手に捕まっていた。
その手には小指がある部分に親指があって、左右対称の右手か左手か分からないような形をしている。
Mさんに言ったら。
「放っといて大丈夫よ。息子も旦那も見えない人だから」
豪胆なMさんの性格が、垣間見える出来事だった。
3.黒い影
時折、マンションの中で黒い影を見かける。
ボヤッとした煙のような存在なのだが
その影は誰かに見られると素早く物陰に隠れる。
追い駆けると、そこには誰もいない。
そんなことがしょっちゅうある。
この前、マンションのロビーでLINEが来たので邪魔にならないように、人のいない物影に移動して操作していたら、そこに影が飛び込んできて、影がビックリしていた。慌てて方向転換して逃げて行ったけど。
4.赤ちゃんの泣き声
マンションの中では、赤ちゃんの泣き声が聞こえる事がある。
週に1、2回ぐらいで、気になるほど大きい泣き声ではない。
もっとも、俺が仕事に出ている時の事は知らないが、大きいマンションなので、赤ちゃんがいる家庭ぐらいあるだろう、そんな感じだ。
俺は大して気にしていないのだが、1階に住んでいるIさんは気になるらしく、部屋から出て来て確認しに行っている。
泣き声が聞こえてきた後で、扉の開閉する音が聞こえるので、なんとなく分かる。
ゴミ捨てに出た時に、偶然出会ったので
何故、毎回確認しているのか聞いてみたら。
「赤ちゃんの泣き声って、何か癒されません?」
どうやら注意しに行っているわけじゃなく、泣き声を聞きに行っているらしい。
怖いのは怪現象だけじゃなかった。
5.Rさん
同じ階の、ちょうど俺と反対側の部屋に住んでいる、Rさん。
このマンションで独身男性なのは、俺とRさんだけなのでよく話すのだが
何でも幽霊から逃げる為に、オバケマンションに引っ越してきたらしい。
駅前の珈琲屋で、カフェラテを飲んでいた時の事。
その店はガラス張りなので、駅前が良く見えるのだが
駅前に立っている女性の後ろに、明らかに幽霊の女が立っている。
幽霊は血だらけで、服装やストッキングのあちこちが破けていて、両手にはハイヒールを持っている。靴は履いていない。
久々にマンションの外で幽霊を見たので、なんとなく眺めていたのだが
そこにRさんがやって来て、幽霊に取り憑かれているらしき女性と、手を繋いで駅の中に入って行った。
後ろから幽霊がピッタリついて行く。
『あなたと付き合っている女性、幽霊に取り憑かれてますよ』
そんな事を言うと失礼になると思って、未だに教えていない。
他にもマンションの周りをうろつく警察官とか、マンションから見える明らかに廃墟の屋敷とか、スーパーで見かける袋被ったお爺さんとか、色々あるが
今日はこれくらいにしておく。




