オカエリナサイ
これは俺が貧乏学生をしていた時の話
志望大学を落ちた俺は、実家から遠い学費の高い大学に通うことになった
それで、安普請のアパートに住んでた
そこは歓楽街も近くて、外国人やソッチ系の人も住んでる
その日は飲みサークルで、夜明けまで飲んでアパートに帰る事になった
たぶん午前5時頃だったかな
俺の部屋はアパートの2階奥の部屋で、階段を上がるときは、出来るだけ音を立てないようにしないといけなかったんだけど
酔っていたから、音を立てて上っていたら、階段を上った先にある部屋の、ドアについている新聞受けがパカッて開いたんだ
「オカエリナサイ」
下の位置にある新聞受けの間から、ブルーの瞳が見える
俺は『あ~、201号室には外国人が住んでいたんだ』とか思いながら
「あっ、すいません。うるさかったですよね……」
そう謝って、音を立てないよう気をつけて部屋に戻った
酔っ払っていた俺は布団を出して、横になった時点で眠りに落ちて
そんで、夕方頃に呼び鈴の音で起こされたのね
玄関のドアを開けたら警官が立ってて
「201号室で自殺があったようなんですが
何か気づいたことはありますか?」
そんな事を聞かれた
えっ!? 今朝、話をしたよな? そう思って今朝の事を話したら
201号室の住人は日本人
首吊り自殺したと思われるその日本人の遺体は、死後3日経っている
そんな事を丁寧に言われて
じゃあ、朝に挨拶してきた人は……!?
201号室の玄関の鍵はかかっていたらしいし、物取りや侵入者の痕跡は見つからなかったらしい
後になって新聞やネットで事件を調べたけど
自殺で処理されたらしいことしか、確認できなかった
結局、俺が見たブルーの瞳の人物については、何も分からないまま
201号室の住人に関係ある人だったのか、遺体と一緒に何してたのか、どうやって侵入したのかを考えると怖くなる
今はアパートを出て、別の場所に住んでいるから平気だけど
思い返すと随分と怖い出来事だった




