表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/81

Gの行方

評価&ブックマーク&いつも読んでくださっている方

ありがとうございます


気持ち悪い表現があります

虫嫌いの方、GOKIが嫌いな方は閲覧注意



私が中学生の頃、築30年以上の古い賃貸に住んでいた。

木造の一戸建てで、隙間風が吹くような家。


そんな古い家なんだけれど、家の中で虫などの姿を見たことはなかった。

普通だとカマドウマとかクモとか見かけるものだと思うけど、その家では一匹も見かけることはなかったんだ。


だから、あの黒くて速くて触角のあるアイツも見なかった。

そうGOKI。

害虫駆除の餌とか置いてなかったから、少し不思議だった。


そんな家で見たモノの話。


その日は母も出かけていて、家には私一人だった。

それで、2階に私の部屋があったんだけど、飲み物をとりに行こうと思って、階段を下りてたんだ。


そしたら、そこにGOKIがいた。

階段の壁に張り付いてる。


GOKIって一匹見かけたら30匹いるって言うけど、気になるのは、その見た一匹だよね。それを見逃せば一匹は必ず家の中にいるって事だし、眠っている無防備な状態の時に部屋に入られたら、とか思うと……。


だから、雑誌とか新聞とかで、叩いてやろうと思ったんだ。

触るのは無理だけど、物で叩くのは出来るから。


でも、動いたら反応して逃げられるし、どうしようと思っていたら

GOKIが移動し始めた。


隙間に入られたら終わりだし、素早いから見逃さないように追い駆ける。

それで、その家の玄関近くに小さいスペースの物置があったんだ。

その物置の扉の方向に、GOKIが逃げたの。

不思議な事に物置の扉が開いていた。

いつもは閉まっている筈の物置の扉が少し開いていて『アレ?』って思って、それと同時に『ヤバイ、逃げ込まれる!』そう思って。


だけど次の瞬間、その物置の扉の隙間から、痩せこけた骨と皮だけの腕が出てきて、GOKIを鷲掴みにして引っ込んだんだ。


何? 今の!?


軽くパニックになった私の耳に、虫が潰れる音と誰かが何かを咀嚼そしゃくしている音が聞こえてきて。


えっ!? 食べてる!?!?!?!


怖いけど物置に誰かいたら、それどころじゃないから、居間からお父さんのゴルフクラブを持って来て。


「いるのは分かってんだ! 出てこぉい!!」


そう叫んだ。

それでも反応がないから、扉の隙間にゴルフクラブを突っ込んで、こじ開けるみたいに扉を開ける。


そこには誰もいなかった。

GOKIも人の姿もなし。

いつもの乱雑とした物置だった。


何がなんだか分からないけど、怖くなって誰かが帰ってくるまで自分の部屋に戻ってこもってた。


お母さんが帰って来てから話をして、物置も見たけどなんともなくて。

それで結局、私が寝惚けていた事にされて、笑われた。


その日以外で痩せた細い腕を見たことはないけど、私はあの家に虫がいなかったのは、その腕の所為せいだと思っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ