Gの行方
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虫嫌いの方、GOKIが嫌いな方は閲覧注意
私が中学生の頃、築30年以上の古い賃貸に住んでいた。
木造の一戸建てで、隙間風が吹くような家。
そんな古い家なんだけれど、家の中で虫などの姿を見たことはなかった。
普通だとカマドウマとかクモとか見かけるものだと思うけど、その家では一匹も見かけることはなかったんだ。
だから、あの黒くて速くて触角のあるアイツも見なかった。
そうGOKI。
害虫駆除の餌とか置いてなかったから、少し不思議だった。
そんな家で見たモノの話。
その日は母も出かけていて、家には私一人だった。
それで、2階に私の部屋があったんだけど、飲み物をとりに行こうと思って、階段を下りてたんだ。
そしたら、そこにGOKIがいた。
階段の壁に張り付いてる。
GOKIって一匹見かけたら30匹いるって言うけど、気になるのは、その見た一匹だよね。それを見逃せば一匹は必ず家の中にいるって事だし、眠っている無防備な状態の時に部屋に入られたら、とか思うと……。
だから、雑誌とか新聞とかで、叩いてやろうと思ったんだ。
触るのは無理だけど、物で叩くのは出来るから。
でも、動いたら反応して逃げられるし、どうしようと思っていたら
GOKIが移動し始めた。
隙間に入られたら終わりだし、素早いから見逃さないように追い駆ける。
それで、その家の玄関近くに小さいスペースの物置があったんだ。
その物置の扉の方向に、GOKIが逃げたの。
不思議な事に物置の扉が開いていた。
いつもは閉まっている筈の物置の扉が少し開いていて『アレ?』って思って、それと同時に『ヤバイ、逃げ込まれる!』そう思って。
だけど次の瞬間、その物置の扉の隙間から、痩せこけた骨と皮だけの腕が出てきて、GOKIを鷲掴みにして引っ込んだんだ。
何? 今の!?
軽くパニックになった私の耳に、虫が潰れる音と誰かが何かを咀嚼している音が聞こえてきて。
えっ!? 食べてる!?!?!?!
怖いけど物置に誰かいたら、それどころじゃないから、居間からお父さんのゴルフクラブを持って来て。
「いるのは分かってんだ! 出てこぉい!!」
そう叫んだ。
それでも反応がないから、扉の隙間にゴルフクラブを突っ込んで、こじ開けるみたいに扉を開ける。
そこには誰もいなかった。
GOKIも人の姿もなし。
いつもの乱雑とした物置だった。
何がなんだか分からないけど、怖くなって誰かが帰ってくるまで自分の部屋に戻って篭ってた。
お母さんが帰って来てから話をして、物置も見たけどなんともなくて。
それで結局、私が寝惚けていた事にされて、笑われた。
その日以外で痩せた細い腕を見たことはないけど、私はあの家に虫がいなかったのは、その腕の所為だと思っている。




