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エレベーターの中


一般的な生活用品を作って売っている会社に勤めているんだが、うちのビルではよく怪談話に出てくるような不思議な現象が起こる。

倉庫で作業していたら、誰もいないはずなのに、複数の人の話し声がする。

コピーをしていたら横に気配を感じて、「待たせてスイマセン」って声をかけたらそこに人はいなかった。

そんな話を良く聞く。


そんな会社のビルで俺が体験した事を話します。




その日は少し残業して、他の人より遅くなったんだ。

日は暮れてて、廊下の蛍光灯の明かりだけでは少し暗かった。

エレベーターを待っていたんだけど、エレベーターが到着して扉が開いたら、エレベーターの真ん中に人形が置いてあった。


古い物じゃなくて最近でも売ってるような、プラスチックの人形。

よくある子供がオママゴトに使う人形。

服を脱がされて捨てられたのか真っ裸だったけど。

その人形の色が真っ赤だった。


「うわっ、気持ち悪いな」


思わずそう呟いた。

でも、ガチャガチャとかで色違いの人形とかあるし、趣味の悪い人形でも需要ぐらいあるんじゃないかと軽く思っていた。

それで、半歩エレベーターの中に踏み込んで、人形を持ち上げてみたんだ。

名前とか書いてあるかなって。


よく見たら違っていた。

その人形は本来の色が赤だったんじゃなくて、赤のマジックで表面に大量の文字が書き込まれていたから、真っ赤に見えていただけだった。


人形を埋め尽くす“たすけて、たすけて、たすけて、たすけて……”の文字。


全身から一気に血の気が引いて、人形を放り捨てた。

人形が床に落ちて、エレベーター内に音が響いた。


それで、すぐにエレベーターから出て、階段で下に降りたんだ。

階段の位置から外へ出るには、1階のエレベーター乗り口の前を通らなきゃいけなかったんだけど。

俺がその乗り口の前に来た時に、ちょうどエレベーターの扉が開いた。

俺は1階のボタンを押してないし、中に誰かいないと扉は開かないはずなのに。

『あれ?おかしいな……』って思って。

それで無意識に中を見ちゃったのね。


エレベーターの真ん中に真っ黒な子供がいた。

片手にはさっきの赤い人形を抱えてる。

白目の部分以外は真っ黒だった。

その子供がこっちを睨んでいる。


俺は声も上げられないほど驚いちゃって、半分腰砕けになりながら、急いでビルから出たんだ。


後日、上司にその話をしたら


「建てられてから10年以上経っているビルだから、色々あるよ」


そう言われちゃって。


怖いけどまだそこで働いている。

日が暮れてからは、エレベーターに乗らないようにしています。


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