換気口
ちょっと前に、派遣で働いていた会社で起こった話
俺の上についてくれた、会社側のリーダー的な人の話なんだけど
その人は心霊スポットによく行く、いわゆるオカルトヲタクってヤツだったんだ
特定されたら嫌だから、イニシャルでFって言うわ
Fさんに「心霊写真見せてやるよ」って言われて、スマホの画面を見せられたんだそこにバッチリ変なものが写っていた
心霊写真って言っても、幽霊が写っている様なやつじゃなかった
どこかの廃墟の建物内でFさんが写っている写真
Fさんが立っている場所の後ろ、奥にある換気口から長い腕が飛び出ていた
その換気口は天井についていて、どう考えても人間じゃその位置をキープできないような場所にあって、そこから、これまた人間とは思えない長さの腕が伸びてんの
垂れ下がるようにダランって
でも、指の数は人間と同じ5本で、鋭い爪が伸びていて、山姥の手を想像したっけ
「うわっ、凄いじゃないですか!」
俺は合成かな? って思いながら驚いて見せた
「凄いだろ。これだけハッキリ写ったのは初めてだけどね」
「でも、呪われたりしません?」
「大丈夫、御祓いもしたし、生活でも何も問題ないから」
そう言ってFさんは笑ってた
その日から3週間後くらいかな、Fさんが失踪した
そして、1か月後に遺体で見つかった
それで、遺体で発見された場所が滅茶苦茶怖かったんだ
会社の倉庫の換気ダクトの中
なんか、臭いで気づいたらしい
Fさんの服や遺体には、クマみたいな動物に鋭い爪で思いっきり掴まれて、引っ張られたような傷が出来ていたってさ
10本の傷がね
事件性があるって事で、警察に事情聴取されたけど、写真のことは黙ってた
面倒事に巻き込まれたくなかったから
俺は心霊スポットって呼ばれる場所や廃墟には、絶対に行かないようにしてる




