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海沿いの宿


結構、幽霊を見る

霊感体質


社員旅行で海沿いの宿に泊まった

社員旅行をするぐらいなら休みをよこせ! と言えれば良かったのだけれど

早々に宴会会場からビールと刺身の船盛りを持って抜け出して、てられた部屋でビールを呑んでいた


窓からは切り立った崖が見える

仲居さんに聞いたら、何でも数年前は自殺の名所だったらしい

進入禁止の看板と柵が作られてから、自殺は無くなったそうだ


そんなものが見える部屋を取るなよ


それでも崖に当る波や月を眺めながら、ビールをちびちび飲んでいた

まん丸な満月

月の前を何か大きなものが横切る

窓に近寄って目を凝らす

それはクジラの姿をしていた


クジラの幽霊かと思ったが違った

クジラの腹からはいくつもの腕が生えている


ダラリと下がった白い腕が、数え切れないほど

まるでモップの先のように


そのクジラが元神様だということはぐに理解した

そういったものを何回か見たことがある

信仰されなくなり、野に放たれた力を持つ存在

厄介な祟り神だ


クジラは崖の上を旋回している

しばらくすると、腹から生えた腕の4本が伸びて崖下の海に潜った

腕が拾い上げたのは2体の幽霊

男と女だった

青白い腕が2本ずつ体を掴んでいる


多分、男女は生前の執着から成仏できなかったのだろう

2人の足元は赤い紐で繋がっていた

おそらく心中でもしたのだろう


男も女もめかし込んでいたらしく、奇麗な服を着ている

人生の最後を飾る為の服


男の方は長い間波にさらされていたのかボロボロで、女の方は岩場にぶつかったのか顔の部分が原型をとどめていなかった

クジラから生えていた腕は、赤い紐を引っ張って千切った

そして、男の霊を海に投げ捨てる

数本の白い腕が女の霊の両端を掴み、雑巾のようにねじる

下半身と上半身が逆を向く

腹の部分でねじれた女の霊は真ん中から折れ曲がっていた


白い腕から放たれた女の霊は、海の上に浮かぶように空中にプカプカと浮いた

「∧」の様な姿でつま先を上、顔を下にして

足首からは愛しい人と離れない為の、赤い紐が垂れ下がっている


そこで理解した

あのクジラの形をした荒神は、何か呪いをき散らそうとしようとしている


慌てて窓の鍵を確認し、窓の障子を閉めた

持ち歩いているお清めの塩を撒こうとして止める

海の荒神あらがみを遠ざけるのに、海のもので清めても仕方ない


「くわばらくわばら」


とりあえず宴会会場に向かった

呪いに巻き込まれるとしても、数が多いほうが標的にされにくい


結局、社員旅行の間には空を飛ぶクジラも、宙に浮かぶ折れた霊も、それ以降見かけなかった

どこか別の所へと行ったらしい


一応言っておく

クジラの姿をした幽霊や、折れ曲がった空に浮く霊を見たら、逃げた方が良い






関連話

「風船霊」「カーテンの影」「縄張り争い」


下に赤字で書いてあるけど一応書いておく

この話はホラーデータが発見した文章です

そして、この物語はフィクションです

実際の個人、団体、宗教、神様とは一切関係がありません

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