地元の砂浜
これは俺が夏に見かけた変なヤツの話
俺の地元は海に挟まれているのね
それで近くの海岸沿いを用事があって、俺が歩いてたんだけど
海岸の砂浜近くに車が止めてあったんだ
その砂浜は反対側に大きな海水浴場があって、そんなに広くもないから
いつも人が少ない場所だったんだけど
その日は車の持ち主らしき人以外誰もいなかった
その車の持ち主らしき人物は茶髪で、海に入るのにゴールドのチェーンネックレスをしているような軟弱な男子大学生みたいな外見をしていた
そのチャラ男が砂浜で誰もいない空間に話しかけてるの
俺はちょっと興味を引かれて様子を見てたんだけど
チャラ男が少し後ろに下がって、脇に抱えていたビーチボールを投げたんだ
そしたら、何もない空間でビーチボールが跳ねて、チャラ男に戻ってきた
俺は不思議な光景にビックリして、前のめりになりながら見てた
3回ぐらいラリーが続いた時だったかな
風に吹かれてビーチボールが海側に飛んでった
チャラ男はビーチボールを追い駆けて、海に入ってったんだけど
そこは地元の人なら知ってる、海流が変わる境目だったんだ
あまり遠くまで泳ぐと、海に流されちゃう場所だったから
俺は思わず声をかけた
「おーい。あんまり遠くまでいくなよ~!」って
それが聞こえたのかチャラ男が泳ぎながら振り向いた
チャラ男は何かに気づいたのか二度見
いったん立ち泳ぎで止まった後、砂浜側に泳いで戻ってきた
海から上がったチャラ男は俺の近くまで来てこう言ったんだ
「他に大勢いた人達はどこ行ったんですか?」
緊張しているのか外見と違って丁寧な言葉遣いだった。
「いや、最初から君しか砂浜にはいないよ」
俺はそう答えた
そしたら、チャラ男は目をパチクリさせて棒立ち
あまりにも呆然としているから、俺はこう言ってやったんだ
「反対側にはもっと大きな海水浴場があるよ」って
そしたら
「あっ、……はいっ!」
やたら良い返事をして止めてあった車の方向に走って行った
チャラ男には一体何が見えていたんだろう?
ちなみにビーチボールは凄い速さで沖に流されていった




