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壁の穴
スーツを脱いでハンガーにかける
ネクタイを外してシャツを脱ぐ
家に帰った俺は着ているものをパンツ以外全て脱ぎ
楽なTシャツと短パンに着替えた
ふと壁を見る
穴が開いている
穴の中から目が覗いている
またか……
そう思った
何故覗くのか
中年男の生活など見ても面白いものなどないだろうに
大家に穴のことで一度文句を言ったが受け付けてもらえなかった
引っ越すにも金が要る
俺は箸立てから箸を一本取り出すと穴に突き刺した
手応えはない
穴に半分まで入り込んだ箸を引き抜き、元に戻した
箸に変化はなかった
穴からは馬鹿にしてるように笑っている目が見えている
俺の部屋は3階だ
穴の出現した壁の向こう側は空中でベランダはない。
そもそも穴の先がどこに繋がっているのか俺には分からない
覗いているモノがなんなのかも
穴は誰かに見せようとしたり時間が経ったりすると消える
出現した穴が消えるまで今日も俺は隣の部屋にいることにした




