提灯灯篭
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出張の帰りだったJさんは夜の山道を走っていた。
出張仕事が難航し、随分と遅い時間に帰ることになったJさんは帰宅を急いでいた。
だから、仕事先の人に近道を聞いた。
一番近いのは山道を突っ切ることだと聞いたJさんはその道を走ることにした。
何時間も街灯すらない山道をヘッドライトだけでJさんは進んでいた。
山道を1時間ほど走った後、Jさんは道の左右に灯篭が立っているのを確認した。
石でできた台の上に、大玉スイカほどの提灯が乗っかっている。
一つ通り過ぎるとまた一つと、道の端に一対の提灯灯篭が現れる。
近くに寺や神社、宿泊施設でもあるのかな?
と思ったJさんは余り気にしていなかった。
しかし、灯篭を5回ほど通り過ぎたあたりから奇妙に思えてきた。
宿泊施設への誘導にしては別れ道もないし、何より看板や道案内が見当たらない。
次の灯篭を確認した瞬間、Jさんは恐怖に襲われた。
提灯だと思っていたモノは人の頭の形をしていた。
「生首だ……」
そう呟いたJさんはアクセルを踏んだ。
石台の上に生首が置かれているのだ。
そして、生首がボンヤリとした光を放っている。
提灯灯篭ではなく生首灯篭。
「……ヒッ……」
あることに気づいたJさんは微かな悲鳴を上げた。
生首の目が動いているのだ。
その視線は車の動きに一致している。
左右の生首はJさんを目で追っていた。
焦ったJさんは更に車の速度を上げた。
何回灯篭を通り過ぎてもどれだけの距離を走っても灯篭の列は続いていた。
灯篭、灯篭、灯篭……生首、生首、生首……
どれだけの時間を走っていたのか、急にJさんの目の前が真っ暗になった。
灯篭が視界から消えると同時に車のヘッドライトが消えたのだ。
「……ッ――!」
あまりの出来事にJさんは急ブレーキを踏んだ。
そこでJさんの意識は途切れた。
朝日と共に目を覚ましたJさんは車の前に苔の生えた墓石があるのに気づいた。
そこは山中にある放置され荒れ果てた墓場だった。
Jさんはどうにかして車をバックさせて急いでその場から逃げたという。




