第1話 運命の出会いと始まり
4000年もの、昔。それはまだ魔族が世界各地のプリズムを人類の崩壊、そして創世へと導くために狙い回収していた最盛期。全ての平和を望む種族と創世を望む魔族達は敵対しあい、酷いプリズムを巡る戦争は長く続いていた。この時期は別名「世界最悪の悪夢」とまで呼ばれるほどの脅威であり、この名は妖精族にも関連付けられている。結論から言うならば、魔族は全てのプリズムを収集し、世界は彼らの思うままに。そうして2000年前。世界は再構成されたと言われる。これに妖精族が関連しているか、否か、そして妖精族の秘められた強大な力は、プリズムと共に有り。そう、言い伝えがあり、今も妖精族の研究と調査は続いている。しかし、妖精族は「世界最悪の悪夢」により世界が再構成された後、人の目から消えた。彼らが一体どこへ行ったのか、絶滅したのかいまではまだ分かっていない。
物語の始まりは、現在-新暦カイル2065年10月秋中旬-
多くの人間が日々、畑で食物を育て、商売をして生活をしている世界最大都市「アシュタル」。ここでは人間がとくに人口を占めていて、わずかに他種族の者も移住している。都市の一角にて。
「たく。早く来い、買い出しがまだある。」
「わぁーってるって、レイ。すぐ行く、あと…これとこれか。確かあの曲がり角を曲がったお店だな。あとな?俺のことはたっくんって呼べって言ってんだろ?慣れねぇーんだよ。」
2人の少年。1人は背が高く灰色の短髪、少しよれよれなシャツを着ている『レイ』と呼ばれる人間。また、もう1人は背が高く黒髪で紫のシャツを着ている『たく』と呼ばれているものの、『たっくん』って呼べ!と、不満な顔でレイを睨み返す人間。2人は小さなメモ紙を眺めながら、都市内にある有名市場を歩いていた。今にも迷子になってしまいそうな人の多さの中。
「わりぃわりぃ。つい、昔の呼び方に慣れちまってるからよ。…おい、たく!こんな中で迷子になるんじゃねぇぞ?」
ニヤつく顔と、意地悪な口調でレイが後ろからたっくんに声をかける。
「うっせぇ、大体こんなのいつものことだろ。どれだけこの都市でやってきたかお前だって分かってんだろ。つか、また言ったな!?」
人通りの多い中でいじってくるものだから溜まったものではない。そして、目的のお店でメモにある食料や飲料を購入し、人混みの多い市場を突破して一息つくことができた。辺りは先ほどと打って変わって静けさに包まれた裏路地である。レイは並べられた土管の上に座り込み、雲行きは怪しくなってきている。
「降ってきそうだな、流石に買ったもん濡らして帰るわけにもいかねぇな…どうする?」
たっくんはレイに聞く。が、レイはなにかほかに興味を示しているようで暗闇を眺めている。
「おい、何見てるんだ?」
それは、路地裏の人目につかない、さらに奥でなにか動いめいている。フードをかぶっているのか顔はよく見えないが人…子供だろうか。まわりを男が2人取り囲んでなにか声をかけている。
「あれなんかやばくないか?俺行ってくるわ。」
たっくんは後ろから止めようとするレイを振り切り、男達のところへ駆け寄った。すると、彼らはすぐに気づき振り返った。そして、陽に照らされて帽子のマークですぐに危険を感じた。
「こんな裏路地で軍の皆様が1人を相手に2人がかりで何をしていらっしゃるのかなあ?」
彼らはそんな軽々話しかけるたっくんに対し、目を合わせてなにかコソコソ話している。どう始末しようかなどと話しているのだろうか。そうして話が終わったのかこちらに向き直ると高身長の強そうな男が低い声で告げた。
「見られてしまったものは仕方が無い。君はこの都市の人間か?安心しろ。死んだことは我々が報告、ともに書き換えておいてやる。さぁこちらへ来い。」
手を引かれそうになったが、さっと避ける。すると、レイが後ろからやってきてやれやれと頭をかく。
「なにやってんの、たく。まーた厄介事に巻き込まれちゃって…、だから行くなって止めたんだけど?」
「うっせぇ、とりあえずこいつらをやってから話そうぜ。そこのお前もな?頭下げてそこにいろよ?」
たっくんが奥にいるフードの人間に声をかけると、相手も深く頷き、しゃがみ込んだ。そして、時は一瞬。強い風が吹き抜けるとともに、たっくんとレイは奴らの首を狙い、気絶させた。
「…」
フードの人間も軽く息を呑んだ。そして、2人の男は何が起きたかも分からないまま目の前に倒れ込んでしまった。念のため、鞄からロープを取り出し彼らをきつく縛る。ようやく一息ついた所で、改めて向き直り声をかけた。
「よし。これでいいな。んで、そこのフードの…あっ!おい!待てって!」
逃げ出そうとしていたフードの人間の手を掴んだ。その勢いでついフードが取れてしまった。レイとたっくんは目を見開く。
「おまえ、まさか…エルフか?」
目の前にフードが取れてしまい、長い白髪と長い耳が見える小さな少女がちょこんと座り込んでいる。歳は、いくつぐらいだろう。10代前半といったところか。すると、震える体で彼女は口を開いた。赤い瞳がギラりと睨みつける。
「お前は誰だ?…私に触れるな。忘れろ。」
この出会いで新たに時が動き出す─────
……To be continued