表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の後ろで、僕は。  作者: 前田 宏
第一章 「来たる、彼女。」
6/6

第五話

 「さあ皆どうする!」


 僕は気を取り直して皆に問いかける。


 「どうするって言ってもなぁ。そう言う佑樹はどうなんだよ」


 圭吾が聞いてくる。


 「僕?」


 「そうだよ。この作戦会議しようって言い出したのも佑樹くんなんだし何か良い案があるんじゃないの?」


 香織にも聞かれる。

 だがこれといって案は無い。

 昨日帰ってから家で考えていたが何も浮かばなかった。


 「どうせ何も無いんだろ」


 僕が何も答えずにいると黙っていた公介が話に入ってくる。


 「まぁ……特には……」


 「やっぱりな。というか俺はそいつの入部には反対だ」


 「「「「「えっ!」」」」


 この発言にそれまで椅子にちょこんと座って話を聞いていたユーリを含め公介以外の四人が反応する。


 「ど……どうしてデスか!?」


 ユーリが椅子から立ち上がり、公介に詰め寄る。

 む、近いな。


 「落ち着け、ギルヴィア。理由は説明する。」


 「ダー……」


 公介がそう言うと、ユーリはおとなしく席に着いた。


 「で、何だよ?理由って」


 圭吾が聞く。


 「まず、俺たちにメリットがない。」


 「「「「「メリット?」」」」


 「そうだ」


 どんな理由かと思えばメリット?

 そんなのたくさん……


 「あるだろ」


 気づけば口に出していた。

 皆が僕の方を向く。


 「何だいきなり」


 公介が聞いてくる。


 「だから、メリットだよメリット!そんなのたくさんあるじゃん!」


 「へー。じゃあ言ってみろよ」


 適当に返事を返してくる公介に内心イラッとしながらも、僕がメリットと思う点をあげていく。


 「まず注目される!」


 「好奇の目で見られるだけだ。それに俺はあまり目立ちたくない」


 「確かにそうかもね。後半はあまり関係ないけど」


 香織が呆れながらも納得している。


 「じゃ、じゃあ!演奏の幅が広がる!」


 「ユーリさんって何か楽器できるの?」


 圭吾がユーリに聞くが、


 「ニェット……。特にはないデス」


 「「じゃあ広がらねぇじゃん」」


 圭吾と公介の返事が被る。

 さすが幼馴染、仲良しか!

 

 まずいな……バカじゃんこいつ、みたいな空気が流れ始めてる……。

 なら、これなら全員納得するだろ!


 「部員が増える!これならどうだ!」


 僕はドヤ顔で言い放った、が


 「バカか。ただでさえ狭いこの部室だぞ。2、3人ならともかく沢山入ったらどうする」


 た……確かに。


 「ダー……。確かにお世辞にも広いとは言えない部屋デスね」


 「「ぷっ……」」


 ユーリにも言われてしまった!?

 って圭吾と香織、笑うなよ。


 「何だ。もう終わりか」


 公介が馬鹿にしたように言ってくる。

 くそぉ、何かないか……。

 考えていると笑いすぎたのか、目の端に少し涙を浮かべた香織が口を開く。


 「そ……そういえば公介くん。理由を話してくれる時に、まず、って言ってたけど他にもあるの?」


 そういえば言ってたな。

 まだあるのか……?


 「まあな。お前たち、大事なことを忘れてないか?」


 「大事なこと?」


 なんだっけ?

 ユーリをどうやって部活に入れるかってこと以外に大事なことなんてあったか?


 「部活動紹介だよ」


 「ブカツドウショウカイ?」


 ユーリは初めて聞いた言葉なのかカタコトになる。

 って、


 「「「あーーーーー!」」」


 「やっぱりか……」

 

 僕たち3人の反応に公介はため息をつく。

 まだピンと来ないのか、ユーリが公介に尋ねる。


 「あの……。ブカツドウショウカイとは……?」


 「ん?あぁ、各部活の紹介をするんだよ。新入生の前でな。で、俺たちは演奏をするんだが……」


 ユーリへの説明を終えた公介は僕たち3人の方を向く。


 「その反応を見る限り、忘れてただろ。というか練習はしてるのか?」


 そう聞いてくる公介と目を合わせまいとそっぽを向く僕たち。


 「練習すらしてないのか……。ギルヴィアには悪いがやはりお前に構っている暇はない」


 「ちょっと、そんな言い方……!」


 公介の発言に、さすがに香織が反応するが


 「当然のことを言っただけだ。部活動紹介まで2週間だぞ。時間は無いんだ」


 言葉を詰まらせる僕たち。

 それでも……!


 「それでもやっぱり……」


 「わがままを言っている暇はない。しっかりしてくれよ、部長。」


 僕の言葉を遮って、公介が言う。

 確かにそうだ。

 部長の僕がしっかりしないと……。

 でも……。


 「もうこんな時間か。俺はレッスンがあるから抜けるぞ。もう一度、しっかり考えろ。」


 そう言うと、公介は部室から出て行った。

 部室に残るのは重たい空気と3人、そしてオロオロしているユーリ。


 そして何も進展せぬまま、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ