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彼女の後ろで、僕は。  作者: 前田 宏
第一章 「来たる、彼女。」
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第四話

 三時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 昼休みだ。


 「はぁ~、どーっすかな~」 


 チャイムと同時に、机に突っ伏した僕はうなだれながら言う。

 そんな僕に、前の席に座っていた男子が声をかけてきた。


 「どったの佑樹。 はっ! 実は進級出来なかったとか? 何してんだ早く自分の教室行きな!」


 「違うわ。 どいつもこいつも馬鹿にしやがる……」


 「あ、違うの? すまんすまん!」


 このやたらとテンションが高い男は、僕と同じく作詞作曲コースに通うクラスメイトの柳健一(やなぎけんいち)

 僕と違って成績も良く、生徒会役員も務める秀才だ。    

 ただ、性格に難ありと、よく言われている。

 悪い奴じゃないんだけど……。


 「で、実際のところどうしたん?」


 「まぁ昨日いろいろとあってな……」


 「あぁ! 始業式の時の事か! あの時は生徒会の席に居たんだけど、笑っちゃったよ。 おかげで会長に怒られたぜ」


 「いやまぁ、それもあるんだけど……」


 僕は答えながら、昨日の事を思い出す。


 --「「「「えっ!?」」」」


 向井先生が放った衝撃の言葉に僕たちは耳を疑った。


 「何故ですか先生」


 「いや、何故って。 そういう校則だから」


 (知らねーよそんな校則!)


 香織の質問に、当たり前だろ、みたいな顔をしながら答える先生に心の中でツッコむ僕。


 「まぁそういう事だから。 ていうかもう下校時間過ぎてるから帰ろよお前ら。 部室の鍵は俺の机の上に置いといてくれ。 俺は帰るから。」


 じゃーな、と言って先生は部室を出て行った。

 また別の意味で部室に静寂が訪れる。


 「どうしよっか」


 「どうしようもないだろ。 校則なら仕方ない。」


 香織も圭吾も諦めムードだ。


 「ど……どうしてもデスか!?」


 ユーリが声を上げる。


 「うーん。 校則で決まっちゃってるのなら私たちにはどうすることも……」


 「で、でも! 私は……!」


 ユーリが今にも泣きだしそうな表情で訴える。

 これは……どうにかするしかないだろう!

 僕はそう思い、発言する。


 「よし分かった! 明日の昼休み部室で作戦会議しよう!」


 --なんで昨日あんな事を言っちゃったんだろう……。


 「はぁ……」


 僕はまた、ため息をつく。


 「おぉ!!」


 「可愛いー!」


 何だ?

 廊下が騒がしい。

 すると、教室のドアが開かれた。


 ガラガラ


 そこに立っていたのは、ユーリだった。

 当然、僕の教室も騒がしくなる。

 するとユーリは何かを探しているのか、キョロキョロしだした。

 そして、僕と目が合う。


 「佑樹!」


 「「「「「えぇ!!」」」」」


 クラスメイト達が驚きの声を上げる。


 (歌姫が松波に何の用だ??)


 (何で松波くん?)


 クラスメイトたちに見つめられる中、僕は席を立ち、ユーリのもとへ向かう。


 「えっと、どうしたの? ユーリさん」


 「迎え、来たデス」


 「え、あ、ごめん。 今から行くところでした」


 「そうなのデスか。 では行きましょう!」


 「う、うん。」


 どうやら部室に来ない僕を、ユーリが迎えに来たらしい。

 でも何でユーリが?

 絶対、香織か圭吾が迎えに行ってきてとか言ったんだろ。

 部室着いたら文句言ってやる。

 ていうかユーリと並んで歩いていると、周りの目線が……。


 「ていうかなぜ敬語なのデス? 同い年デス……よね?」


 ユーリが話しかけてくる。


 「あ、ごめん。 でも、ユーリさんも敬語だよね?」


 「私はこの方が、しゃべりやすいデス」


 確かに、日本語は「ですます」がしゃべりやすいのかもしれない。

 と、ここで僕は疑問に思っていた事を聞いてみる。


 「そういえばユーリさんって日本語上手だけど、習ってたの?」


 「ニェット。 独学です」


 ニェット??あぁ、いいえって意味だ。

 ていうか


 「独学!?」


 ユーリがサラッと言った言葉に僕は驚かされる。


 「ダー。 小さい頃から日本が好きで、よく日本の歌とか、アニメとか見てました」


 「へぇ……」


そんな話をしていると、すぐ部室に着いた。

 ドアを開ける。


 「ごめん遅れた」


 部室に入る。

 すでに僕とユーリ以外は居るようだった。

 

 「おせーぞ、佑樹」


 圭吾が声をかけてくる。


 「だからごめんって。 ていうかユーリさんに迎え行かせたの誰だよ! あとでクラスの奴らに何て説明しよう……」


 「いーじゃねぇか。 その方が面白いだろ?」


 「面白くないよ!」


 「なぁ。 早く始めないか。 この後レッスンなんだ」


 そう言ってきたのは昨日は居なかったもう一人の部員、中村公介(なかむらこうすけ)だ。

 圭吾と同じジャズコースに通っていて、サックスをやっている。

 ちなみに圭吾はドラムだ。

 二人は、いわゆる幼馴染でこの高校の系列の中学に通っていた。

 僕とユーリは席に着く。


 「ごめん公介。 えっと、じゃあそれぞれの部活での楽器を紹介しようか。 僕はギター&ボーカル。 ユーリさんが入ればギターだけになるかな」


 「私はキーボードよ」


 「俺はドラムだ。 で、公介がベース」


 「俺はベー……。 っておい、勝手に言うなよ圭吾。」


 「よし、じゃあ紹介も終わったという事で、作戦会議といこう!」


 僕は立ち上がりながら、拳を突き上げる。

 珍しくやる気な僕をみんな、変な目で見るが、ユーリだけが


 「ダー!」


 と言って、一緒に拳を突き上げてくれた。

 ありがとうユーリ。

 何とかやっていけそうだよ……。 

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