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第三十四話  日記


 リリは再び過去の事件を見直した。

 やはり、今までの事件には共通点があった。接点が一度くらいあってもおかしくない人物が一度も直接関わっていないのだ。


「……」


 考えれば考えるほど、調べれば調べるほど、リリの頭の中には一人の人物しか思い当たらない。

 リリはすぐにナトリアの元に向かった。




 ********************




 ――ベルウスの森


 和也の脳に日記の内容が刻まれる。

 先代が死んでからもルビーは日記を書き続けた。

 ルビーは先代の死から死に鈍感になっている。



 今日、泉に変態さんが現れた――



「ん? これって……」


 

 変態さんは先代と同じ目を向けてくる。いやらしいです。



「そんな目で見てたか? いや、確かに下心がなかったとは言わないけど……はっ! いやいや俺はロリコンじゃない! 俺は普通! よし!」


 

 今日から、変態さんが家に住むようになった。寝るときは気を付けないと



「あいつ、裏での俺の扱いひでぇな。なんもしねえよ幼女体形に。いやほんとマジで」



 今日は変態さんが、お腹が空いたと駄々をこねるので、森の葉や枝をご馳走してあげた。変態さんはとても美味しいといっぱい食べてた。少し嬉しい。



「確かに、最初食べたときは美味かったけど、ずっと同じじゃな……」


 

 今日、変態さんが食事に文句をつけてきた。変態の居候の分際で――



「結構根に持ってたんだ……」



 なので、今度フルーツを持ってきてあげようと思った。

 ウルの実は甘くて、みずみずしいのできっと気に入ってくれると思う


「んだよ。そんな美味そうなもんあるならもっと早く持ってきてくれよ……なんか俺、ヒモみたいだな。ハハハ……」



 今日、変態さんがルカリアに変える方法を聞いてきた。そんなに帰りたいんでしょうか……

 ほんとにルカリアまで吹き飛ばそうかな



「こえーよ!」



 日記はここで終わっている。

 とりあえず、ルビーの和也に対する扱いが分かった。

 和也は一呼吸つくと、日記をもとの場所に戻す。

 振り返ると、ルビーが床に刻まれた魔法陣の上に立っていた。手元には見慣れた葉や枝のほかに、赤色の実があった。おそらくあれがウルの実だろう。

 

「お帰り。今日はいつもと違うのもあるんだな」


「ただいまです。これはウルの実と言います。あなたがここの食事にケチをつけるので取ってきてあげました」


「そういわれると心が痛いな」


 和也はウルの実の存在を知らないように装った。ルビーの反応からして、日記を見ていたところまでは見てないのだろう。

 ルビーは食事の準備を始める。和也は椅子に座り、ウルの実を手に取る。ウルの実はブドウのように束になっており、そのうち一つを千切る。すると、千切ったところから、トロっとした薄黄色の何かが出てきた。


「なんだこれ?」


 和也は分析の力を使う。そして、和也に衝撃が走った。


「こ、これは……マヨネーズ!」


 これほどうれしいものはないだろう。まさか、この異世界でマヨネーズに出会えたのだから。そばにあるのは新鮮な植物たち。

 和也はさっそくマヨネーズをつけ、葉を口に入れる。涙が出そうなくらい美味かった。酸味はそれほどなく、舌触りはなめらかでほのかに甘い。和也好みの味だった。

 元の世界ではマヨネーズはあまり使わなかった。しかし、この世界に来てから食事の内容はがらりと変わった。懐かしい味が和也の舌に衝撃を与えた要因でもある。


「どうしたんですか?」


 ルビーは興奮している和也を不思議に思う。和也はマヨネーズをつけた葉をルビーに手渡す。

 ルビーは受け取ったと一回和也を向き、口の中へと運ぶ。食べたときの反応はとても見応えがあった。口にはしないが、とても気に入ったようだ。

 ルビーは無言で食べる。ただ、いつもの食べる速さより断然早かった。

 和也は微笑ましく思い、ウルの実をかじる。マヨネーズのインパクトに負けないくらい美味しい。日記にあったように甘く、みずみずしい。少しお高めの桃のような味だ。



 和也は膨らんだ腹をさすりながら、背もたれに身を任せる。ルビーもとても満足そうだ。今日の食事は文句なしだ。だが、これをきっかけに今度はこればかりになるだろう。いつ飽きるかが問題だ。

 和也はひと段落つくと、ルビーに質問する。聞かないでおこうと思っていたが、今後のためにも聞いておいた方が良いと思った。


「ルビーって師匠……魔法を教えてくれた先生っているの?」


 あくまでも日記のことは知らないように振る舞う。使える情報は必要な時まで取っておきたいからだ。


「先生ですか……いましたよ。昔」


 意外とすんなり答えたルビーに和也は少し驚く。おそらく、知っても危険性がない情報は簡単に教えてくれるようだ。


「その人は親とかなのか?」


 ルビーは悲し気な表情を浮かべる。先代と言っていた人を思い出したのだろう。

 先代ということは少なくとも親ではなさそうだが。


「親と言える人はいました。もういないですけど」


 ルビーがさっらと言うので、和也は反応に困った。これは和也のミスだ。日記から先代は死んでいるのとそれいこうルビーが死に対して無頓着になっていることはわかっていた。普通に切り返されるのも予想できたが、それに対する返答を用意してなかった。


「えっと……」


 和也は重い空気を変えようと、頭をフル回転させる。聞きたいことは山ほどあるが、ほとんどは答えてくれそうにないことばかり。和也はあたりを見渡す。そして、何とか話題を見つけた。


「……あっ、ずっと気になってたんだけどあれ何?」


 和也は数分おきに色が変わる水晶体を指さした。

 おそらく機密事故だと思い、質問してこなかったが、聞いてみるだけ聞いてみても問題は無さそうだ。


「あれは、この森の状況をを色分けしたものです。今は緑、つまり問題なしの状態です。侵入者が来た場合赤色に変化します。時々変わる黄色は環境の変化を現します。この森は数分おきに植物が急成長したり、泉の性質が変わったりします」


 この森の現状を知るには必要不可欠な道具のようだ。だが、今の和也には必要ないことだと思った。

 そのとき、水晶体が真っ赤に染まった。




 ********************




 ――ルカリア王国


「ナトリアさんたちがキスガスに向かってから結構経ちますけど、何か進展はあったんでしょうか」


「連絡が一切ないからな。俺たちはただ待ってることしかできん」


 フランと二クスは木剣を振りながら話す。今は訓練中だ。フランたち以外も素振りをしている。その周りをオストワルが後ろで手を組みながら巡回する。

 別に堅苦しい訓練ではない。他の人が話している所にオストワル自信が交じるときもある。やることをしていれば特に何も言わない。オストワルは統率よりも過ごしやすさを重視している。実際、第三騎士団は他の騎士団と比べて良い空気が流れている。家族のようなものになっていた。


 オストワルはナトリアたちの状況を知っていた。あの後、フランたちが説得したのだ。もちろん公になれば帰って来た時面倒くさいことになるが、オストワルは分かる人間だ。もちろん、他の騎士団団長たちには話していない。ナトリアほどの存在が居なくなれば怪しむ者もいたが、そこはオストワルが上手くフォローした。今、和也とナトリアは特別訓練としてあまり外に出れないということになっている。カリファーにばれた場合が一番面倒くさいことになるので早く戻ってほしいとフランたちは思っていた。


「まぁリリさんもついてますし、何とかなるでしょうけど」


「そうだな。戦闘面でも、あの殺し屋もいるし、リリもそれなりに戦えるしな」


 二クスはリリに投げ飛ばされた時のことを思い出した。もちろん、フランはそのことを知らず、リリが怒らせればかなり怖いことを知らない。


 そして、訓練が終わろうとしたとき、一羽の鳥がオストワルの腕に捕まる。足には何やら紙がくくられていた。オストワルは紙を開いて中を確認した途端、あたりの空気が一変した――



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