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プロローグ

 

 気が付くと青年は、森の中で寝そべっていた。


 ――ここは、どこだ?


 周りには木々が並び、地面は緑一色。心地良い風が彼の髪を揺らし、適度な光が降り注ぐ。

 彼は、森の中を歩きだすが、歩いても歩いても一向に景色は変わらない。 

 一時間ほど歩いていると視線の先に、森が途絶えてているのが見えた。

 長かった道のりの終わりに思わず交角が上がり、早歩きでその場所に向かう。


「やっと抜けられた……って、行き止まりかよ?」


 森の抜けた先は、石で作られた壁だった。

 三十メートルはあるだろう壁を見上げた後、彼は視線を壁の続く方に向ける。

 そこには、入り口と思われる門と、その両端で見張るように立っている人がいた。

 彼らは青を基調とした衣類をまとい、顔はヘルムで横からはわからない。手には槍のようなものを持っている。

  

 ――あれは……衛兵か?


 青年は見た目から衛兵と判断したが、先ほどから人に会うことがなかった青年はそんなことお構いなしに彼らのもとに向かう。


「ようやく人に会えた。なあ、おい、ここはどこだ。」


「なんだお前は!」


 いきなり話しかけてくる青年に衛兵は警戒し、槍を構える。

 槍を向けられた青年は、両手を上げ警戒を解こうとする。

 次の瞬間、青年の視線は、衛兵ではなく、その向こう――城門の中を捉えていた。


「嘘……だろ?」


 中には、日本の東京とはかけ離れた街並みと、その中心に位置する立派な城だった。


「なんでこうなった?」


 その光景を目の当たりにした青年は、ここに来るまでの記憶を巡らせる。


 ――数時間前……


「もう朝か」


 杯戸《はいど》 和也《かずや》。高校二年生。身長は平均的。あまり運動をせず、学校以外は基本的に家にいるため、体は細身で肌も白い。記憶力と理解力には自信があり、真面目に授業を受けずともテストでは満点しかとらず、先生からの印象はあまり良くない。

 そんな彼の一日は、普段通りのスタートを切った。

 朝7時に起き、朝食を食べ、着替えをし、学校に向かう。

 そこで、特に何もすることなく、時間が経つのを待ち、寄り道することなく帰宅する。

 いつもと変わらない日常。ただ一つ違ったことは、体の状態が著しく悪かったことだ。

 普段から、一日を退屈に感じていることもあり、眠たさとけだるさは人一倍だったが、今回のは今までと比べ物にならない。

 瞬きをするたび途切れそうになる意識、鉛のように重い足、重力が上がったような圧迫感が彼を襲っていた。


「さすがに……やばい。ちょっとだけ……寝る……か……」


 目をこすり、必死に眠気を耐えてきた一樹は、帰宅早々ブレザーを脱ぎ捨て、ベッドに向かう。

 飛びつくようにベッドに倒れ、仰向けになりながら、ゆっくりと目を閉じる。

 だが、次に一樹が目にするのは、部屋の天井ではなく、木々の隙間から射す日の光だった。

  

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