突然の宣告
初めての作品なので、至らない所多々あるかもしれないですがよろしくです(*´﹃`*)
ごめん、別れよう。
夕には辺りが暗くなる冬真っ只中、公園に呼び出されて最初の一言。
ーーーいきなりだったーーー
悲しさを必死に隠し笑う君、頬には瞳から伝った大粒の涙が次から次と流れる。
僕の肩までしかない背丈。そんな小柄な身体は上下に揺れ、落ち着きがない。
「いきなりどうした?」
ポケットから、常備しているティッシュを取り出し、そっと君の濡れた顔を拭く。
涙声のまま、絞り出すように君は呟いた。
「私、明後日死ぬんだって」
え………。君が明後日……死ぬ?
これって何かのドッキリか?そうだよな。そうに決まってる。君の友達とかがダンボールでできた板を持ってやって来るんだろ、『ドッキリ大成功』ってさ。
悪い冗談は止めろよ、と、君の方を見る。
雪が溶け、地面が汚くなっているのも気にせず泣き崩れている君の方を。そして冗談なんかじゃないってことを、再確認させられた。
信じられる訳…ないだろ。
周りの色や音が、全てモノクロになったように静止した。耳鳴りに近い音が谺響し、どくんどくん、と脈を打つ音が聞こえる。
心の整理が付かないまま、とりあえず君の手を引っ張り公園を歩き始めた。
解決策なんて見つかってない、解決策なんて無いかもしれない。けどそれ以上を考える為の脳が追いついていない。きっとそれは君も一緒だ、手には力が入っておらず僕が一方的に引っ張っている、ちゃんと歩かないと転んじゃうよって、いつもの僕なら軽く笑って言っていただろう。
君が嘘を付いた事なんて1度も無いから、僕は心から君を信頼していたから、余計に悲しかった。
この目を背けられない現実に、どう立ち向かっていけばいい?
絶対に君が助からないのならば僕は何をしてあげるべきなのか、何一つ案が浮かんでこなかった。僕達は喋ることなく、ゆっくりと歩き続ける。
数分立った頃だろうか、いきなり雪が降り始めた、粉雪が落ちては溶け、落ちては溶けを繰り返す。今年はまだ雪合戦をしていない、雪合戦は僕達にとって毎年の恒例行事なのに、雪は積もらなかった。本当に君が死んでしまうなんて、実感がわかない。つい一週間位前まで、次のデートどこ行こっかなんて話していたのに、来年は受験生だねなんて、話していたのに。今まで当たり前だった毎日が当たり前じゃなくなるなんて、考えたことなかった。考える必要なんてないと思っていた。
ふと、「あのさ」と君が重い口を開く。
「どうした?」
「雪、綺麗だね」涙で濡れた顔は、明らかに作った笑顔だった。口角が上がっていても、何処か寂しそうな目をしている。君の方が何倍も辛いはずなのに、僕より我慢して、そんなの、逆に悲しいって。
僕は何も返事せず、ただ強く手を握った。強く、強く。
「本当に、雪綺麗だね」復唱し泣きじゃくる君。
手の温もりを感じられるのも、表情を見れるのも本当に今日と明日が最後なのだろうか?
明日になってなんだ何ともなかったじゃんってなりそうで、でもそれは僕の願望でしかなくて、現実は酷くて、逃げたくて。
ーーーー死んでほしくなくて。
「あそこのベンチ、座ろう?」
「うん」静かに頷く。
寒そうな君にそっとマフラーを掛けた。君から貰って3年も経つマフラーだ、布はボロボロになり、所々糸がほつれている。
「僕らが出会ったのって、確か学校の廊下だったよな。」
ふいに昔を思い出す。
「憐斗、めっちゃ喧嘩しててさ」
「殴られて倒れて、麗衣が声掛けてくれたんだよな」
「なんで喧嘩してたの?」
「先輩に友達がいじめられてて、ほっとけなくなった。」
「私、そういう憐斗の優しさに惚れたのかなあ」
「えっ顔じゃね?」
「違うよ」
ふふっ、と口を隠すようにして、照れたように笑う。そんな君の笑い方が好きだ。
「僕は麗衣の真っ直ぐな所に惹かれた。人の悪口を言わず、楽しい話ばかり。時には泣いて、時には慰めてくれて。」
「私はやっぱり優しさかな。中学二年生の時、国語で当てられたけど分かんなくて困ってる私に、こっそり答え教えてくれた」
「ま、僕優しいから。てか僕らいつ付き合ったんだっけ?」
「忘れたの!?中学二年生の冬、クリスマスに付き合ったんだよ。憐斗が話あるってさ」
「僕が告白したんだっけ?」
「そうだよ。もー、思い出してよ」
「ごめんごめん」
出来ることなら中学二年生の頃に戻りたい。
いや1年生でも三年生でも構わない、けどもう会えないのは嫌だ、笑顔が見れないのは嫌だ、君の楽しい話が聞けないのは嫌だ。
本音を言うと『君と一緒に死にたい』
「憐斗、ちゃんと最後まで笑顔でいてね?」
「うん、約束するよ」
けど……そんなの分からないじゃないか。
君と話し始めて軽く一時間は立っていたと思う。雪が段々と止み、冷たい風邪が吹き始めた。今まで感じなかった疲れが、どっと、体に募る。
「さぁ、もうそろそろ帰ろうか」
「帰るって、何処に?」
「決まってんじゃん、僕の家」
「それ迷惑かからない?」
「全然大丈夫」
「ありがとう」
「明日…どうする?」
「明日の事なんてまだ考えられないよ」
「そっか、そうだよな。そうだよな。」
軽率な考えだったと、自分を叱る。
早く、帰ろう。一分一秒も無駄にしたくないから。
君の手を、しっかり握った。君もまた僕の手をしっかり握った。
ーーあれ?
君は、明後日死ぬ事をどうやって知ったの?病死って、そんなにすぐ分かるものなのか?病気の事を、今までずっと隠し通してきたの?
ーーもしかして、俺に嘘ついてる?