6 後悔
2017.1.7 表現加筆
久しぶりの接待で飲みすぎたため、俺は事務所に昼食時の終わったころ出勤した。
「玲子ちゃん、コーヒーと小倉トーストね」俺は、秘書にお茶を頼んだ。
「なんか、秘書とか心の声が聞こえましたけど。何度も言いますけど、うちは喫茶店ですから、私は美人秘書じゃなくて、キュートなウェートレスですから、そんな高い給料貰ってませんし!」いつもの軽いジャブの応酬が二日酔いに心地よい。
「はい、小倉トーストとコーヒー、あとメッセージが警察からあったわよ。何やったのよ?」
「いや、心当たりはないなあ。で、なんて言ってたの?」なんでも、昨日合コンをドタキャンされた相棒さんが警察に来て欲しいとのことだった。まさか、悪だくみがバレたのか?ま、変装がばれる様なことはないから、ヒントでもくれるのかなあ。
「うん、ありがとう。これを食ったら行ってみるよ、玲子ちゃん」
「昨日、内海刑事とは何時に別れたんですか?なるほど、ではあなたがそこに居たと証言できる人はいますか?」内海というのは夕べ一緒に飲んだ担当刑事だ、彼が昨日深夜殺されて最後に会っていたのが俺だというだけの話だ。
「うーん、何分一人暮らしで恋人募集中ですからねえ。別れたあと、真っすぐ家に帰って寝ました」
「困りましたねえ、アリバイがないならお帰り願う訳にいけませんよ」
「じゃあ、一晩厄介になりますか」
「ところで、内海さんは何をやっていたんですか。恨みを買うようなことでも?」
「内海刑事は、XYZ製薬の研究員と電話していましたね。内海刑事の手帳によると、北条由紀さんはXYZ製薬の研究員として働いていたようですね。となると、弟さんのことを態々お金を払ってまで探偵を使って調べる意味が解らないですよ」まさか、そんな由紀さんがXYZ製薬の研究員だったとは。
俺は、一晩留置場で今回の依頼の深い闇を解こうとしたが、手掛かりが少な過ぎたので寝てしまった。
「うーん、これはもう一度XYZ製薬を当たるしかないか」
「では、今回はお世話になりました。」俺は、態々見送ってくれた内海さんの相棒刑事に嫌味を言いながら留置所を出た。